タピオカティーとGoogle Trends

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10 min readDec 15, 2019

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このブログは月刊フィントークのアドベントカレンダー(https://adventar.org/calendars/4331)15日目の記事です。

今回の記事では、「タピオカティー」は日本だけで流行っているのか、それとも他の地域でも流行っているのかを、Googleの検索キーワードに関するデータ(Data source: Google Trends (https://www.google.com/trends))を使って調べていきます。
流行を捉えるためにはタピオカティー店舗数やタピオカ消費量等、いろんなデータが使えそうですが、今回はタピオカティーへのGoogleユーザーのインタレスト=サンプリングされたデータから推測される「特定の地域・期間のタピオカティー関連の検索ボリューム/特定の地域・期間の全体の検索ボリューム」を使ってタピオカティーへの関心の時間推移と地域別の比較をしました。Google Trendsを使うと、あくまでもGoogle検索上に現れるユーザーの関心に限られますが、ほぼリアルタイムのデータに気軽にアクセスできます。

Google Trendsには「トピック」という便利な機能があり、一つのコンセプトに関連する異なる言語にまたがる単語群に関するインタレストのトレンドを見たり、その単語群への関心を地域別に比較することができます。これを使って2004〜2019年に渡る「タピオカティー(飲料)」について、世界の関心の時間推移を見ていきます。以下の全てのデータでは2019年12月分は途中までとなっています。
下の図は全世界の2004/01/01–2019/11/30までのトレンド(月次)と、一年間のトレンドを月平均した値の対前年比増加率((対象年の値ー前年の値)/前年の値。以下簡単にトレンド対前年比増加率)です。トレンドの値は最大値を100としてスケールされています。検索サービスの普及により期間中にGoogleユーザーの構成が変わっている可能性が高く、さらにデータの計測方法にも変化があったかもしれないので、特に2010年以降について注目して見て行きます。

図1. 「タピオカティー(飲料)」の世界トレンドと対前年増加率(%)

これらを見ると2012年に一度ブームがあり、その後2015年からやや上昇トレンド、そして2019年に再度大きなブームがあることがわかります。季節で見ると、やはり6、7、8月の夏に話題に上がっているようです。

2012年、2019年のブームは一体どこで起こっているのでしょうか?これを調べるために、2010年から2019年までの国・地域別インタレストのトップ10をランキングにしたものが以下の図です。1位の値を100とした値を相対的に表しています。
バーの色は、赤がアジア、青がアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド地域、緑はヨーロッパです。

図2: 2010–2019年の地域別相対インタレスト

2010年はシンガポールが1位で、2位の台湾と比較して4倍以上のインタレストとなっています。
2011年、2012年ではドイツ、オーストリアの中欧エリアが上位に上がっており、この地域で注目されていた様子が伺えます。2012年に絞ってGoogle Trendsの関連キーワードの注目度ランキングを見ると「mccafe」というキーワードがいくつか上がっています。これをヒントに検索すると2012年の夏にはドイツのマックカフェでタピオカティー(的な何か)が提供されていたという記事(https://www.huffpost.com/entry/mcdonalds-bubble-tea-germany_n_1587833)がありました。これらの国のトレンドを確認するとドイツ、オーストリアでは2012年で一旦落ち着き、近隣のチェコでは少し遅れてピークを迎えたようです。

図3: ドイツ、オーストリア、チェコの「タピオカティー(飲料)」のトレンド。各国での集計期間の最大値を100としてそれぞれスケーリングしてあり、国をまたいだ相対的な比較はできない。チェコはブームの前後でトレンドのデータの様子がやや変化している。

同じく2012年に上位に来ているシンガポール、台湾、タイのトレンドも同様に見ると、タイでは同時期2012年前半から2013年後半にかけてトレンドが上がっているものの、シンガポールではトレンドの山は2010年後半から2011年前半とやや前の時期になっています。台湾に関しては2011年から右肩あがりです。

図4: シンガポール、台湾、タイの「タピオカティー(飲料)」のトレンド。各国での集計期間の最大値を100としてそれぞれスケーリングしてあり、国をまたいだ相対的な比較はできない。

図3と図4の比較、2012年の地域別インタレストの相対値がドイツ:オーストリア:シンガポール:タイ:台湾=100:75:70:50:50であったことを合わせて考えると、2012年のブームはドイツ、オーストリアが中心であったものの、そのエリアでは一時的なものに終わり、アジア3国のように以前からインタレストがある程度存在する地域とは特性が異なっていたと推測できます。
2013年以降は台湾、シンガポールのアジアエリアがインタレストでは優勢に戻りますが、青色のアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド地域も上位のインタレストにコンスタントに食い込んでいます。
2015, 2016, 2017年の世界トレンド対前年増加率が+13%、+20%、+24%とコンスタントに上昇していきます。
2018、2019年ではトップ4が全て相対インタレスト50以上であることから地域の広がりが見えます。世界トレンド対前年比増減率が+36%、+74%とトレンドが大幅な上昇傾向にあることがわかります。各地域(2010–2019年に相対インタレストtop20に一回でも入っているもの)の2019年トレンド対前年比増減率を計算すると、インドネシア+779%、マレーシア+653%、日本+274%、フィリピン+168%、ドイツ+161%、韓国+161%、シンガポール+128%、ノルウェー+113%と9ヶ国で前年の2倍以上のインタレストであり、2019年のブームは多くの国をまたがったものであることが推測できます。

今回のGoogle Trendsデータを利用した比較では、
●2012年にタピオカティーが中欧で注目されていたこと。
●今年のGoogle検索上のタピオカティーブームは、日本に限らずアジアを中心として世界的に起こっており、今までのインタレストと比較しても大幅な上昇トレンドであったこと。
などがわかりました。
最後は日本のトレンドについてと今回の感想についてです。

図5: 日本での「タピオカティー(飲料)」のトレンド

2018、2019年のトレンド前年比増減率は+129%、+274%と2019年ではおよそ4倍弱であり、今回調べた地域の中で2019年第3位と大幅な伸び率です。このことからも、去年から今年にかけてのブームの様子はGoogle Trends上に現れていることがわかります。しかし、2019年の地域別インタレストランキングでは日本は13位で、1位のシンガポールと比較すると100:10と10分の1程度です。
個人的にはもっと上位にくるかなと思っていたので少し意外でした。これは、日本国内の情報に多く触れていたので他の国と客観的に比較する機会があまりなかった、国内でも身の周りでのブームにより強い印象を持っていた等の主観的な問題もあるかもしれません。また、検索の母集団とタピオカティーが流行っていた層のずれも考えられます。日本ではInstagramなど載せることが流行っていると聞いているので、他SNS等での比較では違った結果になるかもしれません。これらの要因に加え、日本でのタピオカブームはタピオカティーに始まって「タピる」という言葉が流行語になる、タピオカラーメンが生まれるなど、今回の調査の対象である「タピオカティー(飲料)」というトピックを超えたところで広がりを見せているために、このトピックでは完全には補足しきれていないのでは?と思っています。
ちなみに「タピオカ(トピック)」というトピックを見てみると、2015–2019年12月途中での日本のトレンド平均は「タピオカ(トピック)」:「タピオカティー(飲料)」=13:1、世界では19:28です。日本ではタピオカティーに比べて圧倒的にタピオカのインタレストが大きく、世界ではタピオカティーがタピオカの1.5倍程度です。2015–2019年12月途中での「タピオカ(トピック)」での地域別インタレストでは日本が1位で、ブラジルが2位です。ブラジルではタピオカ粉で作られたクレープ状のものがよく食べられているようなので、国によっては「タピオカ(トピック)」には、タピオカティーでイメージするタピオカとは異なるコンセプトのものが入ってくるようです。また、英語ではタピオカティーは「bubble tea」、「boba tea」または単に「boba」等で呼ばれていますが、アメリカ合衆国での「タピオカ(トピック)」と「タピオカティー(飲料)」のトレンド比較をすると、平均のインタレストの違いと、時系列データの周期と伸び率に明らかな違いがあります。どうやら「タピオカ(トピック)」に英語でタピオカティーを意味するこれらの単語は入っていないようです。ここら辺の話はまたブログに書けたらいいなと思っています。
国や文化をまたいだコンセプトの比較は、なかなか単純にはいかないなと思った今回の記事でした。

今回利用したGoogle Trendsのデータについて詳細はこちら。(https://support.google.com/trends#topic=6248052

Google Trendsからのデータの取得には非公式pythonパッケージであるpytrendsを一部利用しています。(https://github.com/GeneralMills/pytrends

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