Service Design Global Conference 2018 in Dublin雑感

Yuichi Inobori
7 min readOct 13, 2018

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世界で最も規模が大きいサービスデザイン の研究者、実務家、学生によるコミュニティService Design Network (SDN)の年次カンファレンスであるService Design Global Conference (SDGC)が10/10–12の日程でアイルランドはダブリンで開催され、今年も日本の実務家として出席した。

自身としては2014年のストックホルム大会から5回目の出席となり、コミュニティ全体がこの5年どのような変化と進化をしてきたのか?そしてサービスデザインという領域における状況と、それが企業が提供する製品やサービスの領域のみならず、公的なシステムや仕組みに至るまで貢献すべき方向性の変化の動きがある程度長いスパンで、そして少しは俯瞰的に感じ取れるようになってきた立場から今回のダブリン大会を振り返ってみたいと思う。

”DESIGNING TO DELIVER”と題された今年の年次テーマが示すように、サービスデザインをどのように考え、構想し、デザインしていくべきか?というフェーズから、さらにそのようにデザインされたサービスが様々な適用領域において実際に導入され、機能し、明確な価値や貢献をデリバリーするために何が必要か?という領域にフォーカスが当てられ、基調講演をはじめとしてた様々なスピーチやプレゼンテーション、アワードへのノミネート事例、そしてワークショップに至るまで”DELIVER”という観点が強く打ち出された大会であった、ということを感じた。”Service Design Is A New Normal”という指針が冒頭に打ち出された昨年のマドリードでの大会から、この一年でサービスデザインを製品やサービスデザインをデザインするためのデザイン手法の中のある意味特殊で目新しい手口ではなく、複雑化、特に社会において起きつつある価値の転換と、世の中のデジタル化という環境において、問題解決や新しい価値をつくり出すための”向かい合い方”として文字通り普通に行うべきこと、として世の中の様々な領域において浸透させていくという流れは強まりつつあるが、その動きに加えて成果や価値の実態化、さらには組織やコミュニティへの”向かい合い方”としてのサービスデザインの導入が行われつつある事例や、導入手法論、組織文化としての浸透・定着化のための方法論についても、興味深い発表が目についた。

さらに今年は人工知能(AI)やマシンラーニング(機械学習)といった先進的テクノロジーがサービスデザインに及ぼす影響や、サービスデザインにこれらの先進的テクノロジーをどのように組み込んでいくべきか?という観点を取り扱った発表やワークショップもとても目立っていた。サービスデザインにとっていくつかの源流のうちのひとつである人間中心デザイン(Human Centered Design)が、データを中心としたテクノロジーの急激な進化の環境の中で、中心視すべき対象がそもそも人間だけでいいのか?機械や人工物(アーティファクト)自体も世の中の出来事や営みを構成し、影響を及ぼす存在として中心視されるべきではないか?という倫理観にも及ぶ範囲にまで話題が拡がってもきつつあることは、まさにダイナミックな変化と付き合っていかざるを得ないこれからの未来の社会においてサービスデザインが向き合うべき課題でもあり、期待でもあるということを実感する3日間であった。

で、あるからこそ人間性(Humanity)についての理解をデザイナーはさらに深める必要があるし、未来のテクノロジーがどうなっていくのかについて考えるだけではなく、”未来の人間はどうなっていくのか?”という観点をも取り込む必要があるという提言をメインカンファレンス初日の基調講演を務めた世界的なサービスデザインファームであるFjordのLorna Rossは自身の講演タイトルである”IT'S DESIGN, BUT NOT AS WE KNOW IT”という言葉に込め、これまでの時代ではひとにテクノロジーをどうやって理解させるか?ということが求められてきたが、これからの未来では、テクノロジーにわたしたち人間をどうやって理解するか?を教えこむという時代がやってくる、という予測的意見を述べた。それはまさに彼女が同じく講演の中で発言した『デザイナーの仕事は、ひとが欲しているものをデザインするというものから、ひとが”いずれ”欲しくなるものをデザインする、という役割になっていくであろう』という言葉にも現れているように感じられた。

サービスデザインをデリバーしていくために、ますます人間(性)の理解と予測的解釈の重要性が高まることは、SDN会員限定のメンバーイベントで基調講演を務めたインタラクションデザインの国際コミュニティであるIxDAの代表であるAlok Nandiも、自身の講演の中で『ひとは原子(Atom)でつくられているのではなく、物語(Story)でつくられている』という、非常に示唆的な言葉を用いて表現していた。

ところで、メンバーデイの最後にIxDAとSDNの提携がサプライズ発表された。このことは今後とてもおもしろいムーブメントを生んでいくだろうと、個人的にも非常に楽しみに感じている。

例年以上に追いつくべきこと、理解と解釈すべきことが多すぎる、まさにあっという間の濃密な3日間のカンファレンスだった。

個別のセッションやワークショップ(3つのワークショップを受講)も非常に新しい発想や関心を喚起してくれる素晴らしいものであったので、また今後適宜共有をしたいと思います。(おそらく日本から参加した他の参加者の皆さんがどんどん各自のブログやSNSなどで発信してくれるはず!)

詳細は未確定ですがおそらく11月9日に今回のカンファレンス参加者によるREDUXと題した報告・共有イベントをSDN日本支部主催で行う予定ですので、ご興味ある方はぜひ参加してください。

帰国の早朝、ダブリンにて。

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Yuichi Inobori

I'm a Design Strategist and musician in Japan. enjoy Design,business, music, art and our lives!