ブロックチェーンの意思とは何か?

Senshi M. Onions
Aug 30, 2019 · 7 min read

この問いに答えるためには、ブロックチェーンの仕組みだけに注目して、分散台帳技術などといったように捉えているだけでは足りない。ブロックチェーンが我々の社会においてどのように位置づけられ、その役割を果たすのかといった観点から、もう一度、ブロックチェーンとは何かについて定義を試みることで、その意思とはどのようなものかが見えてくる。

ブロックチェーンには意思があって、秩序を乱すことなく伸びてゆく
ブロックチェーンには意思があって、秩序を乱すことなく伸びてゆく
Photo by Jose Magana on Unsplash

今年6月にバルセロナで世界中の開発者が集まったIPFS Campで大勢で食事していた時、「ブロックチェーンを作ることは国を作るようなもんだよね」と誰かがボソッと言った。僕は周囲の反応に驚いた。誰一人として疑問を呈することなく、笑みを浮かべながらそうだよなと頷いていたからだ。たったその一言で、出会ったばかりのエンジニア達は「お前もそう思ってたのか」と仲良くなり、ラポールを形成していった。世界のエンジニア達の間ではそれはすでに共通認識なんだなと感じた。

昨年のWeb3 SummitのJuan Benetによるスピーチでも、サイバースペース独立宣言に触れ、インターネットが法域を得つつあるという話があった。「ブロックチェーンが何をするかというと、経済学や法律などを体系化し、ソフトウェアが金融や、法体制を飲み込んでいく」との指摘は、あまり広く認知されていないかもしれない。しかしこうした事は実際にスマートコントラクトを書いて、それがブロックチェーン上で自律的に執行されるのを見ることで、より実感が湧くだろう。

ここで思い切って、ブロックチェーンとはデジタル国家として機能しうるものと再定義してみてはどうか。先に断っておくと、ブロックチェーンが新しい国を作って、好き放題に権利を書き換えて国際社会の秩序までも破壊してしまうという事では決してない。また、これは違った角度からブロックチェーンを捉え、国際社会における位置づけを考えるためのフレームワークの提案であって、絶対的な定義ではない。

さて、ブロックチェーンが国家というならば、その意思とは何なのかという疑問に答えなくてはならない。それらを明確にするためには、西部邁氏の「主権とは何か」を聞いてもらうのが一番だと思う。国家とは何か、日本人としてどうすべきかを激励する素晴らしい演説である。大胆な試みとして、「国家」を「ブロックチェーン」と置き換えて読んでみたなら、あながち的外れとも言えないと感じられるのではないだろうか。

各国の歴史も伝統も、国益も違う中で多くの国が集まって国益の調整法としてやっと作った、そういうものが国際的な慣習であり法律でありますから抽象的なり一般的なりに書かれざるを得ない。ということはそれをある具体的な状況の中で具体的にどう解釈し具体的にどう適用するかという最後の決断の段階になった時には、これは各国家の権限に任されざるを得ない、という意味ならば 国家主権というものは極めて大事なんだと、そういうふうに二重構造として考えなければならないんですね。

我々は国際社会に制限されざるを得ないだろう。だがその制限が何であるかということを具体状況の中で具体的に決断するためには国家の意思、強固な意思というものが、 情熱というものが、あるいは強い認識というものが必要なんだと。これは国家主権のいわば全貌なんですね。

今年のWeb3 Summitでは、プライバシーなど個人の権利を取り返そうといった機運の高まりを感じた。Web2.0の反省つまり、個人のデータを集めて強い力を得ている政府や企業が信用できなくなったとしても、個人は自己の情報をもはやコントロールできないアンフェアな世界にしてしまったという開発者たちの反省が根底にある。

もしかしたら日本の中ではこうした強者からの権利の侵害に対して、いまいちピンとこない人も多いかもしれない。しかしそれは、西部氏に言わせると「本気で目を見開いて世界を見ようとしない」というお叱りをうけそうなものである。世界では今、これまでのWebに対して怒りを感じている人がとても多いという点は常に認識しておきたい。

Web3.0の世界における、ブロックチェーンの意思とは、エンジニア達によってプロトコルとして刻まれた人類の智慧と意思。歴史を振り返ると、こうした行為は今に始まったことではない。紀元前196年にはロゼッタ・ストーンに勅令が刻まれ神殿に収められていた。現代版のそれは先のJuan Benetの言葉を借りれば、できるだけ人間の能力を最大限に引き出せるようにし、慎重に権利に関して注意を払い、人類の長期的な繁栄を促進するようにすること。こうして国際社会と折り合いをつけながら新しい主権を持った法域において、デジタル国家が誕生する。

すると我々はいくつも自分に合ったデジタル国家のデジタル通貨を使いわけられるようになり、ビジネスマンならば国に法人を登記するかの如く、ブロックチェーンにスマートコントラクトをデプロイしてアプリケーションを作って経済活動を行うことができるようになる。その中でより良いビジネスモデル・エコシステムのデザインや、ガバナンスはどうするべきかといった議論も起きてくる。ユーザーはお互いに相手を信用するコストを下げることができ、より安全にサービスを利用できるようになる。

ブロックチェーンそのものを作る人間は、世界の秩序を考えながら国家を設計できるほどの強い力を持つとともに責任を負っている事を自覚し、法律家になるような覚悟さえも要るのだと思う。実際にそういう人達が今のWeb3ムーブメントを牽引しているのだ。そうした覚悟は、今年のWeb3 SummitでGavin WoodがEdward Snowden氏に向けた質問の様子(詳細は別の機会)からも伝わってくるものだった。こうして平和に向けた人類としての意思を世に示し続け、秩序の乱れを懸念する人々を安心させてゆくことができれば、ブロックチェーンというとらえどころのない社会システムは、だんだんと広く一般に受け入れられるようになり、いずれは他国から過度な干渉を受ける必要のない、独立した国家のような地位を認められるようになってゆくのではないだろうか。


もし、ブロックチェーンやWeb3といったものに興味をもっていただけたら、ツイッターをフォローしていただけますと幸いです。今年10月に日本で開かれるDevcon前後で、Juan Benet率いるProtocol LabsIPFSコアデベロッパーを招いて、大阪・東京でわかりやすいワークショップを行う予定ですので、お気軽に遊びに来ていただいて交流の場にしたいと考えています。Meetupや勉強会の情報なども発信いたします。

また、そうした場でご自身のプロダクトを紹介してみたい方も募集しておりますので、お気軽にDMいただければと思います。

Senshi M. Onions

Written by

Software Developer / Financial Consultant / Contributor to Decentralized Web and IPFS

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