ティール組織に取り組む前に知っておきたい、3つの誤解

嘉村賢州
7 min readJan 14, 2018

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「コンサルタントにティール(teal)のパッケージを提示されたけど、これをやれば上手くいくよね?」

「ティールは、オレンジやグリーンより上位組織で、ベストな組織形態なんだよね?」

先日、ティール組織への関心が高まりつつも、心理的ハードルの高さから、なかなか踏み出せない現状をご紹介しました(なぜグリーン組織のリーダーはティールに惹かれるのに、次の一手を打てないのか)。

ですが、今後は、そのハードルを超えて、ティールへの変容にチャレンジする組織もたくさん出てくるでしょう。そして、ティールへの変容を決断したリーダーから、上記のような疑問が出てくるかもしれません。

そこで本日は、実際にティールに関する、3つの重要な誤解を解きたいと思います。

誤解1 これをやればティールなんでしょ?というインストールモデルである

誤解2 ティールとはオレンジやグリーンを否定するものである

誤解3 ティールがベストな組織形態である

誤解1 これをやればティールなんでしょ?というインストールモデルである

ティールには、完成されたインストールモデルがありません。

ティールの提唱者であるフレデリック・ラルーは新しい世界観で運営されている12の組織を分析する中で、ティールというアイデアを紡ぎました。実際の事例から抽出した発想であるため、ティールであるための条件、ティールのやり方、といったものがありません。10社あれば10社とも違う方法論で運営されています。もちろん、「これはティール的に正しい/間違っている」という考え方もありません。

これまでの多くの組織論・各種組織変革手法は、こうすればこうなるという入口と出口がありました。他の組織論と同列でティールを比較検討されるリーダーもいますが、ティールは一般的な組織論ではありません。新しいパラダイムです。

ですので、仮にコンサルタントが「これがティールだ」とインストールモデル(パッケージ化した手順・ツール)を提案したら、それを鵜呑みにするのは危険です。なぜでしょう。

「ティール組織」の3つのブレークスルーの一つに存在目的(evolutionaly purpose)というものがあります。これは時々、周りの環境や内側の環境にあわせて、組織の目的や事業内容、そして組織の形態も含めて柔軟に変えていこうという考え方です。

それには組織内の個々人が常に自分自身の在り方、チームの在り方、組織全体の在り方に関して探求し続けるというプロセスが重要であり、外部のコンサルタントが示す答えのようなプロセスに従う状況ではティール組織にはなりえないのです。

また、インストールモデルに組織が適応できなかった場合、それをもってして「ティールはうちの組織には向いていなかった」と早とちりしてしまう恐れもあります。

ティールとは手法ではなくパラダイムなので、アプローチの仕方は無限大です。

これさえやれば絶対に組織がうまくいく、という世界観ではないことを押さえておく必要があります。

では、何から手をつければよいのでしょうか。

組織によって当然、最初の第一歩は変わりますが、ラルーは直感を大事にしようと言っています。

例えば、ティールによく見られる3つのブレイクスルーのうち、セルフマネジメントを体験するために、ホラクラシーを実践してみましょう、という場合もあれば、安心・安全な対話の場(全体性)を確保しましょう、という場合もあるでしょう。

あなたの組織にとって何が最初の一歩になるのか、まずは3つのブレイクスルーのどれかから始めてみるのも良いかもしれません。

誤解2 ティールとはオレンジやグリーンを否定するものである

これもよく組織開発の専門家から誤解されるのですが、ラルーは、オレンジやグリーンを否定していません。すべての組織がティールになりましょう、とも言っていません。組織を5段階に分類したのも便宜的です。

例えば、災害時などの緊急事態にはグリーンやオレンジ、アンバーが適している場合もあります。また、状況に対処するためにティール内に、オレンジなどを一時的に抱えるケースも出てくることもあるでしょう。業種業態、CEOの特性、社内文化によって、どういった組織形態が望ましいかが決まります。

そもそもティールは「優れている/劣っている」という価値観ではありません。

旧パラダイム

世の中の物差しや価値観から帰納して組織の存在を定義。将来の見通しを立てて、経営戦略に落とし込む。他社と比較してポジショニングをし、市場を取りにいく、という発想。KPIのような科学的測定や評価・分類によって評価する。

新パラダイム(ティール)

組織に属するメンバーひとり一人がどのようなギフトをもっているのか、どうありたいか、組織メンバーの能力や想いを演繹して組織の存在を定義。将来への方向性はあるが、固定されたビジョンやミッションを持たない。進化する目的を探求する中で組織としてのアウトプットが浮かび上がってくる。外的物差しで評価しない。

ティールは新しいパラダイムなので、乗りこなすまでは不快、乗りこなせたら爽快、とよく言われます。いくつか、ティールに変容した組織メンバーに話を聞くと、ティールになると、組織が希望で満たされていると感じるそうです。

ティールの話をすると、

「賢州はティールがベストな組織形態と考えていて、それを広めたいの?」

と言われることがありますが、わたしもラルーと同じく、ティールが絶対的に正しいとは思っていませんし、全ての組織がティールであれば良いとも思いません。ティールは目的ではなく手段です。

ですので、ティールからグリーンやオレンジになったからといって、組織形態が「後退」したわけではありませんので、自信を喪失したり、自分を責めたりする必要はまったくないと思います。

誤解3 ティールがベストな組織形態である

これもよく感じる誤解なのですが、ティールは完成された最新理論、ではありません。ティールはつねに成長・進化をつづけるパラダイムであるため、「ベストである」と言い切ってしまうのは思考停止を招くので危険ですし、ティールの実態に即しません。

ラルーはティールという新しいパラダイムを発見する上で、インテグラル・セオリーの8段階モデルを参考にしました(インテグラル・セオリーの8段階モデルについては、インテグラル・ジャパンさんが詳しく解説しています)。ティールは8段階に比定すると「イエロー」にあたります。ということは、それより進化した「ターコイズ」の組織形態が生まれる可能性があるわけです。5年後、10年後には現在のティールでは説明しきれない形態に進化している組織もたくさんあるでしょう。

ティールという名称も固定ではありません。

実際に、わたしが参加したある公開ギャザリングで「next stage organization」という別の表現が使われていたことがあります。

生まれてきた子供の人生を設計することはありませんし、できません。最終的には子供がみずから意思決定をして、経験を積み重ねていきます。人生には法則性はありませんし、固定したルールやプロセスもありません。

ティールも同じです。一度、ティールに変容したら、あとは探究するのみです。「ティールがベストだ」と判を押した時点で、その組織の進化・成長は膠着してしまします。

以上、ティールに取り組みにあたってよくでてくる誤解について紐解きましたが、いかがでしたでしょうか。

また、2017年の年末にティール組織を正しく学びたい人の為に有益な情報のまとめサイトを作りました。皆さんの学びや実践のプロセスにご活用ください。

https://matome.naver.jp/odai/2151443826163598001

ティール組織や新しい組織開発にご興味を持たれた方、相談されたい方は、下記連絡先までご連絡ください。

お問い合わせ先:info@homes-vi.com

(文章:嘉村賢州、編集・校正:佃芳史春)

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嘉村賢州

場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome’s vi代表理事、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授、『ティール組織(英治出版)』解説者、一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会理事、コクリ!プロジェクトディレクター(研究、実証実験)