電子出版事業に取り組んでわかったこと

「金風舎」の事業方向転換について

Amazonランキング大賞の2016年上半期 ビジネス・経済ランキングに、金風舎刊「Amazon Kindle読書術 増補改訂版」が16位にエントリーした。

「金風舎」とは、私が経営する株式会社デジカルで、2013年より運営している電子出版レーベルのこと。毎月、数冊の新刊を発刊している。

実践的な試験商品として販売した

今回エントリーした電子書籍は、同じく当社で実験的に立ち上げたブログメディアpublissの連載記事をまとめ、2014年に「Amazon Kindle読書術」として発刊したものを増補改訂して発刊したもので、完全に電子出版のために企画した出版物だ。

初版もAmazonの日替わりセールにエントリーするなどそれなりの反響があったが、改訂版は電子書籍市場が広がったのか、同じく日替わりセールに選ばれたが初版以上の売れ行きを見せた。

また、今回の改訂版出版にあたっては、増補部分だけを「アップデート版」として99円で発売したり、AmazonPODを利用した紙版の出版も実現し、当社が目指している「ボーンデジタル出版」の先進事例となっている。

得られた経験値をひとことで簡単に説明しきれないが

このほか、金風舎ではセット版や英語版の出版、企画コンテンストや読書会などのイベントやブログの運営、Facebookページの運用や広告出稿など、およそ思いつく限りのことを実践的にテストを繰り返してきている。

加えて個人的にも大手出版社のデジタルファースト出版レーベルの立ち上げに参画し(現在も新たに立ち上げつつあるが)、この分野でのビジネス展開について必要な実践的な実績と知見を得ることができたと考えている。

その上での今回のランキング大賞エントリー。本格的に電子出版に取り組み始めたのが2011年なので今年でまる5年。これまで「電子書籍」「電子出版」をキーワードに取り組んできたが、ひとつの到達点に至ったと考えている。

この機会を事業転換点と定め、事業方針を新たに定めて取り組みを刷新していこうと考え、すでに着手している。その新たな方針については、今後の事業成果を実際の実績や広告宣伝で触れて判断してもらうとして、いまは、この機会に考えている2つのことについて関係者に向けてまとめておきたい。

情報産業の生産性という観点からのアプローチ

1つは当たり前のことだが、これまで以上に事業収益に集中するということ。これからはテストマーケティングの言い訳を完全封印し、一般的な新規事業案件として成果を上げていくことにする。もう1つは方法論を変えること。これまでの取り組みは、私個人の発想とそこからの一点突破展開だったが、新たな取り組みは始めから組織的な展開を目指す。

電子出版事業も情報産業の一分野と位置づけ考えているが、この情報産業の生産性を追求するときに、いつも後手になっていて生産性向上を阻害している要因が実は組織論の不在だと考えている。

組織論というと組織図を作ることを想起しがちだが、本来、生産性の高い組織には組織図は存在しない(存在する暇は無い)と考えていて、あえて組織図を描かない方法論をとっている。といって、やっていることは単純に超高速でPDCAを回すことでしかないが。

また情報処理ツールやサービスを使いこなすことも大事な課題と認識して、その点で工夫も重ねているが、出版という事業が、より深く人の感情に入り込んでいく仕事でもあることを考えると、関与する社員がどういった気持ちで、どのような環境で仕事に取り組むかが経営者として解決すべき最大の課題だと考えている。そういった意味では、もはやITリテラシー向上には大した価値はないと考えている。

おわりに

これまでの取り組みに整理をつけ、次の展望を示そうと書き始めたが、書いているうちに発想が広がり収集がつかなくなってきたので、ひとまず終わりにする。

最近、20代の駆け出しのパソコン解説書編集者として働き始めた直後から、Windows95、インターネット、ITブームの波に乗って、ここまで勢いきてしまったという思いがとても強い。下手をするといま手元にある何もかもが小手先の技でしかないのではないかと思うこともある。

その視点でこの5年の電子出版事業の取り組みを振り返り、次の展開を考えるとき、最初に取り組むべきは、この20年を牽引してきた「電子」の二文字を完全に取り去るということだ。だからといってそれは従来の出版モデルに回帰することではなく、ボーンデジタルを追究し出版の持つ本来的価値の体現を目指すということ。

今回のランキング大賞のエントリーで「金風舎」は一定の役割を果たしたと考え、発展的解消も視野にいれ次の段階に進むことにする。

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