デジタルは遅い

もうこの書き込みを読んでいるような人は、昔の事情を知らない人かもしれないけれど。

すでに過去のメディアになってしまったビデオテープ。VHSという名前で、厚手の単行本くらいのサイズの媒体に、標準なら2時間、3倍速なら6時間分のテレビ番組が録画できた。

結構早い時期から、「留守録機能」が完備された。その時間にテレビの前にいなくても、代わりにビデオデッキが番組を録ってくれていて、別の時間にそれを楽しむことができる。ビデオ映像のタイムシフト概念が生まれたのは、昭和の最後の10年にも満たない時期だ。

とは言え、「留守録機能」は機器の操作がむつかしいと言われ、なかなか思い通りの時間にセットできない人がたくさんいた。それに対する様々な対策、簡単操作自体が、「機器の価値」として、新しい商品が毎年のように更新されていた時代だ。

そうして「正しい留守録」がセットされたとしても、今度はそのデッキ自体の時計機能が問題になる。今のように電波時計が完備している時代ではない。なので、録画予約が正しくなされていたとしても、デッキの時計が数分くるってしまっていれば、番組の頭が切れたり、お尻が切れたり…というトラブルも起きてしまう。

こうしたことが起きないように、機器の時間合わせをどのように設定するか?一部のメーカーは、NHK教育テレビの時報を使った。正午の時報にあわせて、「ポッ、ポッ、ポッ、ポーーンーーー」というあの時報。この時刻あたりになると、自動的にNHK教育にチャンネルを合わせ、その時報を基に、デッキ自身の時計を調節する。これによりデッキの時計はほぼ正確にあわされ、それによってデッキの時計が狂うことによる番組の取り損ないはなくなった。

でもいまはそんなやり方はたぶんしていない。そして多分できない。

それはそもそもテレビで「正確な時報」を流せないから。

アナログ時代…それは放送局からの電波を直接受像していた、光の速さでの時代。だからこそ時報が放送で来た。しかし今はデジタル放送時代。デジタルになるとなにか余計に速くなりそう…にも思うかもしれないが、デジタル放送になって、「放送は遅れ」て届くことになった。だから皆さんご存知の通り、ニュース番組など、何となく始まる。正確に「今19時ちょうどです!」と表示できないのがデジタル。光の速さでデータは届いても、それを「そのテレビが、音と映像に組み替えてテレビ画面に映し出す」のに若干の時間がかかるので、正確さを欠くからだ。

家電量販店で、各メーカーのテレビが並んで同じ放送局の番組を映しているときに見比べてみればいい。たぶん何台かのテレビは、若干遅れて映像を映している。(最近はそれを嫌ってか、放送を流すのではなく、録画コンテンツを表示するメーカーも少なくないようだが。)

そう、デジタルが早いと勘違いしがちだが、デジタルだと遅いのですよ。

だからどうよ…という話ではないのですがね。