ロボットとM-1に出場してわかった3つのこと

世界初の人型ロボット漫才の様子

2015年 12月6日に決勝が行われ、トレンディエンジェルの優勝で幕を閉じたM-1グランプリ 2015。そのM-1グランプリ 2015に、史上初めてロボット(ペッパー)が出場し、勝ち上がっていたことをご存知ですか?

M-1公式サイトでのペッパーズの紹介ページ(ペッパーの肩書きが東京都出身のフリーターになっちゃってる・・・笑)

今回はペッパーとM-1に出場してみて分かったこと3つを書きたいと思います。
・ペッパーに”漫才”をさせるのは、一筋縄ではいかなかった
・漫才のネタ作りにもロジカルシンキングは役に立った
・人間とペッパーの漫才も自然と受け入れられ、笑いも頂けた

まずは実際のネタ動画からご覧ください!

その1:ペッパーに”漫才”をさせるのは、一筋縄ではいかなかった

M-1出場に向けて、いざペッパーと漫才を始めてみたはいいものの、いくつも関門が立ちはだかりました。

関門1:ペッパーの確保が難しい

上述した通り、ソフトバンクが発売しているヒト型ロボット、ペッパーと漫才をしようとしていたのですが、まず課題としてぶつかったのが、ペッパーの調達でした。

ペッパーは、一般利用者向けに発売されてまだ半年程度、価格は総額100万円を超える高価なものです。どうやって練習をしようか悩んでいたのですが、調べてみるとソフトバンクが、無料でペッパーの貸し出しをしてくれるスペース「アトリエ秋葉原」という場所がありました。

(参考)アトリエ秋葉原のHP

http://pepper-atelier-akihabara.jp/%e5%96%b6%e6%a5%ad%e6%a1%88%e5%86%85

アトリエ秋葉原では事前に予約をすればペッパーをアトリエ内で借りることが出来る上に、操作について教えてくれるワークショップも実施されています。ここで、ペッパーを借りるだけでなく、操作も教わることが出来ました。

(常駐のスタッフの方が何人かいらっしゃるので、ペッパーについて分からないことを色々質問することが可能です!皆さんとても親切な方ばかりで初歩的な質問にも親身に答えてくれました。)

アトリエ秋葉原の様子。ちなみにこのちなみにこのスペースは、元々中学校だった場所を改良したものです。中学校の教室に、ペッパーが30台そろっている光景はなかなか異様な感じです笑

=>解決策:ペッパーを借りることが出来る、アトリエ秋葉原を利用

関門2:ペッパーを”芸人”にするのが難しい

アトリエ秋葉原にて操作方法を学び、動かしてみましたが、そこでもまた壁にぶつかりました。ペッパー君の演技にすごい違和感があるのです。

以下の動画が、最初に撮影した約20秒の動画です。

人間とロボットで行う“漫才”と言うよりも、芸人がペッパーを”小道具”として使って行っているコントみたいな感じになってしまっています。ペッパーが”芸人”になれていないのです。今回はM-1という漫才の大会なので、お客さんに漫才と感じてもらうことを最優先にしました。

そこで工夫したのは、ペッパーのジェスチャーです。
・ペッパーと私のアイコンタクトを頻繁に行う
・ペッパーが喋りながらお客様の方を見渡す動作を入れる
・私が話している際も、ペッパーが常時動いているようにする
・ペッパーが喋る時にうなずき動作を入れる(ペッパーは口が動かないので、いつ喋っていていつ喋っていないのかが、一見するとわかりづらいのですが、こうすることによって「今はペッパーが喋っているんですよ」ということが伝わりやすくなりました)

このように細かい動作を入れることで、ペッパーが自ら考えて話しているように見えるよう工夫しました。

=>解決策:細かいジェスチャーを入れることで、自発的に話しているように見せる工夫をした

関門3:ペッパーに間を取らせるのが難しい

動きが出来上がっても、まだ課題は残っていました。漫才における「間」の取り方がとても下手なのです。テープレコーダーのように決まったタイミングで、ペッパーに音声を再生させると、どうしても聞いていて不自然なものになってしまうのでした。

漫才における間の取り方はとても重要で繊細なものです。0.1秒程度ツッコミのタイミングが遅れただけでもとれる笑いの量は全然変わってしまいます。決まったタイミングで音声を再生させると必要な精度での間がとれませんし、ウケた場合にお客さんの笑いを待つ、いわゆる”笑い待ち”も出来ません。

そこで、友人に依頼し、舞台裏で操作してもらうことにしました。PC上に、ペッパーの動きを表すボックスが並べられ、それをクリックすることでペッパーが話す仕組みです。

ペッパーの動きを作るソフト「コレグラフ」のインターフェース

しかし、ただタイミングを合わせてクリックさせるだけでも足りませんでした。クリックをしてから実際にペッパーが動き始めるまでに微妙な遅延があり、さらにこの遅延の長さが、会場のネットワークの環境によって変化してしまうからです。通信速度が早ければペッパーは機敏に反応し、逆に遅ければ、ペッパーの反応は遅くなります。

これはひたすら練習するしかありません。どんな環境でも、ペッパーとの会話が自然なものにできるように、友人と何度も練習に励みました。

=>解決策:友人にペッパーの操作を依頼し、様々な環境に慣れた

上記は会場にペッパーを運び入れる際の様子。ペッパーは130cm、30kgあるので、運ぶだけでも一苦労でした。他の芸人さんからのナニコレ?感は、すごかったですw

その2:漫才のネタ作りにもロジカルシンキングは役に立つ

私は、ただロボットと漫才の大会に出場するだけではなく、面白い漫才を作ってちゃんと勝ち上がりたい!と考えていました。

普通のやり方では勝ち目がなさそうです。通常プロはM-1のネタを作るのに1年ほどかけており、毎日営業やライブ公園でお客さんの反応を見ながら日々ネタを洗練させています。一方で私は今年芸人を目指し始めたばかりで持ちネタもなく、ネタ見せの機会もそうそうありません。そして、大会までに残された時間はわずか20日でした。

よって、ネタ作りのプロセスをもう一度よく見直して、効率よく面白いネタを作る方法から考えました。そこでコンサルタントの友人にアドバイスをもらって考えたのがこちらのフローです。

上記のようなプロセスを作成し、実行することで、効率よく、漫才を作成しました。

その3:人間とペッパーの漫才も自然と受け入れられ、笑いもとれた

後は本番やるだけとなったのですが、一つ不安がありました。それは、「ペッパーと舞台に出ていった際に、本当にお客さんに受け入れられるのか?」というものです。

なんか変なやつが出てきた!と言って笑う人が多ければいいですが、全く興味を示さない人や、漫才をなめているといって怒り出す人がいるかもしれないと思っておりました。

しかし、1会戦の本番でペッパーと舞台へ出ていくと、結構明るい反応を示して頂き、少し「おお」のようなどよめきにも似たものが聞こえました。心配はどうやら杞憂だったようでした。見に来てくれていた友人からは、「かなりウケていたので、通ったのでは?」と言ってくれました。

そして、M-1の1回戦は、結果がその日に発表されるので、結果を待っていると・・・「1回戦最後の合格者は、2974番、ペッパーズです。」との発表が。

これが歴史上はじめて漫才の大会において、ロボットが勝利した瞬間であります。

また、発表後にはテレビに取材をいただき、後日ペッパー漫才が、テレビ朝日に「異色の漫才コンビ」として取り上げられました!

テレビ朝日「モーニングバード」の様子(出演者であった石原良純さんにも結構ウケてました笑)

こうして、ロボットとチャレンジした漫才で、1回戦を突破することが出来ました!二回戦では残念ながら敗退してしまいましたが、ロボットとして世界で初めて、人間のコメディアンの大会で勝利したという結果は作れたのではないだろうかと感じています。

M-1が終わった現在もペッパーズは活動を続けております。お声がけ頂ければ、イベントやパーティー、結婚式等どこにでも飛んで参りますので、興味のある方は是非Twitterにてご連絡下さい。

https://twitter.com/peppers_manzai

ということで、今後もいろいろと挑戦してみたいと思います!!

photo by ロボットスタート株式会社
http://robotstart.co.jp/