勢いのあった海外スタートアップの失敗要因 Part①

Nina Ehara
8 min readFeb 21, 2019

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この記事は、crunchbaseの7 Failed Startups and the Lessons Learnedをもとにリサーチをし、執筆しています。

先日Lux Capitalの共同創業者であるJosh Wolfe氏がポッドキャストで、「失敗するケースを想像/想定できないことが失敗を招くのだ」(“Failure comes from a failure to imagine failure.”)と言っていました。

Startup Genome Reportによれば、92%のスタートアップは3年以内に失敗するという数字もあります。わずかな判断の遅れや、小さなミスが致命傷となりうる現場において、再現性のあるミスは絶対に防ぎたいものです。

今回の記事では、資金調達にも成功し、勢いがあったにも関わらず失敗に終わった海外スタートアップと、失敗要因などをざっくり紹介します。

Shyp ($62.1M調達)

  • 国際間の荷物の輸送サービスを。(https://shyp.com/)わずかスマホ数タップで荷物配送手配(国内外)ができるサービスを打ち出していました。
  • ローンチからわずか数ヶ月後にはNYタイムズに取り上げられ、時価総額は$250Mにものぼり一躍投資家の目を引く存在に。急成長っぷりはUberとも対比されるほどでした。
  • ある時を境にユーザー数の伸びが滞ります。しかし、当初の戦略を一切変更せず新しいエリアを拡大し、次から次に新しい戦略やサービスを追加。会社の拡大スピード(成長させすぎ)と、顧客の伸び率(実は伸びてなさすぎ)が比例せず、会社経営は困難になりました。(のちのちグロース戦略を変更するも時すでに遅し。)
  • 当時、同社を含むオンデマンドサービスが盛り上がりを見せており、2015年にはKPCB(John Doerr氏)から$50Mの出資を受けます。
    (ちなみに、同時期に登場したオンデマンドサービスのうち、現在もプレゼンスがあるのはPostmates(今年IPO予定!)や、Instacart(Amazonの勢いに若干押されていますが)、DoorDashくらいとも言われています。)
  • CEO Kevin Gibbon氏は、失敗の原因として”growth at all costs”戦略(何が何でも成長、どれだけ費用をかけてもグロースさせるというメンタリティ)を挙げています。Jカーブを目指すのはスタートアップの醍醐味の一つですが、会社の成長率に見合った成長戦略の重要性を示す事例となりました。

Beepi($149M調達;2013–2017)

  • 中古車マーケットプレイスサービス。当時、オンデマンドのマーケットプレイスが成長期にあったため、Beepiの成長は堅実だと広く信じられていました。(シリーズBで$60Mの調達を達成しています。)
  • 倒産の主要因は、高すぎるバーンレート。(月に$7Mとか使ってたらしい…)圧倒的に持続不可能だったのです。
  • また、主要チームメンバーたちの派手な金遣いも悪名高いものでした。($10,000のソファをオフィスに置くなど)さらに、意思決定はマイクロマネージされており、従業員が何かを決めたりすぐに動き始めたりすることはできなかったと言われています。
    冒頭に紹介したLuxのWolfe氏は、マイクロマネッジしたがる支配欲の強い起業家は、①周りの人を信じていないのですべての決断に自分も関わりたいと思っている or ②高い水準を求めている or ③何かを隠している、のいずれかであると述べています。

Juicero ($118.8M調達;2013–2017)

  • 2013年創業。wifiと繋がった高級ジューサー($699)と専用のジュースパックを販売。「フレッシュジュース界のTesla」や、シリコンバレーのバブルの象徴とも言われました。
  • シリーズCまで進んだことや、シリーズBではGV、KPCBなどが出資していたことも、注目要因の一つでした。
  • しかしある時Bloombergが、専用のジューサーを使わなくても手でジュースが搾り出せると報道。同社CEOは同社の技術を擁護するも、強い批判に晒され、満足できなかった顧客には返金すると約束しました。
  • ジューサーの価格を$399に値下げするも、高すぎる価格帯はマーケットに浸透するに至らず、ローンチから16ヶ月で撤退することに…。
  • PMFからは程遠かったこと(価格帯のヒヤリング不足、ユーザーテスト不足、フィードバックを無視)が失敗の原因でした。

Peppertap($51.2M調達;2014–2016)

  • “食品の購入に革命を起こす”と銘打って、インドで創業されました。
  • アプリを使って、日用品や食材の買い物代行&デリバリーを展開。地元のスーパーなどと手を組んでサービスを行なっていました。
  • 同社がのちに発表したブログによると、アプリと提携店がシームレスではなかったことや、一気にスーパーが参入するも対応しきれなかったことを失敗要因として挙げています。
  • 持続可能なビジネスモデルの構築よりも顧客基盤の拡大を優先し、資金が底尽きてしまったのです。

Sprig($56.7M調達;2013–2017)

  • ヘルシーな料理をアプリで注文できるサービス。当時黎明期であったオンデマンドのフードデリバリービジネスの難しさを示した事例となりました。
  • 使用される食材は、地元のもので、季節に合ったものが提供されていたため、需要はありました。しかし、「料理を作り、デリバリーをする」事業を大規模に維持するのは困難を極めたと同社のCEO Gagan Biyaniは述べています。
  • 当時はUber EatsやBlue Apronなどの競合も多く、値上げでもできなかったため、必要なコストをまかないきれなくなり、収益性のなさからクローズするに至りました。

Yik Yak($73.5M調達;2013–2017)

  • 大学生などを中心に大人気となったチャットアプリ。匿名で会話することができ、半径5マイル以内のユーザーのスレッドを見ることができるサービスでした。
  • 一時は時価総額$400Mにまで到達するも、ネットいじめや、脅迫などを招いて社会問題となりました。ジオフェンスを利用してYikYakの使用を禁止する高校や大学も相次ぎ、悪いイメージにつきまとわれることになります。
  • さらに、ティーンは同時期に登場したSnapchatに流れていき、YikYakは隅に追いやられることになりました。
  • トレンドに乗るも失敗した事例です。(トレンドだったために悪い側面も多くの人の目についたのでしょう。)

Doppler Labs($51.1M調達)

  • 「Here One」というスマートイヤホンを販売するスタートアップ。同社の製品で、誰もが耳にスピーカーとマイクを持っているような状態にすることを目標としていた。
  • し予想されていたよりも製造に時間がかかったほか、デザインの欠陥を指摘するような口コミやレビューに苦しみます。
  • しかし、AirPodsやGoogle Pixel Budsなど大手企業も類似品を販売。さらには新型のAirPodsの充電が5時間持続するようになったことで、2時間しかもたない同社の製品はあっけなく敗れてしまいました。
  • 同社CEOはのちに、「ハードウェアで起業したことそのものが間違っていた、ハードウェアで起業なんかするんじゃない!」と述べています(T . T)
  • ハードウェアで起業するのなら、競合する大手(Apple, Google, Microsoft, Amazonなど)よりもはるかに良い製品でないと太刀打ちするのは難しいことを示す事例となりました。

様々な失敗例や失敗要因を挙げてきましたが、一方で失敗が大きな成功に繋がるケースがあることも確かです。

Reid Hoffmanは、プロフェッショナルなネットワーキングサービスとしてSocialNetを作るも失敗しましたが、その後LinkedInで大成功を収めています。

Evan Williamsは当初Odeoというポッドキャストのプラットフォームで起業するも、iTunes storeに打ち勝てずシリーズAで断念。しかし彼のサイドプロジェクトであったTwitterは大躍進しています。

色々調べている中で他にも教訓をうんだ失敗例があったので第二弾もそのうち書きます。

現在独立系VC ANRIでお仕事をしています。起業相談、資金調達の相談がある方は遠慮なく私にDMしてください!ANRIコンタクトフォームからでも大丈夫です!お待ちしています〜!

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Nina Ehara

’97 / Currently uni student at Hitotsubashi, majoring in philosophy / formerly at UNC-CH / Associate at anri.vc / loves consumer-facing products!