IxDA Interaction Week 18 参加レポ|ここは神話が生まれる場所か

Kosuke Nakajima
6 min readFeb 12, 2018

--

2月5日から8日にかけてフランスのリヨンで開催されていたIxDA Interaction Week 18に参加してきた。

Interaction Weekはインタラクションデザイナーの祭典。参加者は47カ国から集っていた。人数は正確にわかっていない(が、500人以上はゆうにいたとおもう)。

私はHuman Computer Interaction分野で研究をしていたので、ACM SIGCHIやACM SIGGRAPHなどの研究者のコミュニティや、それらの年次のカンファレンスは経験したことがある。しかし、インタラクションデザイナーのコミュニティとなると、これまでほとんど交流を持ったことがなく、IxDA主催のカンファレンスの雰囲気や講演の内容は十分わかっていなかった。その分だけ興味もあり、かねてから参加したかった。

Main Hall at La Sucrière, Conference Venue

振り返ってみるに、IxDA Interaction Weekは、学術発表とはほど遠い世界だなあとは感じた。研究発表とは対照的で、事実を正確に積み重ねたり、デザインしたプロダクトを定量的に評価したりしようとはあまりしていない。講演にはセレクションがかかるが、論理よりも物語性が重視されている印象だった。たとえるなら、「デザイン版・すべらない話」。もちろんテーマは真面目なものばかりなのだが。客観的な事実よりも主観的な見解や体験が語られる点でも、語り口が多くの場合かなり巧みである点でも、また、皆が一押しのトピックを持ち寄るという点でも、すべらない話にたとえたいと思う。あるいはTEDトークといってもいいかも。

トピックはデザイン/デザイナーの役割・倫理観が多め

話のトピックは、インタラクションデザイナーの目指すべき方向性や、サービス設計が与える社会的インパクトなど、広義のデザインについての話がかなりの割合を占めていた印象。IxDAの各ローカルチャプターでは、それこそインタラクションデザインのテクニックが話題になることも多いそうだが、反面、年次のInteraction Weekでは、デザイナーの役割や倫理が語られるようになっているという(現地での会話から)。

そのため、この場所を通じて、インタラクションデザイナーが信じる「神話」が形づくられていくようだった(あるいは、それを試みているようだった)。いいかえると、 ここはデザイナーが目指すべきものを共同構築して物語化していく場所なんだなと。インタラクションデザイナーに求められる役割や倫理観、職業観を無数の講演を通じて導いていこうとするさまは、それはそれで興味深かった。

ケーススタディとして面白いネタも多かった。個人的には、経験から導いた主観的な見解を語る講演よりは、その経験そのものを詳細に語ってくれた講演のほうが、関心をもてた。これは好みだろうけども。

著名なデザイナーの発言や著書はたくさん引用されているので、デザイナーの中には独特の知の蓄積があるようにもみえた(あまり原著に明るくないので恣意的な引用なのかどうかまでは判断がつかないが)。

参加しているのはデザイナーが大半

成り立ちゆえなのか、モバイルアプリなどのUIデザインを専門にしてきたデザイナーが多く集まっているらしい。いまではサービスデザイナー、UXリサーチャー、対話UIデザイナーなど、UI設計・サービス設計に関わる様々な職種のプロフェッショナルが集まっている様子だった(実際どういう分布なのか気になるところ)。

技術者はあまりいない?ようす。起業家も登壇していたが、デザインエージェンシーのトップなどが多いのでは、とおもった(いずれもちゃんと調べてはいない)。

Amazon Design Booth

企業でいえば、巨大プラットフォーマーから、デザインエージェンシーまで、いずれも有名どころがスポンサーになっていたし、それらに属するデザイナーもけっこう見かけた。その場でAmazon Design, Microsoft Design, Google, Facebook, Spotifyなどがブースを広げてデザイナーを採用しようとせっせとリクルートしていた。

3日間カンファレンス+1日ワークショップ

カンファレンスは3日間で、その前日がワークショップにあてられている。ワークショップは午前午後の二部にわかれていて、事前申込制。

私は、午前はBBVAのデザインチームによるDesigning for Organizational Changeに、午後は、Per Axbom氏によるManage misusability: design for digital with a conscienceに参加。BBVAのOrganisational Changeネタを直接に聞けたのは大変学ぶところが多かった。カンファレンス本編よりも価値を感じたほど。

ここから幾つかの記事で、今年のIxDA Interaction Weekを個人的に総括しながら、いくつか気になったトピックや講演を紹介したい。

講演の模様はすでにアップロードされている

メインステージでの講演は、すでにVimeoにアップロードされている。気になる方は視聴してみては。

現時点では、メインステージの動画しかないが、今後、全会場の動画も、セッションごとに分割してアップロードされるらしい。

DAY 1 | Interaction Conference
DAY 2 | Interaction Conference
DAY 3 | Interaction Conference
Main Hall at La Sucrière, Conference Venue

--

--

Kosuke Nakajima

Design Engineer / Interaction Designer. Ph.D (Information Science). Interested in Human-Computer Interaction, Organizational Change, and Food Science.