SLUSH番外編-ヘルシンキ最古の公衆サウナでフィンランド人と裸の付き合いをする

Taka Mizutori (JP)
Dec 6, 2016 · 8 min read

私が宿にしていたKallio地区にはヘルシンキ最古の公衆サウナ、コティハルユサウナがある。
昔、NHKの「世界ふれあい街歩き」という番組で出てきて、外のベンチにタオル巻いただけでみんな涼んでいる姿がなんとも平和そうでいつか行ってみたいと思っていた。

今回滞在先のAirBnBから歩いて10分くらいのところにあるこのサウナにSlushの翌日、疲れを取りに行ってみました。

向かったのは17時過ぎ、フィンランドは15時過ぎには太陽が沈むのでもう夜、気温はマイナス2度。NHKで見たときは夏の映像だったのでこんな冬の夜に行っても道路のベンチで裸で涼んでいる人などいないだろうと思って坂の下に差し掛かると、タオルを腰に巻いただけのフィンランド男子がぎっしりとベンチに座っていた。みんなタオル一枚の格好で寒空の中ビールを飲んでいる。

正直感動した。

自分もこれを早くやってみたい。急にテンションが上がり坂を上がって行った。

中に入ると正面には番頭のおばちゃん、左側に大きな冷蔵庫があり、ビールが見える。「これは、先に買って(脱衣所に)入らないといけないんですか?」と聞くと、「先に買って持って行ってもいいし、今払って後で外に出るときに冷蔵庫からとっていってもいい。外の店で買って持ちこんで来てもいいよ」と実に清々しい答えが帰ってきた。

ビール代2ユーロと、入浴料12ユーロを払って、中に。

脱衣所は男たちで溢れかえっていた。20人くらいはいるだろうか、テーブルがあって、そこに座ってビールを飲んで大声で話している人たちもいる。

ロッカーは古めかしい木製。鍵も古めかしてくかけるのにコツがいる。

脱衣所の奥にある扉を開けて入ってみるとそこはだだっ広い空間で目の前のベッドに一人のおっさんが素っ裸で寝ている。その脇にはおばちゃんが立っていてそのおじさんの足を洗っていた。

非日常的な光景にオドオドしながら入っていくと、左手にはシャワーが並んでいてバスタオルをかけるところもある。みんなここにタオルをかけていくから、おそらくサウナはタオルなしで入るのだろう。

タオルを置いて素っ裸で次の扉を開けると、そこがサウナだった。薄暗い空間の向こうに6、7段の巨大なひな壇がありそこにでかいフィンランド人の男たちがぎっしり、一糸纏わぬ姿で座っていた。股間がちょうど自分の目線のあたりにあってすごいインパクトだ。その光景の前にしばし呆然と立ち尽くしていると、ここが空いてるぞ、と一人の男が声をかけてくれた。一番右端のさらに端が空いていてそこに座った。

居場所が見つかって安堵して座ったが、そこがまためちゃくちゃ暑い、耳が熱風で火傷しそうな感覚だ。

「こんなにも暑いのか。。」

日本のサウナとは比較にならない暑さである

「この水を使え」、隣の方から水の入った洗面器が回ってきた。これはいいと思ったが、この水がすごくぬるい。頭からかけるが気休めにしかならない。

「どこから来たんだ?」

フィンランド人との裸の付き合いが始まった。

おそらく一人だったら2分くらいで我慢できなくて出ていただろう、しかしフィンランド人と話し初めてしまっただけにすぐに出るわけにいかなくなってしまった。

ずっと耐えて話していると、耳の先が痺れてマヒしてきて、暑さがなくなった。

耳が熱くなければなんとか耐えられる。

「Slushできた」

「やっぱり、そうだと思ったんだ。今日は外国人は君だけのようだな。いつまでいるんだ?」

「明日帰る」

「最後の夜にここにきたのは素晴らしい判断だ」

その後コティハルユサウナの知識を色々と教えてもらった。朝5時から蒔きで1200キロの石を昼過ぎまだ温め、後は閉店の20時までその熱だけでサウナを温めているということだった。

「フィンランド人は重要な交渉や合意はサウナでやるんだ。」

これだ、前もどこかで聞いたこの言葉。ヘルシンキ最古の、今では唯一の蒔を燃料として使っているサウナの中で大工をしている屈強なフィンランド人の男が言うとやたらカッコよく聞こえる。

自分が座っている所の前、1200キロの石が入った熱釜の対面に4人分くらい座れるベンチの列がある。そこが一番熱いらしい。

「あそこに座った男だけが熱釜に水をかけてさらにサウナを熱くする権利があるんだ。」

一番熱い所に座った殿上人がさらにサウナを熱くする、そういうことらしい。

20分ほどして、もう限界がきた。顔が暑すぎる。

先に失礼して、先ほどのシャワールームでタオルを巻いて外に向かった。

今日のヘルシンキの温度はマイナス2度、体が異常に熱せられているので全然寒くなかった。でっかい男たちに囲まれてベンチに座ってビールを飲む、さっきの大工さんも出て来た。

このベンチは普通に道路に置いてあるベンチ、このベンチに常時10人くらいの人がタオル一枚で座ってビールを飲んでいる。当然通行人もいるし、コティハルユサウナは女性にも人気のようで若い女の子たちがどんどんサウナに入って行くがどちらも何も気にしていない。

隣に座ったフィンランド人に教えてもらったがここKallio(カッリオ地区)はもともと労働者階級の街だったらしい。それで、アパートにシャワーがなくみんな毎日サウナに通っていたからサウナがたくさんあった。Kallio地区がアーティストや若者に人気なエリアに移り変わる中、シャワーを備えたアパートが増えて来て、公衆サウナは減っていったようだ。東京の銭湯と全く同じような運命を辿っているようだった。

フィンランド人はサウナの中の熱気にも強いが、寒さにはさらに強い。みんなずっと外にいるが、自分は冷気に耐えられなくなりサウナに戻った。

今度は一番涼しそうな無難な所に座って体を温めていると、さっき話した人たちの一団が戻って来て、このサウナで一番熱い場所、殿上人の席に上がっていった。そして座るや否や「おーい、こっちにこいよ」とでかい声で呼んできた。ここにいる日本人は自分一人、私以外は全員フィンランド人だった。ここで断ってはサウナにいる全員から臆病者の烙印を押されそうだ。

私も鉄釜の対面の漢たちの場所、殿上人席に上がって行った。

猛烈に熱い。さっき座っていたところと全然温度が違う。

「うぉ、、ここは。。熱いね」なんて言っていると、下々のものに向かって殿上人の一人が「水をぶっかけろ!」のようなことをフィンランド語で叫んだ。サウナから出ようとして釜の前を通る人がこの命令を受けとる役のようだった。叫ばれた男がバケツいっぱいの水を釜の上の四角く空いていて石がむき出しに立っている所にぶっかけてサウナから出て行く。

3、4秒の時間差の後ものすごい熱風が私たち殿上人を襲って来た。熱い。蒸気と言う感じじゃない。炎を直に浴びているような感覚。耳が焼けそうだ。

フィンランド人でさえ顔をしかめてしきりに洗面器の水を顔にかけてこめかみや耳を掻きむしっている。

この熱風にしばし耐える。

さっき、最初の20分の1ラウンドを耐えたせいか、不思議と体が行けるようになっていることに気づいた。熱風が去った後は意外と普通に話していられる。

「このあと予定あるのか?みんなで飲むんだけどお前も来ないか?1人ドタキャンして席が空いてるんだ。」

殿上人となり熱風に耐えたことで、フィンランド人から男と認められたようだ。

また1人が「水をぶっかけろ!」と叫び、このあと3回ほど熱風に耐える。

人間の体がこんなにも熱に強かったとは知らなかった。。

フィンランド人が「よし、外に出よう!」と言って立ち上がった。

フィンランド人と同じ長さ殿上人席に座っていられた満足感でいっぱいになりながら氷点下の路上にタオル一丁で飛び出して行く。

体から出る湯気が夜空に消えて行くのを見ながらフィンランド人と話し込む。

裸の付き合いとはまさにこのこと。

昔の日本の銭湯にもあったであろう文化が強く残るコティハルユサウナ、Slushでフィンランドに来たら是非行ってみることをお勧めします。


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mizutori@goldrushcomputing.com

Taka Mizutori (JP)

Written by

Goldrush Computing株式会社代表。iPhone/Androidアプリのプログラマー。守備範囲はSwift, Kotlin, Python, Js, Java, Obj-C, C#, C, Assembly。前職はSonyEricsson。3児のパパ。

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