液状化する現代社会の対立軸はソリッドvsリキッド?

小池百合子後の対立軸

保守政党の自民党がリベラル経済政策を取り込み、今回の都知事選において9条+脱原発という「和製リベラル」の終焉を見た今、次の対立軸は何になるのでしょうか。
例えばエリートVS中間層という軸は、いかにもな対立軸です。確かにブレグジットや米大統領選、パナマ文書の問題などを見ると、エリート層への不信という側面はあるかも知れません。しかし、トランプもまたエリートと言えなくもないですし、ブレグジット支持者には相当数のエリートがいます。

私は今回の小池百合子氏を見ていて、これからの時代の対立軸はそうではないと考えるようになりました。

「ソリッド(安定志向)」vs「リキッド(自由志向)」

正直にいって、ネーミングをどうすべきなのか自分でもわかりませんが、とりあえずで付けました。ソリッドvsリキッドというのは、ジグムント・バウマンの「ソリッドソサエティ」をイメージしていて、社会の「液状化」を示唆しているつもりですが、この枠組では捉えきれないような気もします。

ソリッドとは固体のことで、個々の原子同士が強く結びつき、秩序をもって固定化したものです。リキッドとは液体のことで、原子同士は分子として強固な小集団を形成したり、イオンとなったり様々ですが、全体として緩やかな結びつきを持っており、ガスの様に完全に自由に飛び回っている状態とは違います。バウマンは、現代社会をソリッドからリキッドへの相転移(液状化)と捉えました(参考:ジグムント・バウマン「リキッド・モダニティ- 液状化する社会-」

【ソリッド(安定志向)層】

既得権層および既得権層に依存する層。徐々に縮小しつつあるが、根強い影響力を持ち、守りに入り必死になるとかなり強力に団結し、境界の線引きに敏感になる。ピーター・タスカが1997年に言った「再分配同盟」(参考:極東ブログ「再配分連盟」と「合理的な無関心」、ピーター・タスカ「不機嫌な時代 JAPAN2020」

特徴

  • 安定の為に自由を犠牲にする
  • 個人レベルでは常にリスク回避
  • 出来るだけ大きな組織に所属したいと思う
  • 福利厚生、厚生年金、健康保険を重視する
  • 社会や組織にとって重大な問題はどこかのだれかである「お上」がきっとちゃんと考えて決めてくれている(べき)と思っている
  • できるだけお金を稼いでレジャーにつぎ込む
  • 肩書き、ラベル、記号に拘る

リキッド(自由志向)層

非既得権層あるいはプレカリアート(不安定労働者階級)。徐々に増えてはいるが、まだ十分な勢力とは言えない。従来、労働者階級(プロレタリアート)や貧困層や非正規などと言われた層と被るところも大きいが、必ずしも労使関係や収入では決まらない。自立したフリーランスや、個人で大金を稼ぐお金持ちも含む。

特徴

  • 自由の為には多少の安定は犠牲にする
  • 個人レベルでも時にリスクを取る
  • 組織への依存度が低く出世に無関心
  • 福利厚生、厚生年金、健康保険を重視しない
  • 嫌いな人に合わせず媚びを売らないが、横のネットワークを大切にする
  • 大事な問題も常に自分で考え判断する
  • 少ないお金でも人生を楽しめる
  • 肩書き、ラベル、記号に拘らない

かななんて思っています。
これは、エリートVS中間層や、いわゆる99%対1%の戦いとは違います。後者の層には個人で稼ぎまくっている人も入りますし、そもそも日本の大企業のトップや政治家のトップはそんなに稼いでいません(笑)。今回小池百合子氏が勝ったのも、同情や劇場型というよりも、実は会社から飛び出したい人たちが、小池氏が自民党という大組織から飛び降りたというところに共感を得た部分があるのではないでしょうか。

厚生年金が軸?

より具体的な政策としては、厚生年金の受給資格の25年というラインが一つの争点になり得ないかなと思っています。日本の労働流動性を硬直化しているのは、解雇のしづらさと共にこれがあるような気がします。仮に25年が5年でもそれほど不利ではないとなれば、辞めたいと思う人もかなり出てくるのではないでしょうか。まだこの辺りはちゃんと詰め切れていませんが。

「ポスト石油時代」の政治

ポスト工業化とAI化が進むこれからの時代を、私は「ポスト石油時代」と呼んでいます。なぜ石油かというと、内燃機関自動車産業による雇用と移動手段の個人所有が大きな意味を持っていた時代が終わりつつあり、その両者は安くて安定的な石油供給と人の手による生産が前提で、いまその前提が二重に崩れつつあるからです。組織力や組織人としての生き方の社会的意義は相対的に低下し、スマホやパソコンという新たな生産手段を得た人々が毎日同じ距離を移動しなくても働くことができるようになったことで、大組織の意思決定の遅さや無謬性に対抗してリスクを取ってイノベーションを起こすことのできる競争力を益々発揮しやすい時代となっています。

内政問題と外交問題

一方、国政にとって本来的に外交政策は極めて重要ですが、今後の世界は内向き化が進み、民主主義国家において外交政策は必ずしも最重要な争点にはならないかなと思います。しかし、今の世界情勢は直接の影響は見えづらくとも、今後は世界の動乱が大きなファクターになりえます。

液状化社会のリスク

これは時代の流れであり、計画的な安定が得にくい、秩序が保障されない、路頭に迷う人が多く出てくる、ポピュリズムに陥りがち、などのマイナス面もあり、必ずしも全ての人にとってウェルカムな流れとは限りませんし。変化に伴う痛みを新たにどうやって社会が扱うか、今後重要になる外交政策をどう扱うか、新たな秩序を考えなければなりません。

(NewsPicks配信記事「【新】エリートvs.中間層。新たな闘争が始まった」へのコメントから一部改編)

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