5.3 「デジタル」のない10年後の世界に託すもの

オホーツク島
3 min readFeb 5, 2017

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2.1で提起した「デジタルレジデント」について、筆者はこの「デジタルレジデント」は1990年前後生まれの世代に特に強い傾向であると考えている。更に後の世代、およそ1995年以降生まれの世代以降は、遅くとも小学校低学年や幼稚園、物心ついてからインターネットが身近に当たり前に存在していた世代となる。そうした世代にとってはもはやインターネットがない世界は過去にも存在せず、「デジタルネイティブ」の「デジタル」というような言葉を使うことさえナンセンスになるだろう。

またこの数年の傾向として、インターネットが細分化し、どんどん閉鎖的になっていく傾向が見られる。2015〜2016年のSnapchat(注:1日以内に消える写真・動画を、フォロワー全体、あるいは特定の人に向けて送り合うことのできるスマートフォンアプリ。2014年〜2016年にかけてアメリカで10代を中心に爆発的に普及した)の流行に見られるように、「つながらないSNS」に向かっている傾向が見られる。筆者が2015年に大垣駅前で出会った高校生は「グループLINEで出会った他校の子と仲良くなったりする」「今日はその人に誘われて来た」と言っていた(※)が、Twitterやfacebookのようなオープンな環境での交流よりも、LINEや各SNSのダイレクトメッセージ、非公開アカウントなどを通したクローズドなコミュニケーションのほうを重視している状況が見受けられる。これはブログやmixiなどの時代から、オープンな環境でのコミュニケーションが当たり前であり、それによって新たな出会いが生まれる、といったインターネット上の環境の恩恵を受けてきた我々1990年前後生まれの行動とは明らかに異なるものである。

そうしたことを踏まえて考えると、本研究の活動は、1990年前後生まれが20代後半に差し掛かり、様々な意味で実力や影響力を備えはじめてきた2017年現在からしばらく、そしてこの世代の一部のみにとっては長期に渡って有効であると考えられるが、更にその後の世代が台頭する5年〜10年後には、世の中においては既に時代遅れの活動になっている可能性も十分に考えられる。その場合は、その時代に存在するメディア環境で、その時代に最も適したやり方で、活動を行っていくことが求められるだろう。その際に、その少し前の世代はこのような時代背景で、このような考えに基いて取り組みを行っていた、という点で、この論文が少しでも参考になればと思う。

※ 大垣駅前では月に一回「大垣サイファー」(サイファー:街頭などで多数が円になり相互にフリースタイルラップを行う集い)が行われており、大垣周辺のフリースタイルラッパーやその友人たちが集い、地域の若者たちの集会所となっている。大垣サイファー主宰者である裂固(れっこ)は、2016年の第9回高校生ラップ選手権で優勝を果たし、昨今のフリースタイル人気と相まって人気急上昇中であり、大垣サイファーは大賑わいを見せているという。筆者は2015年にIAMASの先輩とともに閑散とした大垣サイファーに一度だけ参加している。 http://kai-you.net/article/27604

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