働きアリと怠けアリの新解明

16日、北海道大などの研究チームが、アリたちの生活に新事実を発見した旨を発表した。

およそ3年ほど前の研究論文で、まったく働かないアリがいることを発表していた。今回は働かないアリは怠けているわけではなく、他の仲間が疲れたり、休んだりすると、彼らが働き出すという衝撃の(!!)事実を発見した。

「アリだってサボる奴がいるんだから」と、仲間意識を持っていた人には悲報である。彼らはワークシェアしていただけであった。怠けているというより、休んでいるだけだったのだ。


ところで注目すべきは、コロニーの中で2、3割が働かない(待機中)のアリであるということだ。

よく、人間社会はアリと似ていると言われる。人間社会では、会社に入ると、ほぼ人員の100パーセントを稼働させようとするし、日本では未だ「休むと他の人に仕事の負担がかかる」という気風が強い。そして休む人との間に、「不公平感」を感じる人が発生する。

規定に沿って休みを取っても、だ。

有給に関しては「休んで働かない人」にも給料が発生する。休んでいる分、給料が発生しないことにするれば、誰も文句は言わない。しかしそんなことになれば、休みたいだけ人々は休み始めて、最低限の出勤でいいやという人が現れ、常に存続している会社の仕事がまわらなくなるかもしれない。

2、3割休んでいて、日常の業務がまわる会社は、なかなかないような気がする。このあたりは、何か統計を調べてみなければ断言できないが。

いくら法律を整備しても、現在の空気感の中で、休みを取るのは困難である。会社によって違うとは思うが、転職回数がわりと多い自分の経験上、「休みにくい場所が多数派である」という結論に至っている。


たとえ休んでいる人間に給料が発生したとしても、「適宜休んで良い職場」の人件費は、長期的に見れば安くあがるのではないだろうか。彼らは十分な休養を取れる安心感から、その場所に満足して居続けることができる。長い間同じ職をこなしていれば、様々な業務は円滑にまわるし、そうなると少ない人員で、意外と仕事がスムーズに済ませることができるようになる。人を雇い直す回数も減る。

とはいえ、大多数の人が、今の日常を当たり前のように思い、仕事を休むと他の人に迷惑がかかると思っている。

また、そのようなことを実際に公言して、「仕事のできない奴のせいで、誰それがいつも残業になるんだ!その残業代が浮けばみんな楽になるんだ」などと、よくわからない論法で仕事がまわらないのを従業員のせいにしたりする。


これは実際自分が所属した会社での出来事である。このようなことを言うから、みんな嫌になって他に移ってしまうのである。結果、人がいなくなって、物理的にも不可能な仕事量が従業員にまわっているのである。結局外注し始めて、会社の中は空っぽになっているから、そのうち潰れるのだろう。

かわいそうに、仕事が出来る奴と認定された「誰それ」の顔色は常に悪かった。当たり前である。連日12時、ひどい時は1時まで残っている。若いから体がもっているようなもので、そのうち体と心を壊すだろう。

実際、心を壊してしまった人もいた。彼は出勤してくるが、話しかけても返答はなかった。マスクをしていたので、表情はわからない。いちおう話しかけた自分のほうを見ていたので、何か聞き取っていたのかもしれない。実は彼の代わりとして雇われた自分であった。しかし引き継ぎが出来る状況ではなく、大変苦戦した。


その他、強者としては、デスクに座りながら睡眠をとる技を習得している者もあった。彼は仕事をしているふうだが、横から見ると、いつも寝ている。器用に、ピクリとも動かずに寝ている。うたた寝どころではない。声をかけても起きないので、二度、三度、耳元で大きく声を出さなくてはならない。

入社してほどなく、自分は抗議した。怠け者の代表として、何かひとつくらい、仲間たちの役に立たなくてはならない。

「このようなやり方では、そのうち会社に誰もいなくなります」

次の日は大騒ぎである。反逆者が現れたということで、朝礼では注意が促され、「我々の指針を崩そうとしている者がいる」とか何とか言って、社内報を作り出した。変な部屋に押し込められて、1時間近く説教をされた。

社内報を見る前に自分は辞めてしまったので内容はわからない。


働かないアリの中には、本当にまったく働かないアリもいるのかもしれない。そのようなアリはたぶん「うんざりしすぎた」アリである。

次の論文の発表では「うんざりアリ」が発見されるのではないかと報告を期待している。