エマオからの道(林 知子さん)

神戸YMCAチャペルに据えられたステンドグラス。

とても感動したので写真と一緒にご本人の文章を紹介いたします。

エマオへの道ではなく、エマオからの道。そこに意味があります。

「道で話しておられるとき、また聖書を説明してくださったとき、わたしたちの心は燃えていたではないか」(ルカ24:32) エルサレムからエマオヘの道のりは、弟子たちにとって絶望の道だった。

そしてこれは絶望が希望に変わる物語である。弟子たちは、自分たちを救っ てくれるメシアは決して死なないと思っていた。神の国をもたらす方であっ たし、自分たちはそのメシアであるイエスに「選ばれた」者たちであるはず だった。イエスが生きている間に神の国は出来、自分は他の人たちよりも上の 位につけるとすら思っていた。なのに、イエスは本当にただの人として十字架 の上でいとも簡単に死んでしまった。

これまで何度もイエス自身から復活について聞いてはいたものの、イエスの 遺体がなくなった今、彼らには目の前の男が復活したイエスだとはわからない。 その後、弟子たちは、イエスのそれまでの言葉による説明ではなく、賛美の 祈りとパンを裂くという「行為」によって気付かされ、目が開かれる。最後の晩餐は、理屈でなく体験的な「感覚として」細胞が覚えていたのである。

彼らはイエスが生きている間、話を一番近くで聞き、理解しわかったつもりでいた。しかし本当の意味においては分かっていなかった。分かってはいな かったが、でも心は確かにその一部を捉えて感じていたのだ。心が捉えるキラ キラするものは、無意識のうちに時と共に蓄積される。その輝きは、いつか時 が満ちた時、何かをきっかけに全ての点は線となり、歩むべき道となる。時間を一瞬で遡り、絶望も含めた全てに意味が与えられ、脈に落ちる時が来る。 弟子達はイエスの十字架を体験し、エマオまでの道を絶望しながら歩いた。

しかし今、引き返すエマオ「からの」道のりは、キラキラと輝いている。 そこにイエスはいないが、それこそがまさに弟子たちの中で起こった、イエスの 復活であった。

林知子さん 兵庫県生まれ。関西学院大学神学部博士前期課程修了。大学在学中に三浦啓子氏に 師事。分厚いガラスをハンマーで砕き固めるステンドグラス製作を始める。 代表作、「ヤコブの梯子」「木漏れ日」(大阪暁明館病院)、「律」及び、「動物シリーズ」(東武鉄道曳舟駅ビル)、「X||+|」(関西学院大学神学部チャペル)など、その他多数作品。

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