「男にとっていちばん都合のいい女じゃないか」と父は言った。

父が亡くなって約一か月経ったせいか、最近は父とのやりとりをよく思い出す。

たしかあれは元夫との2回目の離婚騒動のときだった。(最終的に離婚をしたのは3回目の離婚騒動)

あのときのわたしは、まだひきこもりニート主婦で、どうやって稼ぐかなんてなんにもかんがえられなかったけど、とにかくわたしは東京へ帰りたくて、父にお金を借りるために実家へ行ったことがある。

そのときに父から、あれやこれや言われて、最終的にはこのことがキッカケで、もう二度と父の言うとおりにはしない、これからの人生はじぶんの意思で決める、って強い意志をもったので、けっしてムダなできごとだったとは思っていないのだけど。

そしてそのとき、わたしはカナくんの存在を話した。

じぶんには好きな人がいる。

その人は既婚者だけれども、わたしは彼の傍に行きたい、と。

父は「その人からお金をもらえるのか?」と訊いてきた。

わたしは「そんなのもらえるわけないじゃん。ふつーのサラリーマンなんだから」と答えた。

すると父はゆがんだ形相で「そんなの男にとって、いちばん都合のいい女じゃないか」と言った。

これはもう、そのとおりだ。

そんなのだれに言われずとも、わたしがだれよりもいちばん、よくわかっている。

だけど父は知らない。

カナくんがどれほど愛情深い人なのかを。

なぜならそれは父にはない類の愛情だから。

そしてわたしはその愛情に飢えているからこそ、それを与えてくれるカナくんが好きなんだ。

でもそれはきっと父には理解できないだろう。

父は今もあの世で「やっぱり都合のいい女じゃないか」と思っているのだろうか。

もしそう思っているのだとしたら、わたしは父にこう答える。

「たしかに都合のいい女だよ。そんなの萌がいちばん、よくわかってる。

でもね、萌にとってあの人は絶対、必要な人なの。

あの人がいなかったら、萌はほんとうに生きていけないの。

だから萌は、あの人をつかまえにきたの。

ふたたび彼をじぶんの手に取り戻すために、萌は東京へ帰ってきたの。

そしてそれを彼はだれよりもわかっているから、そんな萌を受け入れてくれたの。

そんな萌を彼は見捨てることができなかったの。

だからね・・・パパからみたら、たんなる都合のいい女かもしれないし、実際、萌もそんなふうに思ってしまうこともある。

ってか、ぶっちゃけ、そんなことしょっちゅう思ってる。

でもね・・・それでもやっぱり萌には彼が必要なの。

彼がいなかったら、萌は生きていけないの。

そしてそれをだれよりも彼がいちばんよく知ってるから、彼はふたたび萌を受け入れてくれたの。

だからね・・・もうそんなこと言わないで。

そんなのだれに言われなくても、萌がいちばんよくわかっていることだから。

だからもうそんなこと言わないで。

じぶんがバカな人生を歩んでいることは、だれよりも萌がいちばんよくわかっているから」と。

Show your support

Clapping shows how much you appreciated 菅野 萌(すがの もえ)’s story.