「故郷を思えばー」コソボからやって来たジャーナリスト【前編】

こんにちは。巣内です。

明けましておめでとうございます。

みなさん、いかがお過ごしですか。

ハノイは少し寒いものの、それでも外を散歩すると気持ちいいです。

さきほどは家の近くのカフェ(といっても、道にイスとテーブルを出しただけですが)で、ココナツジュースをいただきました。お正月にココナツジュースもなかなかです。

さて、このエッセイは2005~2006年に滞在したフランスで書いたものです。10年ぶりに見つけて手を入れました。10年前にこの原稿を書いたころ、まさか今ハノイにいるとは想像もしませんでした。。人生とはわからないものですね。

よければ読んでいただければうれしいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

そして、今年もよい年にしましょうね。

エッセイ:「故郷を思えばー」コソボからやって来たジャーナリスト【前編】

カフェ

2006年の5月の頭、訪れたのはコムネンが「僕らのカフェ」と呼ぶパリの

カフェだった。

コムネン、彼はコソボ出身のジャーナリストだ。主に文学、歴史、芸術の記事を書く。

そのカフェは、1階がパン屋で2階がカフェとなっている。大きなガラス窓で見晴らしがよく、晴れた日は特に気持ちの良い場所だ。久しぶりに再会したコムネンは、淡い色のスーツにブルーのシャツ、それにきちんネクタイを結んでいた。その日彼は自分の半生を教えてくれた。

1936年、彼はコソボの山間の村で生まれた。すらりと高い背、スーツに身を包むのはいつものことで、なによりきちんと背筋が伸びていて若々しい。一見してインテリでスマートな感じに見える。しかし、節くれだったその手指はがっしりとしている。

ベオグラードの大学で文学を専攻し、その後、1960年にフランス・ナンシーの大学に留学。その後、文学とセルビア語の講師のポストを得た。そうした流れの中で、ジャーナリストとして物を書き始める。

フランスの作家たちにインタビューをし、彼らの話を書き留め、批評していくのだ。サルトルやボーボワール、アンドレ・マルローにもインタビューしたのだと いう。嬉しそうにそう話す彼は、フランスの詩を覚えることでフランス語が上達すると話す。「頭にすっと言葉が入ってくるよ」と、アドバイスしてくれた。

1968年、ナンシーで出会ったアメリカ人女性と共に渡米。最初の結婚をする。1968年というある時代を象徴する年に、一人のジャーナリストは渡米したのだ。

彼は、そこで何を見て、何を感じたのだろうか。私は、どんな記事を書いていたのか尋ねてみた。

すると「グランドキャニオンだとか色々」とだけ、あっさりと言われた。一人のコソボ人ジャーナリストに、私はついつい政治や社会問題の話題を求めてしまった。

破壊された教会や家々

彼の転機は1981年に妻が、亡くなったことで訪れた。

アメリカ生活に終わりを告げ、その後2番目の妻となるコソボ人女性と出会い再婚。そして、フランスに戻ることになる。どんなことがあったのか詳しくはわからない。けれど、フランスがコムネンの住処となる。

コソボはいまどんな状況にあるのかと彼に尋ねた。彼は、コソボに入るには常に兵士の護衛がなくては無理だと険しい顔で語った。多くの教会や建物が、長らく続く内戦で破壊されているという。

彼にとっての故郷の風景は一種の薬のようなもので、それを思い浮かべると彼はよく眠れるのだと話してくれた。

懐かしい山間の村はいまどうなっているのだろうか。

私はそれを彼に訪ねるのを躊躇して結局何も聞けはしなかった。

私生活で彼は2人の子の父でもある。1984年、1987年生まれの子供たちはフランスで生まれ、フランスで育った。子供の試験について話をする時、彼は 父親の顔をする。しゃれたスーツに身を包んだシックな雰囲気からは、家庭の匂いはあまりしない。こういう顔をするときに、やっと彼の人となりにふれたよう な気がした。(「故郷を思えばー」セルビアからやって来たジャーナリスト②に続く)

巣内尚子(すないなおこ)

フ リージャーナリスト、翻訳者。1981年生まれ。Global Press(在外ジャーナリスト協会)メンバー。東京学芸大学在学中に、ドキュメンタリー映画のアシスタントとして、取材、撮影補助などの仕事に従事。 卒業後は日本の業界紙勤務を経て、フランスに滞在。その後、インドネシア、フィリピン、ベトナムにて記者やフリーランスライターとしての仕事に従事し、東 南アジアの経済や社会の動きを取材・執筆。これまでに「WEBRONZA 」「JBpress」「週刊金曜日」「連合」などに寄稿。

海外ニュースを扱う「世界ガイド」にて、「ベトナムのいま」「ベトナムのストリートチルドレンに職業訓練を=Know One Teach Oneを掲げる若者支援団体」を連載中。「世界ガイド」内の巣内尚子執筆記事はこちらです。

これまでのお仕事はこちらです。

WEBRONZA: http://webronza.asahi.com/authors/2912060400005.html

JBpress: http://jbpress.ismedia.jp/search/author/%E5%B7%A3%E5%86%85%20%E5%B0%9A%E5%AD%90

ホームページ:http://nsunai33.wix.com/naokosunai-blog

Twitter:@nsunai33

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