自己組織化する組織、ティールを前進させる3つのブレイクスルー

嘉村賢州
Jul 27, 2017 · 9 min read

Teal Organization(以降、ティール組織)という新しい組織のありようが、日本でも徐々に紹介されつつあります。つい先だっては、友人のSaso Kunitakeくんが、私も参加したカンファレンス@ギリシアのレポートをアップしました。私が代表をしているhome’s viでもティール組織を実験的に導入しています。

最近、ティール組織にたいする学びを深めている組織や個人の方から、「組織変容の5段階はわかったけど、具体的な運用を進める時にどんな点に気をつければいいの?」という質問を多くいただくようになりました。

ティール組織には明確なセオリーはありませんが、ティールだとされている組織には大きく3つのブレイクスルーがあります。今回は、その3つを簡単にご紹介します。

1 セルフマネジメント(Self-management)

2 全体性(Wholeness)

3 進化する目的(Evolutionary Purpose)

1 「セルフマネジメント(Self-management)

セルフマネジメントとは、組織を取り巻く環境の変化にたいして、誰かの指示をまたず、適切なメンバーと連携しながら、迅速に対応することです。普段、日本語として使うセルフマネジメントとはニュアンスがちがって、階層構造の組織に対比した形で「セルフマネジメント」と表記しているようです。

従来のピラミッド型組織では、トップが変化を感じ取ってから、現場に指示を下ろすまでにタイムラグが発生します。具体的な行動を起こすときには、対処すべき変化が過ぎ去っていて、別の変化が組織にふりかかっている、ということも珍しくありません。

セルフマネジメントの例として、次のようなものが挙げられます。

①人体

人体はおよそ37兆個の細胞から構成されていますが、CEOや管理職にあたるものは一つもありません。小枝に引っかかって足をすりむいたとき、足の表皮細胞は何かの指示を待つことはありません。その時の状況に合わせて適切に対処しますよね。細胞には上司がありません。

②鳥の群れ

鳥が群れで飛ぶとき、リーダーにあたる存在がいません。ぶつからないようにする、群れの中心のほうへ集まる、お互いに同じ速さで飛ぶ、この3つの暗黙の了解があるだけです。それぞれの個体は、周囲の変化を感じ取りながら、主体的に群れの飛行に適応します※1。

※1 クレイグ・レイノルズの「boids」を参照

③森林

自然の生態系では、季節の変化にあわせて、個体それぞれが複雑に反応しあい、環境に適応します。仮にCEOのような木があって、一つ一つの個体の行動について、事細かに指示をしたらどうなるでしょう。おそらく、その森林はすぐに崩壊するでしょう。

セルフマネジメントが浸透している組織では、お互いにアドバイスをしつつ、独立したひとり一人が積極的に意思決定をします。

意思決定をする際のポイントは、その分野に精通しているメンバーや、意思決定することで影響を受けるメンバーからのフィードバックをもらうこと。そうすることで、組織内の叡智が集まりやすくなり、より変化に適した対応をとることができます。ある会社ではこの意思決定メカニズムを「アドバイス・プロセス」と呼びますが、このプロセスがうまく働くと、組織が階層を抱える必要性がなくなります

セルフマネジメントというと、みんなが好き勝手にやる、合意形成に時間がとられる、とよく誤解されますが、そうではありません。セルフマネジメントには簡潔かつ精巧な調整メカニズム、ルールが備わっているので、組織は遅滞なく進化していきます。

https://prezi.com/ub5ofzawjtc6/inwiefern-lasst-sich-das-verhalten-von-schwarmen-und-herden/

2 全体性(Wholeness)

全体性とは、メンバーひとり一人がもっている潜在性をすべて使って、組織を運営することを指します。

人間には合理的な側面以外にも感情的な側面、直感的な側面、スピリチュアルな側面もあります。しかし、従来の組織では、合理的な側面が重宝されます。それ以外の側面を表に出すと「プロなんだから、感情などだすな」と批判されてしまいます。人間が本来もっているものをすべて出しきることができない状況です。

そこで、私たちは意図せぬまま「期待された自分」として振舞います。仕事をするなかで、個人的には「どうかな?」と思うことも、合理的な側面と合致しないと、その違和感をそっとしまってしまいます。往往にして、その違和感こそ、組織が抱えている問題を解決する突破口になったりするのですが。

批判されたり笑われたりするのが怖くて、私たちはありのままの自分をさらけ出せずにいます。さらけ出すことによって、組織がより円滑に運営されることがわかっている場合でも、なかなかこの恐怖の壁は壊せません。そこで、全体性を受け入れる組織文化を醸成するために、職場に、自らの内面をさらけ出してもよい「安全な場所」を設ける必要があります。

グリーン組織でも誠実、敬意、寛容といった価値観に基づく文化を築いていますが、ティール組織はより詳細なルールを設定して、様々な機会を通じて、確認やブラッシュアップを重ねている印象です。全体性を深めるために、オフィス内に瞑想やヨガなどの内省やマインドフルネスのための空間を解放しているのも特徴です。

自らの全体性を発揮していいことがわかると、メンバーはより積極的に、多様な役割に手をあげるようになります。多くのティール組織では、固定の役職を定めていません。全体性を発揮したメンバーが複数の役職を兼務したり、時期によって役割を流動的に変えていくからです。

http://www.freepik.com/free-photo/group-of-people-doing-meditation-on-exercise-mat_975940.htm#term=meditation&page=1&position=21

3 進化する目的(Evolutionary Purpose)

進化する目的とは、いわゆる創業者が決めたビジョンやミッッション・ステートメントとはちがって、変化に適応した方向性のことを指します。その方向性は一部の限られた人が決めて推し進めていくのではなく、組織全体として探求し続けていくなかで、立ち現れてくるイメージです。

ティールとちがって、レッドからオレンジまでの3段階では、内側から湧き上がるエゴを抑えて、与えられた仕事をうまくこなして、マーケットで競争に勝つことが求められます。

一方、進化する目的を持ち続けると、組織の使命や目的にたいする深い問いを、個人レベルだけでなく、組織レベルでも持つことができます。ひとり一人が、湧き上がる自らのエゴや、エゴを開示することへの恐れを手なづけ、使命に向き合うことできるようになります。そして、個人の集合体である組織も、変化により柔軟に対応できるようになります。

進化する目的を持ち続けるメタファーとしてよく使われるのが、自転車です。

例えば、大阪から東京まで自転車で向かうことにします。

みなさんは、初めにガチガチに立てた計画から、日割りで距離を計算し、それを着実に実行に移せるでしょうか。

最初の何日かは計画通りにうまくいくかもしれません。しかし、数日たつと、計画どおりにいかない現実にぶち当たるでしょう。大雨で、雨宿りせざるをえなくなった。タイヤがパンクした。財布を落としてしまった。予測不可能な事象がみなさんにどんどん降りかかってきます。こうした変化とうまく折り合いをつけながら、みなさんは最適な道を探ります。そして、東京に到着して、自らの軌跡を振り返ってみると、計画通りにいかなかったことがわかります。

この考えは組織運営でも同じことが言えます。

従来の経営手法では、経営会議で未来を予測して 、そこから道程を逆算して行動計画を作り、その計画を元にマネジメント層が部下に指示を出します。しかし、自転車のメタファーと同じように、しばらくすると、計画と現実との間に齟齬が生まれてきて、組織運営が立ち行かなくなります。予測した未来のとおりに現実がならなかったからです。

ティール組織を前進させている組織ではセンシング(sensing)という考え方を大切にしています。

セルフマネジメントが浸透したティール組織では、だれもが変化を捉えるセンサーに、そしてその変化からイノベーションを起こす存在になりえます。センサーが感知された変化や違和感は直ちに全体に共有されつつ、適切に対処されます。従来の組織だと、せっかく感知したものも、計画に沿っていないとフィルターにかけられて、組織全体に行き届くことはありません。

イノベーションは組織の中心ではなく、環境の変化をメンバーが感じ取り、反応する時に、組織の周辺・境界で起ります。進化する目的はイノベーションを生み出す原動力となります。

以上の3つのブレークスルーは、互いに強化し合います。

ティール組織のどれもが上記3つのブレイクスルーを採用しているわけではありません。組織の変容段階に応じて、どれから取り入れるのが最適か、どのように組織に浸透させるかに焦点を当てることが重要です。

ここまで簡単に説明をいたしましたが、ティール組織の運用が前進するイメージが湧きましたでしょうか。

ティール組織や新しい組織開発にご興味を持たれた方、相談されたい方は、下記連絡先までご連絡ください。

お問い合わせ先:info@homes-vi.com

(文章:嘉村賢州、編集・校正:佃芳史春)

嘉村賢州

Written by

場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome’s vi代表理事、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、『ティール組織(英治出版)』解説者、一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会理事、コクリ!プロジェクトディレクター(研究、実証実験)

嘉村賢州

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場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome’s vi代表理事、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、『ティール組織(英治出版)』解説者、一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会理事、コクリ!プロジェクトディレクター(研究、実証実験)

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