子供にスマートフォンを与えた話

Nakano Kyohei
9 min readDec 13, 2017

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iPhone X を買ったのをきっかけに、今まで使っていた iPhone 6 を子供に与えました。

子供にスマートフォンを与えるべきかというのはとても大きなテーマです。特にうちの子は10歳(小学校四年生)なので、まだ早いのではという葛藤がもちろんありました。

子育ての方針は家庭の数だけあるので、何が正しいと言いたいわけでは勿論ありません。それぞれの方針が尊重されるべきです。このありふれた話題に対して特に目新しい意見を持っている訳でも無いのですが、自分がどう考え、具体的にどういうデバイスを子供に与えたのかをメモしておこうと思います。

子供にスマートフォンは必要?

スマホをいじるよりもやるべき事が子供にはある、というのは本当にそうだと思います。特に子供がゲームをやり過ぎてしまう問題は深刻で、子供は自己の欲望をコントロールする力が未熟なので(多くの大人もそうですが)、なんらかのサポートをする必要があると感じています。

スマートフォンやゲームが直接子供に害をなすというよりは(私は、むしろ創造性の宝庫だと信じています)、意外と忙しい子供の可処分時間が全て消費されてしまい、結果として活動の幅が狭まってしまう事はリスクだと感じています。暇だからやってみた事が意外と向いてたり、気が進まなかったけどやって見たら楽しかった、という事はよくありますからね。

保護された世界から始める

とはいえそんな子もいつかはスマートフォン(もしくはもっと新しいテクノロジー)を手にする日が来るわけです。

その時にいきなり何の制限もないデバイスを渡され、うまくその力を使いこなせるだろうか、というのが最初の問題意識でした。

まずは原始的な機能しかないデバイスから始まって、親と一緒に使い方を学びながら、徐々に高度で自由度の高い機能やコミュニケーション手段がアンロックされていくようなやり方はどうだろうか。まずは家族の中だけの保護された世界から始める事で、より安全にテクノロジーの意味を理解し、使いこなす訓練をする事が出来るかもしれない、と思うようになりました。

親にとってのメリット

それだけではなく、スマートフォンがあると「親が助かる」というのも導入を後押しした理由の一つです。

GPS を使った「iPhone を探す」を利用して位置が分かるので、誘拐にあったりスマートフォンを奪われた場合にも、少なくともその最終位置を知る事が出来ます。どこかに出かけて帰りが遅い場合も、現在位置がわかるのはとても安心です。

子供と直接通話できるのもとても便利です。電車に乗ってどこかに一人で出かけるような事も、いざという時に電話連絡が出来るならチャレンジさせてみようかと思えるので、子供が一人で行動できる範囲を広げる事が出来ます。そういった緊急時の電話だけでなく、仕事が遅くなる日に職場から「宿題やった?」みたいな電話を子供に掛けられるのはとても新鮮で、新しい友達が出来たような嬉しさがありました。

スマートフォンの状態

具体的には、以下のような状態のスマートフォンを渡しました。

  • 一度本体初期化した iPhone 6
  • 最新の iOS にアップデート済
  • 新規に作成した子供の Apple ID
  • MVNO (mineo) のデータ通信 500MB/月 + 通話 プラン
  • 機能制限(ペアレンタルコントロール)付き

子供が12歳以下の場合、親のアカウントに紐つく子供のアカウントを作成する事が出来ます。この関係があると、親が購入した音楽をダウンロードしたり、子供が自分の権限を超える行為に際して親に許可を求める事が出来るようになります。
ファミリー共有とお子様用の Apple ID

ペアレンタルコントロール

iOS のペアレンタルコントロール機能を利用して、ブラウザの利用を含む殆どの権限を無くした状態にしました。iOS の機能に関する部分は細かく設定できるのですが、アプリ内のコンテンツに関してはきめ細かい設定ができるわけでは無いので、基本的には「安全だと分かっているアプリだけを入れて、新規のインストールは禁止する」という方向で制限することになります。

出来るようにした事

  • 通話
  • カメラ、フォト
  • ミュージック(親のライブラリから選んでダウンロード)
  • Map
  • GarageBand
  • 天気
  • Sleep Cycle などいくつかのアプリとゲーム

普段の生活が便利になるアプリや、親が選んだいくつかのゲームのみを選んで入れています。具体的には、マインクラフトMonument Valley 等です。

音楽に関しては紐ついた親のライブラリからダウンロード出来るので、親が選んだものを入れました。

もちろん子供の趣味じゃ無い可能性もありますが、何が琴線に触れるかわからないので色々なジャンルを入れて反応を見ることにしました。CMの曲などで聞きたがったものをいくつか入れたりもしましたが、今の所一番気に入っているのは Diamonds feat. KIRINJI のようです。キリンジが好きになってくれて嬉しい。

出来ないようにした事

  • Safari
  • AirDrop
  • App Store (新規アプリのインストール)
  • iTunes Store
  • 連絡先の変更
  • Apple ID の変更
  • Game Center

新しいアプリやゲームを入れる事は禁止しています。Youtube などの欲しがると思われるアプリも入れていません。現状ではコンテンツのゾーニングが望ましいレベルで出来ると思えなかったためです。

すごく窮屈な感じもしますが、まずは最小からスタートして、徐々に様子を見ながら出来る事を増やしていくのがいいかなと思っています。

やりすぎの管理

やりすぎをいかに防ぐか、は重要なポイントです。信じて任せたいところですが、子供の自制心では誘惑に負けてしまうことも多いはず。

今は以下のルールで運用しています。

  • ゲームは一回の家事お手伝い(お風呂掃除やトイレ掃除等)で30分プレイする事が出来る
  • 1日の最大プレイ時間は1時間まで
  • 実際のプレイ時間は不定期にチェックされる
  • 不正が発覚した場合にはスマートフォンは没収される

原始的ですが、何かシステム的な制限をかけているわけではありません。直近のプレイ時間は設定のバッテリーメニューから大雑把な内容を見る事が可能です。面倒ですが、利用状況の把握も兼ねてたまに査察に入ることにしています。

実際子供はどう使っているか

今一番使っているアプリは「ミュージック」のようです。私達が初めて iPod を手にした時のような感じかもしれません。限られたライブラリの中の曲を楽しんでいるようです。日本語ラップが好きだという新しい発見がありました。

次に使っているのが「フォト」です。うちの子は自転車に乗るのが好きで自転車クラブ的なところに行っているのですが、その時に(親が)撮影した動画を iCould 経由で写真共有していて、自分(子供)が走っている動画や写真を見ています。やっている時にはわからない発見があるみたいです。

Sleep Cycle(目覚ましアラーム)もほぼ毎日使っていて親よりちゃんと起床しています。ゲームに関しても今の所はルールを守っているようです。ただまだ1ヶ月なので油断は出来ません。

ちなみに勿論ですが学校には持って行っていません。帰ってきてからのお出かけと週末のみ携帯している感じです。

見守りフォンではダメなの?

いいかもしれません。今回は型落ちの iPhone があったことと、親のアカウントに紐ついたリソース(音楽や写真)を利用したかったのでこの構成になりました。月々の回線費用を抑えたかった、というのも理由です。

どのソリューションを選ぶにしても、「何が出来て、何が出来ないか」を親自身が把握して、定期的に利用状況を確認してルールを更新していくという事が必要かも知れません。全てのケースにジャストフィットする方法というのは難しいですからね。

人とテクノロジー

スマートフォンを与えることが正しいことなのかは全くわかりません。今の所問題なく便利に使えているように見えますが、これから先「使いすぎ」の問題や想定していなかった脅威によって失敗に終わるかも知れません。全く新しいパラダイムのテクノロジーが主流になって、現在のリテラシーが急速に陳腐化するかも知れません。なので、これを誰かにオススメしたい訳ではありません。

子供がスマートフォンやゲームを一日中しているのが問題ない、と考える親は少ないと思います。私も普段はソフトウェアエンジニアとして働いていて一日中スクリーンの前でタイプしていますが、走ったり山歩きをしたりするのも凄く好きで、子供にもそういうアクティビティを好きになって欲しい気持ちがあります。そこに加えてさらに、矛盾するようなのですが、「テクノロジーを理解して、人生を豊かにするために使いこなして欲しい」という気持ちもあります。

人間とシステムはどのような距離感が適切なのか、どういうインタラクションがあるべき姿なのか、というのは古くて新しい問題です。まだ答えは無いですが、時間をかけて考える価値のある課題だと感じています。私は今、京都の Atmoph というハードウェアスタートアップで、この課題に取り組んでいます。

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この記事は ex-mixi Advent Calendar 2017 の14日目の記事として作成されました。他の先輩方が素晴らしい記事をたくさん書かれているので、ふわっとした箸休め記事を書いてみました。

良いお年を!

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