クラウドファンディング開始!

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●翻訳は賞に値しないの?

「日本翻訳大賞」を作りたい

簡単な自己紹介からはじめさせてください。 私は英語で書かれた小説を日本語に翻訳することを仕事にしています。私はこの仕事が大変好きです。そうして私の場合は対象が小説なので、小説も大変好きです。日本の小説も好きですし、海外の小説も好きです。

海外の小説を私は小学生の頃から読んできて、その頃は翻訳という過程があることを知らなかったのですが、長じて翻訳というものの大事さを知るようになりました。そして、自分の好きな小説の、その「好き」という部分に、翻訳というものが大きく関わっていることに気がつくようになりました。そのことに気がついた時、私は仕事として翻訳をやってみたいと思うようになりました。

願い通り翻訳の仕事をはじめた私は、翻訳という仕事にとても満足しています。翻訳は最高に面白く、最高に有意義な仕事であると思っています。 私は目の前にある原語のテキストを日本語にすることに喜びを感じています。それは裏方の仕事ですが、大いなる裏方の仕事です。こんなに良い仕事はありません。

しかしです。仕事を進めてきた私はべつのことにも気がつきました。それは翻訳には優劣があるということです。当たり前のことです。何でも良い裏方とそうでもない裏方がいるわけですから。そして私は良い裏方を愛して、その仕事ぶりに敬意を表したいと思いました。

以上がこの度、クラウド・ファンディングで「日本翻訳大賞」の設立を考えた理由です。

翻訳に関する賞はこれまでもあって、現在も限定された形では二つほどあります。しかし包括的なものではありません。日本翻訳大賞は小説、詩、ノンフィクション、児童文学など、広くカバーしたいと思っています。原語も限定しません。

前年度に世に現れた翻訳書のなかから五作に絞り、そのなかから選考委員が一冊選びます。選考委員は金原瑞人、岸本佐知子、柴田元幸各氏にお願いいたしました。それにわたくしも末席に加えさせていただこうと思っています。またもう一人英語以外の専門の方にお願いするかもしれません。

翻訳賞がいままでなかったというのは、ほんとうに不思議な話ですし、一番いいのは翻訳を出している出版社が主宰することなのかもしれません。しかしそれはなかなか難しい面があるようです。翻訳は出版の世界のなかでは、残念ながら現在あまり大きな部分を担っていません。それは小さな書店の棚を御覧になっていただければ、すぐ分かると思います。日本の文化的なことの大半はさまざまな種類の〈翻訳〉から成り立ってきたように思うし、海外の小説はこんなに面白いのですが。

みなさまの御助力をお願いしたい部分は、賞金や授賞式の費用、運営の費用、それに選考にかかる費用などです。第一次選考では百〜二百冊ほど選び、第二次選考で三十冊ほどに絞ります。第二次選考から原文との照合も行われます。そして最終選考には五作残り、そのなかから選考委員が一作を選びます。

最後にもう一度個人的なことを書かせていただきますが、翻訳者というものはひじょうに厳しい立場に立たされてもいます。フリーランスであり、報酬にもごく一部をのぞいて恵まれていません。しかしそのこと自体はじつは大したことではありません。翻訳という仕事自体が素晴らしいことですから。 けれども励みになることはあってもいいと思います。良い仕事をした者が褒められていいように、翻訳者もまた顕彰されるべきだと思います。 この賞が実現したら、私はまず心のなかで過去の翻訳者に最初の賞を贈りたいと思います。ロフティングのドリトル先生を訳した井伏鱒二氏と、実質的に訳文を作ったと言われる石井桃子氏です。

長々とお付きあいありがとうございます。日本翻訳大賞、よろしくお願いいたします。

翻訳者 西崎憲

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