やってよかった中学受験

明日から息子の中学受験がはじまる。

やってみて初めてわかったのだが、有力校と呼ばれるところは2/1〜2/3に受験日が集中している。明日からいよいよ本番なわけなので「なぜこんな日(1/30)に書くんだ」と思われそうだが、もし受かってからこんなエントリを書いたら「どうせ成功したから言えるんでしょ」という話だし、落ちてしまったら書く気力が失せてしまいそうなので、受験の前日に書くことにした。

主旨は「中学受験、やってよかった」ということ。

受験までの道のり

はじまりはSAPIX

もとを正せば小4の頃、SPAIXに行き始めたのがきっかけだった。歩いて通える距離にSAPIXと早稲田アカデミーが両方あり、お姉ちゃんが早稲田アカデミーに行っていたので弟はSAPIX、という他愛もない理由だった。息子は小学校から付属高校までいける学校だったので、正直に言うと受験のことは全く考えていなかった。ただ、中学で受験してくる子と一緒に勉強をするためには、受験してくる子らと同じレベルでないといけない、という考えから「塾にでも行っておく?」くらいの気持ちだった。

最初は順調だった。塾に行くことそのものが楽しかったようだし、何より毎月クラス分けでクラスが入れ替わるという仕組みがお気にめしたようだった。「頑張れば上にいける」そんな、単純だが、けれどもしっかりした動機付けがうまくいっているようだった。朝起きればまずSAPIXのドリルをやっていたし、4年生だとクラスの人数も少ないのですぐ上に行けた。順風満帆といって良いスタートだった。

5年生でスランプに

ところが、5年生からスランプになる。理由は「マインクラフト」だ。PC版ではなく、iPad版なので正確に言えばMinecraft PEということになる。

とにかくこれにハマってしまったのだ。

(ちなみに、この時点では中学受験をするというつもりはなかった)

小学校の自由研究で「世界遺産を見る」という研究があったのだが、息子の希望で姫路城を見に行くことになった。この時、新幹線やら姫路城の待ち時間やらでだいぶ時間があるので、もともと英語学習のために使わせていたiPad miniにMinecraft PEをインストールしてあげたのだ。

が、これがいけなかった。

とにかく、寝ても覚めてもマインクラフト。

いつでも何かを作っていた。

世界を作れることがとても楽しいようで、いつも何かを作っていた。

彼の中に、もう一つの世界が生まれたのだ。

朝からマイクラ。

夜までマイクラ。

悪いことに、マイクラ友達もできたようだ。

泊まりでマイクラに励んでいた。

小5男子が泊まりでマイクラ。

このペースでマイクラをやっていると、当然勉強に割ける時間は少なくなる。

成績も落ち、クラスも落ちる。

これが精神的に応えたようだ。

そうなると、塾に行くことを嫌がるようになる。

5年生の終わりの頃は「もうSAPIXを辞めたい」が口癖になってきた。

ギアチェンジ

無理強いしても仕方ないので、「じゃあSAPIXはやめよう」という話になった。

辞めることを決めてからは、すっきりしたようだった。

6年生の5月いっぱい、という話を息子ともした。

マイクラ熱が冷めることはなかったが、逆にお尻が決まっていると頑張れるようで、瞬間的にちょっと頑張ったようだった。

ところが、

ここで火がついた。

頑張ったら、上がったのだ。

頑張ったら成績が上がる、クラスがあがる。そんな愉しさを思い出したようだった。

そこから先に進むには、それほど時間はかからなかった。

自分から

「受験する」

と言い出した。

正直、「え?マジで? SAPIXやめるんじゃないの?」と思った。

が、誰かに火がついたら「消すよりももっと燃やす」ことが性分の私は、

「そうか、それなら応援する!」と伝えて、一緒に中学受験をすることになった。

他の人よりも随分遅い、2016年5月の決断だった。

なにがよかったのか

それからもいろんなことがあったが、スタートが遅かったこともあってあっという間に明日本番というところまで来た。夏休みは1日8時間とかの夏期講習だし、秋からは日曜日に1日9時間の特訓が待ち構えている。それでも、息子は楽しんで行っていた。自分で決めた目標に、着々と近づいている実感が持てたのだと思う。

いま「中学受験の何が良かったのか」と聞かれたら、以下の3つだと答える。

  1. 親と子供とで、普段避けている本質的な「問い」に向き合えた
    なぜ「学ぶ」のか。なぜ「死ぬ」ことがわかっているのに学び、苦しみ、もがくのか。子供からこんな問いをかけられたとき、「そんなことは考えなくていい」と答えるのか、親として真剣に向き合うのかは、子供の将来に大きな影響を与える気がしてならない。
    実際、そのような問いを息子はしてきた。
    普段、私たちはそういう問いを「考えてもムダ」と割り切ってフタをしてしまうが、1日に10時間以上勉強している少年には、いろいろな悩みが生まれるものだ。
    そういう「問い」に真正面から向かいあう機会が生まれたことは、本当に貴重な体験だった。子供の「問い」を通して、自分が成長できたのではないかと思う。
    (ちなみに息子に「なぜ学ぶのか」「生きる目的とは何なのか」と問われた時に、福沢諭吉の言葉がとても役にたった。曰く「人間が世に居て務むべきの仕事は、斯かく簡易なるものにあらず、随分数多くして入り込みたるものなり。(中略)子供を養育して一人前の男女となし、二代目の世の中にては、その子の父母となるに差支さしつかえなきように仕込むことなり。」つまり、人間の究極の目的とは「子供を立派な親にすることなんだよ」という様な話をした。この辺りの解釈については齋藤孝の「学問のすすめ 現代語訳」をおすすめしたい)
  2. 一緒に同じ目標に向かって進む時間を共有できた
    よく「中学受験は親子最後のプロジェクト」と言われる。これは本当にそうだと思う。中学になれば、もう大概のことは親抜きで進められるし、子供もそれを願っている。だが、小学校だとまだまだいろいろなサポートが必要だ。反抗期の手前でもあるので、ちゃんと親の言うことに素直に耳を傾けてくれる。そんな最高の時期に、一緒に高いハードルにチャレンジすることは、ただ漫然と親子の時間を過ごすよりもずっと意味のあることだと思う。
  3. 受験を通じて精神的にとても逞しくなった
    最初はいろいろな泣き言を言っていたが、最後の頃には「大丈夫だ。俺は受かる!それだけのことはやってきた」と自信を持って言えるようになってきた。
    努力が自信につながるという、おそらく初めての体験だったのではないかと思う。
    結果はどうあれ、「自信は努力によって培われる」ことを体験した以上、次に何かチャレンジすべき課題が出てきたときにも「正しい努力で乗り越える」道を選んでくれるのではないかと思う。
    精神的な成長を感じ取れたことは、親としても本当に嬉しい。

工夫したこと

最後は息子が「自分でやる」と言い出したことだが、それでもまだまだ小学生。
途中で道も踏み外しそうになるし、Minecraftの誘惑にも勝てそうにない(マイクラ恐るべし・・)。親としてサポートできることはサポートしたいので、いくつか工夫したことを並べてみたい。

  • 「勉強しなさい」と言わない
    これは奥さんとよく話し合って決めた。親は「サポート役」に徹するためにも、絶対に「勉強しなさい」とは言わないことにした。ちゃんと自分で計画を立ててもらって「そろそろ予定の時間じゃない?」とか「集中できないなら運動したら?」などの問いかけはしたが、「やりなさい」とは絶対に言わなかった。「やりなさい」と1回でも口にした瞬間から、親は彼のサポーターではなくなってしまう。そんな思いから「やりなさい」を禁句としてサポートに徹した。これは、息子のモチベーションを維持するという意味でとても良かったように思う。
  • iPadの工夫
    そうはいってもまだ小学生。ゲームで遊びたい盛りである。私自身も中学受験を経験したが、その時も同じようにゲーム(Xanadu)に夢中だったように記憶している。そんな実体験から、ゲームを無理やり取り上げるのではなく、ちゃんと節度を持って、時間をコントロールして、息抜きやリフレッシュにやるのであれば容認しようと思い、いくつかの工夫をして使わせることにした
iフィルター
説明不要なWebのフィルタリングソフト。iOSの機能制限でSafariはオフにして、iフィルター経由でのみWebのアクセスを許可する。
Kidslox
iOSの使いすぎを防ぎ、親の端末からコントロールできるアプリ(月額制)。これは非常に有効だった。「1日1時間まで」のように時間を決めて、その範囲で遊ぶことができる。時間をすぎると強制的にロックダウンモードになり、ほとんど何もできなくなってしまう。親のスマホから、リモートでロックしたり解除したりということもできる。すべての受験生におすすめしたい。
パスコードロック
放っておくと朝から遊んでしまうので、奥さんが考え出したワザがこれ。
「パスコードロックを、その日の朝にやる算数ドリルの答えの和の下4桁にする」というもの。夜寝る前にパスコードをセットしておけば、子供が先に起きても、ドリルを終わらせないとiPadを解除できない、という仕組み。これも朝の勉強習慣を作る上でとても有効だった。
  • だんぼっち
    我が家は、それぞれ個人の部屋がとても狭く、その代わり少し広めのリビングで勉強するというスタイルだが、受験勉強の様に極端に集中力を求められるケースではあまりよくなかったようだ。息子も気が散ってしまうケースが多かったので、「だんぼっち」というダンボールでできた小さな部屋を購入した。
    「だんぼっちに入ったら勉強する」というクセができたようで、これもとても良かった。
  • 風邪予防
    ここまできたら後は体調管理。子供だけでなく親も万全の体制で臨んだ。この冬に導入して特に良かったと思われるものが2つ。
ペーパータオル
どうしても家だと家族共用タオルになってしまうが、風邪・ノロ予防の観点からペーパータオルにした。これはリスク回避の点でよかった。
ハナノア(鼻うがい)
広告の写真が非常に印象的で話題になっている小林製薬の「ハナノア」
これが非常に良い。すぐになくなってしまうので、アマゾンで箱買いした。
外出した際は、帰ってきてから必ずハナノアをしている。
毎年この時期は家族全員で鼻をグズグズいわせていたが、毎日ハナノアをすることで一切なくなった。
あの広告の写真。あれホントです。

結果的に良かったこと

  • 息子は小さいときから本をよく読んでいたのだが、これはやっぱり良かった。国語は本当に苦労しなくても毎回良い点が取れるが、これはやっぱり読書量と比例しているように思う。ドラゴン桜でも「国語は大事」といっていた気がする(曖昧)。
  • SAPIXすごい。本当にすごい。なんというか、「分かってる」感が半端ない。いつプレッシャーをかけるべきなのか、いつ何をやらせると伸びるのか、どうやってモチベーションを維持させるのか、タイミングとかやり方とかテキストとか、全てが完成されている。SAPIX自体、最初は数名の優秀な先生が立ち上げたと聞いているが、その先生のやり方をうまくシステム化してスケールするようにしている点は、ビジネスマンが見ても驚嘆すべきものだと思う。

まとめ

息子の受験は終わっていない。

殆どの大人がそう思っているように、中学受験で人生は決まらないので、長い人生を考えれば大袈裟に一喜一憂する話でもない。

もちろん、ここまで頑張ってきた以上受かってほしいとは思うのが親心だが、仮に落ちたとしても、ここまでの道程で得るものはとても大きかったし、挫折を乗り越えて成長するだけのたくましさは身につけられたように思う。どちらに転んでも得るものが大きいのであれば「やってみる」のがよいように思う。

一本道ではなかったが、息子が自分で「やってみたい」と言い出したことを奥さんと二人でサポートできたことを誇りに思うし、何より家族の絆が深まったことが一番の収穫だ。先に中学生になった娘も(高校まではエスカレーターで行けるのだが)外部の高校を受験してみたいと言い出した。頑張ろうと思う気持ちが芽生えたことは素直に喜びたい。

もちろん、経済的な要因や家族の仕事の関係で、みんなが我が家と同じようにできるとは思わない。だが、できるだけ良い教育を受けさせることは子供の可能性を広げるという観点で親の責任だと思うし、こうしたイベントを通じて親自身が得られることが大きかったことは、もっと多くの人に知ってもらいたくてこんなポエムを書いた。可能性があるのであれば多くの人に勧めたい。

息子よ、がんばれ!!

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