シリーズAガイド by YC第1章まとめ

Nina Ehara
14 min readFeb 29, 2020

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こんにちは!ANRIの江原ニーナです。毎日寒いですがみなさんお元気ですか?

さて今回は先日Y Conbinatorが公開したシリーズAガイドをまとめます。70ページとなかなかのボリュームなので、こつこつと!忍耐強くお付き合いくださいませ!

Series A Guide (https://www.ycombinator.com/resources/series-a-guide

当初、シリーズAラウンドについて考え始めた頃は、具体的にどういう流れでシリーズAに進むのかよくわかっていなかった。そこから2年が経ち、190のラウンド、$2B以上の資金調達を見届けた今、シリーズAラウンドについての理解は深まった。

このガイドは、シリーズAラウンドでの資金調達に関するエッセンスのようなものだ。数百人もの起業家の成功事例と、うまくいかなかった起業家たちの事例から得たインサイトも含まれている。

ここに載っているアドバイス自体と、それが実際にどう活きるかは地続きでない場合もあるが、ここにはわれわれがシリーズAプログラムで起業家たちに伝えたことのほぼ全てが書かれている。

このガイドは、以下のセクションに分かれている。

1. Quick Tactical Guide — 資金調達の各ステージで何をするべきかの概要。
各ステップにおける戦略にフォーカスするため、自分に関係があると思う部分を活用するといい。

2. Preparation — シリーズAでの資金調達に向けての戦略

3. Investment Materials — 説得力のあるピッチデックを作り、それを伝えるための演習や投資家へのメモ。

4. Process — 理論、戦術、シリーズA調達において起業家が持つべき戦略

5. Closing — できるだけ早くラウンドをクローズ数rためのプラン

このガイドを忠実に守ればラウンドが必ず成功するわけではない。そんな保証など存在しない。より重要なのは、成功するスタートアップが必ずシリーズAラウンドで資金調達をしなければいけない、なんてルールは存在しないことだ。このガイドは、VCからの資金調達を望んでいるすたーとあっぷにとって便利なツールになるようデザインされている。亜k血を提供できたら嬉しい。

Aaron Harris and Janelle Tam, YC’s Series A Team

Quick Tactical Guide

このセクションは、シリーズAラウンドでの調達におけるタイムラインを提示する。

引用元:https://www.ycombinator.com/resources/quick-tactical-guide

我々の経験をもとにそれぞれのステップにどれくらいの時間がかかるかの概算を算出した。タイミングについて考える上で最も重要なのは、「どれくらいの時間が残されているのか」という点だ。Paul GrahamのThe Fatal Pinchが示すように、起業家はキャッシュアウトの6ヶ月以上前に調達すべきである。調達は数日で終わることもあれば数ヶ月に渡ることもあり、最悪のケースに備えて準備を始めるべきなので、さらに3ヶ月は猶予を持たせよう。また、ピッチデックを完成させ、ピッチできる状態に持っていくには1–2ヶ月が必要であることも頭に入れておこう。

われわれが起業家に対し、12ヶ月前から準備しろと伝えるのはこの理由からだ。調達を始める前に数ヶ月準備すると残り9ヶ月ほど時間があり、そこから実際にFatal pinchに近くまで数ヶ月のバッファが持てる。

覚えておくべきは、会社にとってお金が必要であるからといって、必ずしも投資家がお金をくれるわけではないことだ。シリーズAでの調達は容易ではない。シード調達をした起業家の内、〜30%しかシリーズAに進まない。もし、上記の時間軸を当てはめて自分がすでに調達準備を始めていなければいけない段階にありながら競合やベンチマークしている企業(後日翻訳予定)に遅れをとっていると感じたら、YCのパートナーDalton Daldwellのこの記事を読むことを勧める。

<6–12ヶ月前>

・追うべき指標を見つける:
シリーズAのゴールを設定し、進捗を記録する。基準を作るために、「ビジネスモデル別の追うべき指標」(後日翻訳予定)を参照し、次にcomparative benchmarks(後日翻訳予定)の記事から、最低でもどこを狙うべきかを決めよう。印象に残るようなトレンドを十分なデータとともに示せるかが鍵になる。

また詳細かつ一貫性のある数字を用意することも必要だ。一貫性は、ビジネスにおける予測可能性(Predicability)の精度を示すほか、投資家がそのトレンドを信じる裏付けの一つにもなる。詳細を提示することは、それぞれの数字が何を意味するのかを明らかにし、投資家に数字への信頼を与える。指標について知り尽くすようにしよう。

・ストーリーを作る:
調達にあたっての軸をまとめよう。
なぜ自分の会社は偉大な企業になるのかのストーリーを3–4点書き出してみよう。最初の軸に加え、このうち1点でも共感してもらえたら投資家はあなたに賭けることを恐れないはずだ。

実際にそのストーリーを伝えてみてフィードバックをもらい、磨きをかけよう。

・投資家と関係値を築く:
候補となるシリーズA投資家のリストを作って、彼らといいコネクションを作ろう。ミーティングをし、実際に投資してもらいたい人たちを見つけよう。

詳細は伝え過ぎずも、ミーティングを通じて投資家の印象に残る必要がある。CRMで投資家との関係性を記録することを勧める。

・Pre-emptive offerが届いたら:
Pre-emptive offer(通常のシリーズA調達のプロセスを飛ばして投資家から届くタームシート)が届くと、通常必要なピッチの資料やDDのプロセスが不要になる。

Pre-emptive offerはふつう、すでに関係性がある会社から届くことが多い。投資家は、他の投資家に契約を巻かれる前にディールを握るためにこの手段をとることがある。しかし、これは頻繁に起こるわけではない。YC出身のスタートアップでシリーズAラウンドでPre-emptive offerを受け取ったのは全体の12%に過ぎなかった。

投資家が、口頭でPre-emptive offerの存在をちらつかせることがある。(実際にオファーをするわけではなく)これは、投資家サイドとしては、出資プロセスを始めていると考えられるが、実際に詳細を明記したタームシートがメールで届かない限りは、オファーを受けたとは言えない。

<2ヶ月前>

・調達額とバックアッププランを決める:
シリーズBでの調達までに必要な最低限の金額を調達する。(現状のコストの3–5x程度)算出するにはまず、次の1–2年の支出モデルを考えてみよう。

また、もし調達できなければどうするのかも決めよう。黒字化か、ブリッジファイナンスをするのか?これは、別のタイミングでシリーズA調達に回るときに投資家にとって印象に残るほどグロースするまでもつだろうか?代替プランを持つことは、精神的に負担のかかるプロセスにおいて心の平穏を保つ上で極めて重要である。

・ピッチ材料を用意する:
投資家とのミーティングなどをもとに、事業のストーリーを効果的に伝えられるようにしよう。Investment memo(後日翻訳予定)を書いて、鍵となる要素や投資するべき理由、論理を明瞭に伝えられるようにしよう。

また、調達にあたっての「アドバイザー」を決めよう。候補としては、シリーズAにリードで入らない既存投資家や、すでにシリーズAラウンドでの調達を終えている起業家など。彼らからフィードバックをもらおう。

・最高のピッチをする:
アドバイザーらとピッチの練習をして、フィードバックをm露あいながら何度も繰り返し練習しよう。

<1ヶ月前>

・業務を任せる人を一人選ぶ:
資金調達をするのはCEOの仕事である。もしあなたがCEOなら、資金調達に全ての時間を捧げられるようプランを作るべきだ。自分が持つ業務や責任を、次の一ヶ月間誰かに任せよう。100%全ての時間をピッチのためにあてるべきだ。

co-CEOがいるような稀なケースでも、調達は一人がフロントでやるべきだ。投資家は、クリアな意思決定プロセスを期待するが、これは一人の最終意思決定者を必要とする。調達に2人以上が関わるとなると、会社の最も重要な人物が二人オフィスを空けることになり、調達においてさまざまな協調を図るのがますます難しくなる。

・チーム拡大のプランを作る:
現在のラウンド以前の調達をするために作った仲間集めのオファーを一旦閉じて、シリーズAからBに進むまでの間にどんなポジションや役割の人が欲しいのか、同チームを拡大するかプランを作ろう。そうすることで、調達したお金をどのように使うのか投資家から聞かれた際の手掛かりになるほか、ストックオプションのネゴシエーションにも役に立つ。

・既存株主と足並みを揃えよう:
良いエンジェル投資家が株主にいれば、適切なパートナーを選ぶ際や人を紹介してもらう上で役に立つほか、DD際の後ろ盾にもなりうる。また、既存投資家でリードになり得たが今回はリードをとってもらう予定がない場合などは、妙なトラブルは避けること。

・プロラタを計算する:
キャップテーブルを元に、プロラタ行使後にどれだけの余白があるかを確認しよう。どれだけダイリューションするかもここでわかるはずだ。また、これらの計算は、 captable.ioAngelcalc.com,、Carta、Excelなどのツールを使って行うことができる。

・DDに向けて書類を準備する:
PLや事業計画、キャップテーブルなどを一箇所にまとめておこう。できれば、DocSendなどを使って誰が何を見たのかをトラックできると望ましい。

・ターム締結後に必要な書類の準備をする:
タームシートにサインしたら、次はここまでの全ての書類を一箇所にまとめておこう。チェックリスト参照。そうすることでクロージングの際の書類まわりのタスクが最大で一週間分ほど浮くことになる。

・ピッチの日程調整はタイトに:
ミーティングの日時は極力詰めるようにしよう。最初のピッチに回るのは1週間程度で終わらせ、タームシート締結の前段階の最終的なピッチ(マネプレなど)は1~2週間で終わらせるべきである。

調達をできるだけ短期間で終わらせるのが目標だ。また、競争を作るために同時期には全てのVCに対し同じピッチの段階(最初のピッチ、次の段階でのピッチ・・etc)を保つべきである。(aka あるVCには最初のピッチ、別のVCにはかなり締結に近いピッチを同時期にするべきでない)

調達に回るとき

・ピッチ
投資家からフィードバックをもらいながら、何度もピッチを繰り返そう。回数を重ねるごとに、どの点に最も疑問が集まるのか、何に最も興奮するかわかってくる。自分がすぐに答えられない質問や、言及すべき懸念も明らかになる。毎日、フィードバックを見直す時間をつくり、ピッチの質をあげよう。データを噛み砕いたり、FAQsのスライドを追加したりするのも良い。

・切迫感をつくる:
切迫感をつくり、調達のプロセスを止めないためにも、(投資家に対して)現在の調達状況ステータスは最低限だけを共有しよう。フォローアップする必要がある、という点が重要だ。もし投資家が少しでも興味があるなら、ミーティング後24〜48時間以内には再度連絡してくるだろう。もし音沙汰なければ、いい返事が来るまでフォローアップの連絡を送ってもよい。ここで、「必死な時にすること」と、「忙しい時にすること」を考えてみよう。フォローアップの連絡をする際には、必死に見せるのではなく、忙しく見せよう。

・情報共有は慎重に:
DDのために投資家にコンフィデンシャルな情報を提供するのは一般的にはOKだが、自分が占有するべき情報は共有しないこと。(例. プロダクトをパクれうる情報や、顧客が盗まれうる情報など)

情報を求められた際には、その情報でなんの疑問を明かそうとしているのかを聞くと良い。そうすることで、⑴より効率的に質問に答えられる、⑵ただ大変なタスクをやらせるためだけなのか分かる(もっと悪い場合、競合の利益になるように使われる、また他のディールのために使われることも)。

皆、関心があるかのように映るだろうが、そのうち本当に興味があるのはだいたい4分の1程度である。ノイズにとらわれず、本当に興味を持ってくれているかを見極めるのはCEOの仕事である。

・必要に応じて繰り返す:
全員に見送られたり、返信が途絶えたりすることも場合によってはあるだろう。もし、調達を続けると決めたなら、新しい投資家を探し続けよう。新しい投資家に連絡し、ミーティングをし、日々改善をし、このプロセスを何度も繰り返そう。

タームシートとクロージング

・連絡をとった投資家に連絡する:
タームシートが届いたら、今回できることなら出資を受けたかった投資家に対しては、すでに別の投資家からタームシートを受け取ったことを知らせよう。

シリーズAについては、口頭での約束や握手をしたからといって、オフィシャルなオファーであるとはいえない点には注意が必要だ。また、どこからの出資なのかもここでは明らかにしないでおこう。

また、これは本当に出資を受けたい投資家からのオファーである場合のみに行うべきだ。なぜなら、起業家からこのような連絡が来た場合、投資家は24〜48時間以内に、承諾するか、別の条件でオファーを出すか決める必要があり、場合によっては誰も他の条件を提示せず全員がそのラウンドから手を引く場合もあるからだ。

自分がそのタームシートを理解しているか確認する:
タームシートを読み解く上では、記載されている条件や資格が、人目見ただけではわからない影響を招くことがないか考えよう。

これまで起業家と働く中で、思わぬ方向に進みうるケースや、その際に何をするべきか、交渉するべきタイミングや方法については理解が深まってきた。この学びをもとに、YCのシリーズAタームシート(後日翻訳予定)を公開する。

また交渉が必要になった場合のやりかたについては、How to negotiate(後日翻訳予定)を参照しよう。

・正しいパートナーを選ぶ:
複数のオファーを手にしているなら、喜ばしいことだ!誰と次のステップに進むかを選べる立場にある。今度はあなたがDDをする番だ。

ボードメンバーになってくれるかどうか考えるのは、共同創業者を探すのに似ている。大勢のいる場で投資家に会おう。リファレンスを取ろう。(特に、その投資家から出資を受けて、その後失敗した起業家や、なかなかうまくいかず苦労した人からのリファレンスをとるといいだろう。)そうすることで、うまくいかないことがあった時に投資家がどのような反応をするかが分かる。

・補足的DD(Confirmatory DD)に備える:
補足的DD(Confirmatory DD)は一般的に、ビジネスサイドやリーガルサイドに関する質問などである。

ビジネスサイドでは、顧客を装った問い合わせや、鍵となる指標についてのさらなる精査、また事業計画やビジネスモデルについてのさらなるフォローアップの質問などがこれにあたる。また、起業家のバックグラウンドチェックが行われることも多い。

タームシートにサインしてから、最終的なドキュメント作成にあたっての交渉にかかる時間は4–5週間をみておこう。もし、早くクローズする必要がある場合(キャッシュフローの関係など)は、投資家と弁護士両方に対してそれを明らかにしておこう。もし、全員がその緊急性を理解していればタームシートをサインしてから最速で数日でクローズできることもある。

補足的DDが終わり、交渉〜資料作成が終了したら、全員でサインし出資となる。もし投資家がボードメンバーに入ることになっているなら、ボードメンバーとしての責務はここから始まる。

・クロージング後の管理(USのケース):
クローズしたらすぐに409A(企業評価プロセス)をアップデートしよう。

また、定期的なボードミーティングの日程を決めよう。最低でも四半期に一度は開催するべきだ。

また、クローズしたら提出するべきリーガルまわりのプロセスを確認しよう。(この章はUSにおける具体的プロセスだったため一部省略)

めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、いったん最初の章(Quick Tactical Guide)をまとめてみました。

感想としては、かなり具体的な戦略(駆け引きなど)が書かれているのが印象的でしたね。続きも長いですが頑張ってまとめるぞ!

というわけで引き続き、起業・調達相談お待ちしています!

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Nina Ehara

’97 / Currently uni student at Hitotsubashi, majoring in philosophy / formerly at UNC-CH / Associate at anri.vc / loves consumer-facing products!