快適ヒモなし。重低音はさすがのBose QC30

Nobuo Hayashi
10 min readOct 17, 2016

Boseのノイズキャンセル、インイヤー型ヘッドホンに待望の無線接続タイプのモデルが加わる。2016年6月の製品発表当初は9月発売とされており出荷を心待ちにしていたが、諸般の事情により出荷は10月下旬に伸びていた。現在、Boseのサイトや大手量販店のサイトなどで予約開始されているので、既に申し込んでいる読者も多いだろう。ラッキーなことに、出荷を前にして製品を使用するチャンスに恵まれたので、注目の製品の仕上がり具合をいち早くお伝えしようと思う。

音源との接続はBluetoothによる無線接続。取回しの良さで快適な音楽環境が手に入る。外出時には手放せない存在になりそうだ。

製品名はQC30。これまでの製品ではQCとは「QuietComfort」(快適な静寂)だったが、この製品のQCとは「QuietControl」。すなわち、「静けさをコントロールする」という製品ビジョンが込められた。

早速、電車内で使ってみた。電源を入れると「バッテリー残量」「接続先機器」が音声で伝えられ、どの機器とペアリングできているかがすぐ分かる。1台のヘッドセットは2台の親機とペアリングを組むことができる。たとえば、バッグの中にiPad、ポケットにiPhoneを持っているときにはこの2台のどちらからでも再生させることができ利便性が高い。

電源が入った瞬間、周囲の騒音がスッと消え去るのが分かる。Boseのノイズキャンセル機能は他社製品に比べてキャンセル強度が強く、電車やジェット機内のゴーというような音がきれいに遮断される。もちろん、無音になるわけではないが、音楽を流すと騒音がほとんど気にならなくなる程度に軽減される。

また、安全性に配慮して案内放送などの人の声は比較的緩めにキャンセルされるため、何か案内放送が始まったなと気付ける。内容を正確にすべて聞き取るにはイヤーチップを外すか、ヘッドセットの電源を切るかしなければならない。

QC30はその型番「Quiet Control」が示す通り、そのノイズキャンセル強度をコントロールすることができる。iOSやAndroid機用に配布されている「Bose Connect」を使うと下図の通り、ノイズキャンセルレベルをコントロールできる。コントロールノブを右いっぱいに回すと周りの騒音がぐんと軽減していくのが分かる。

Boseのヘッドホンをコントロールするアプリ「Bose Connect」が用意されている。1台のヘッドホンは2台までのソースに同時接続できる。接続した履歴を覚えていてくれるので相手をさらに切り替えたいときは上二つの接続先のどちらかを切り離し、過去に接続したリストから目的のものをオンにすればよい(左)。ノイズキャンセルレベルを自由にコントロールできる(右)。

どこでも「マイリスニングルーム」実現

ノイズキャンセル効果は外出先でできたちょっとした空き時間でも音楽鑑賞に没入できる素晴らしい体験を味あわせてくれる。ハーモニックスを使ったかすかな響きを聴かせてくれるギター曲や静かな余韻を楽しむピアノソロ曲など、これまでは自宅のオーディオセットで居住まいを正して聴くしかなかったような曲が電車の轟音の中で楽しめるとは驚きだ。

特にカフェでお茶を楽しんでいる時などは至福の時が楽しめる。カフェなどの騒音レベルは電車ほどではないものの、人の話し声や厨房での機械騒音は音楽に没入したいときにはやはり邪魔になる。そんなときにQC30を耳に装着すればその瞬間からそこが静かなマイリスニングルームに変貌する。コーヒーの馥郁たる香りが鼻をくすぐり、頭の中は澄み切った音楽が鳴り響く。

周りの人は忙しく立ち働いたり、仲間とおしゃべりを楽しんでいる中で、一人だけ大好きな楽曲に没頭できるとは実に不思議な感覚だ。駅の雑踏、満員電車の中でも、この不思議な体験ができる。映画のシーンで、たとえば重要な事実が提示されるときに現場の音が消え音楽だけが流れて、その時の心象風景を強調するといった場面がよくあるが、言ってみればそんな感覚。自分だけの世界に没頭し、自分だけの時間を過ごせる。

周囲のノイズが消えているため、音楽自体の音量はそれほど上げなくてもいいのも快適な体験の一要素だ。ノイズキャンセルされていないヘッドホンを使った場合、雑踏の中、電車の中で音楽がしっかり聴けるようにするためにはかなりの音量にしなければ十分に楽しめない。当然耳への負担が増え、周囲に音漏れをまき散らす。いいことは一つもない。

コードがからむうっとうしさ解消

QC30を使ったときの快適さはコードがからむうっとうしさが一掃されたのも大きい。

実は私はBoseのノイズキャンセル機能が気に入っていて、前身である有線タイプのQC20をずっと愛用している。QC20のコードはねじれを防ぐためしっとりとしたゴム引きのようなコードが使われている。しかし、これが一度巻き付いてしまうとバラスのが大変、iPhoneをポケットにしまったり、再び取り出すときにはからんでしまって大変にストレスがたまってしまうのだ。

ヒモなし生活がこんなに快適とは思わなかった。首に乗せるU字型のネックバンド部分にはバッテリー、ノイズキャンセリング演算回路、Bluetooth回路、DA変換、アンプなどがぎっしり詰まっている。

バッテリーをここに詰め込んだのは正解と思われる。十分なサイズのバッテリーが積めるので、一度の充電で10時間以上は連続使用可能だ。実際に使うときには、ずっと連続して音楽を聴き続ける訳ではないから10時間以上は持つ感触だ。

充電はUSBケーブルのマイクロUSB端子をネックバンドに接続して行う。日常的に使っているモバイルバッテリーから充電できる。満充電には約2時間かかる。(バッテリーが切れてしまった場合、15分間の急速充電を行うことで約1時間の音楽再生が可能)。充電しながら使うという訳にはいかないので、15分の急速充電で1時間程度使えるのは嬉しい配慮だ。

Boseの製品開発ページでチェックすると、ネックバンドの役割などが説明されている。こんなところに電子回路をぎっしりと詰め込んだんですね。

音質は厚みのある低音が魅力

有線接続のQC20に比べて音質が貧弱になったのではないかと心配したが、見事に裏切られてしまった。

Bose独特のたっぷりとした低音。ノイズキャンセルされた静寂の中で伸びやかに高音域も美しく再生される。Bluetooth接続である宿命からハイレゾ再生には対応しないが、静かな環境内でしっかりとした音像が再生されるので、隅々までとてもクリアに聴こえる。

ブライアン・ブロンバーグの「Wood」に収録されている<All Blues>などを聴くと、ベースの開放弦をぶんぶん唸らせるさまが迫ってきて背中がぞくぞくする。

ベースの迫力を堪能するにはこのアルバムがお薦めだ。ブライアン・ブロンバーグの「ウッド」。<https://itunes.apple.com/jp/album/oru-burusu/id287286683?i=287286703

高域に関しては有線接続のQC20やハイエンドのヘッドホンの方が繊細に再生してくれる部分もあるが、それは深夜のリビングルームなどでの話。外出先のノイズの多い環境下でクリアに再生できる力量と無線による取回しの良さを考えると、やはりQC30が圧倒的にお奨めだ。

iPhoneともとても相性が良い

新しいiPhone 7にはヘッドホンをつなぐジャックがなくなった。有線型のヘッドホンを接続するにはLightningコネクターからDAコンバーターを介して接続する必要がある。

そんなiPhone 7にはBluetooth接続の本機などが最適だ。アップル純正の無線接続型のAirPodsが出荷を控えているが、こちらはノイズキャンセル機能がない。やはり純粋に音楽に没頭しながら堪能したいという向きにはQC30が魅力に映るだろう。

電話やFacetimeの通話はこのヘッドセットでそのまま使える。かかってきたときには下の写真の中央のボタンを1回クリックする。音声はヘッドセットに内蔵されたマイクが受け持ってくれるので、iPhoneをささげ持ったりする必要はない。

音楽の再生・ストップ、電話に出るときなどは写真の中央のスイッチを一度クリックする。早送りは2回、前に戻るときは3回クリックする。+ーは音量調整。脇に二つのボタンが見えるが、これはノイズキャンセリングレベルを調整するボタン。この調整はアプリ内でやったほうが直感的に理解できて良い。

冒頭でも説明した通り、Boseのワイヤレス製品の接続には専用のコントロールアプリ「Bose Connect」が用意されており、iOSの「設定」画面を呼び出さなくてもその中で接続からノイズキャンセルレベルの設定まで一通りできるようになっている。他社のBluetooth接続デバイスの場合は「設定」アプリを立ち上げて「Bluetooth」接続の設定をしなければならないものが一般的で、初心者ユーザーには使いにくいものが多い。専用アプリを作ってくれたおかげで、ぐんと使い勝手が良くなっている。他のメーカーもこういった部分を見習ってほしい、と思う。

iOSアプリ「Bose Connect」を起動させると機器検索のモードになる。(左)。画面をタッチするとペアリングするにはどのボタンを押せばよいか図解が出てくる(中央)。しばらくすると機器が検索表示されるので、目的のデバイスを選択する(右)。とても分かりやすい。

価格はQC30が32,000円、AirPodsが16,800円(いずれも税抜)。価格的にQC30はかなり値が張るが、航空機の中だろうが電車通勤中だろうが音楽がじっくりと楽しめるというポイントは外せない。

出荷は10月28日。現在既にBoseのサイトや特約店で予約販売を開始しているので、チェックしておくとよいだろう。

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