“モノクロからカラーへ” _ The XX 『I See You』

まずは冒頭曲「デンジャラス」を聴くといい。鮮やかなファンファーレの幕開けでこのアルバムは素晴らしいものなるという予感がするに違いない。そしてそこにベースラインが被さってきたときに、その予感は確信に変わるはずだ。

続く「セイ・サムシング・ラビング」は「オン・ホールド」と並んでジェイミーXXが体得したキャッチーなサンプリング・ワークの妙味が現れた(サンプリング・パートがサビと言っても良いくらいキャッチーだ)曲でもあり、これまでの密室的でほの暗かったバンドのイメージを打ち破る解放感がある。と同時にザ・エックス・エックスらしいギター・ワークを楽しむことも出来る曲だ。


全ての予兆は、バンドのクリエイティビティの芯でもあるジェイミーXXのソロ作『イン・カラー』にあった断言していい。ロミーをボーカルに招いた「ラウド・プレイシズ」にあった鮮やかなポップネスとリズム・ミュージックの意匠の見事な融合 --別の言い方をすれば、インディ・ロックとダンス・フロアの融合-- は、既にここに芽吹いていた。その意味で、本作『アイ・シー・ユー』は、前作『コイグジスト』ではなく『イン・カラー』と地続きにあるアルバムなのだ。

アメリカではインディ・ロック(特にバンド)は商業的にはすっかり元気を無くし、各々が各々の取り組み方で成果を残しつつも、R&Bを初めとしたブラック・ミュージックのほうがその雑食性を増しながら、圧倒的な音楽的成果と影響力を誇っている。一方、英国では廃れたように見えた「バンド」という形態を取るこのザ・エックス・エックスが最新にして最良の音楽を産み出したというのは興味深い。

そうした観点においてザ・エックス・エックスは’10年代以降 --つまり、ストリーミング以降、EDM以降 --の時代における理想的なバンドの在り方を定義する存在なのかもしれない。つまり、まずはビート/エレクトロニック・ミュージックに深くコミットしていること。(その証左として彼らはポスト・ダブステップという文脈から出てきたバンドでもある。)そして、その音楽性に最適なギターのロミーとベースのオリヴァー、そしてキーボード/プログラミングのジェイミーXXという従来のバンドらしくない編成であること。そしてファンを惹きつけてやまない三人の独特の親密な友情、強いユニティーが感じられること。これらの偶然でも必然でもある要素を持って彼らは今、最も求められている「バンド」になりつつある。ブリクストン・アカデミー5日間連続公演のチケットは即完売した。

そう、つまり『アイ・シー・ユー』は内気でシャイなロンドンの三人組が遂に大きなステージへと踏み出す覚悟と自負を持って生み出した作品であり、不確かで分裂していく世界のサウンド・トラックであり、2017年最初の傑作である。

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