トランプが大統領になって良かったこと

トランプが大統領になって良かったことがあるとすれば、それはもしヒラリーが大統領になっていたら可視化されなかったであろう差別的意識を持つ人、あるいはそれを支持したり、許容したりする人がとても多い、ということがはっきりしたことだと思う。

今、アメリカでは多くの反トランプの人々が声を上げているけど(Women’s Marchなど)、もしヒラリーが大統領になっても同様に、反ヒラリーの人々がそうした行動を起こしたかといえば、あまりそういう想像はできない。部分的に、TPPは駄目だとか、具体的な政策について反対の声を上げることはあっても、オバマやヒラリーが掲げるような、あの優等生的な理念全般に対して、大勢で反対の声を上げることは難しい。

よって、もしヒラリーが当選していたら、現在トランプ支持者として存在する人々の多くは、今なお可視化されずにいたはずである。そしてその存在の大きさに気づかないまま、さらなる分断が進んでいった可能性がある。

それに比べたら、良くも悪くも、オバマやヒラリーが示したような、優等生的な価値観とは異なる感覚を持った人々が露わになった現状には良い面がある。分断はすでに可視化され、ようやくというか、取り組むべき課題が設定されたのである。

個人的に恐れているのは、新たな世界大戦の到来である。かつて第二次世界大戦を当事者として過ごした人々は政治の表舞台から去り、現在そこにいる人間は、それをやったらどんな目に遭うのか実感的には知らないから、頭では理解しているつもりでも最後のストッパーがかからない可能性がある。痛い目に遭っていないから、結果を軽んじてその行為に及ぶ可能性がある。

しかし一方で、過去にそうした強烈に愚かな戦争をしてきた事実が消えるわけでもないのだから、20世紀の二つの大戦が起きたときに比べれば、知見は溜まっているとも言える。一時的には、国粋主義的な価値観が息を吹き返すとしても、それは新たな、そしてより堅牢な「自由な社会」が生まれるための過程だったのだと思える未来を作りたい。