(前編) 創業4年で500億円を調達! AIを駆使する米国再販業の 『Opendoor』を調べてみた- USスタートアップの資金調達ニュース <2018年1月編>

前回は米国中古住宅系スタートアップ「5つの類型」と「収益モデル」について紹介しました。今回は5類型の中で、新興スタートアップが大型の資金調達をして、注目を浴びている「買取再販業」について解説したいと思います。業界理解をふまえて、最も注目を集めるAI x 中古住宅のOpendoorの急成長の秘密に次回は迫ってみたいと思います。

買取再販業とは

Opendoorについて話す前に、彼らのビジネスモデルである買取再販業についてサクッと確認したいと思います。

“買取後にリフォームで価値をプラスして、販売する再販ビジネス(カチタス社HPより抜粋)”

前回のブログで説明した通り、買取再販業とは中古物件を不動産会社が買取、リフォーム/リノベーションで価値を向上&再生させ販売するビジネスです。物件を安く購入し、リフォームを実施して付加価値をつけて、販売価格を設定して、販売価格から原価(物件仕入れやリフォーム費など)を差し引いた利鞘で儲けるビジネスです。

買取再販にも2種類あります。買取保証と即時買取です。

1. 買取保証：仲介会社が売却を担当する物件が一定の期間を経て、それでも売れなければ、仲介会社が買取保証を提供するサービスです。 売却期間を設定し、売れない場合は販売価格の70〜80%で買取る契約を締結します。
2. 即時買取：不動産会社が即時で買取るサービスです。日本の場合、売却 していることをご近所に知られたくない・内見対応が煩わしいという売主の不満も大きいですが、即時売却なら買取保証よりもスピーディーに現金化が可能です。

“買取保証と即時保証を提供する大京穴吹不動産”

そして、買取再販業は「物件を買い取るための物件を仕入れる」ことからビジネスが始まります。物件の仕入れ先には大きく5つあります。

1. 競売：住宅ローンの返済に困った物件所有者が、債権者が裁判所へ申し立て、担保提供された不動産を裁判所が強制的に売却します。
2. 任意売却：任売とも呼ばれ、住宅ローンの返済に困った物件所有者が、競売に掛けられる前に意思に基づいて融資先の銀行に相談して売却します。銀行指定の不動産会社が売却を担当します。
3. 物上げ業者/ブローカー：訳あり物件などを専門に扱っている業者
4. 仲介会社：不動産物件の売却を不動産会社に依頼し売却活動をしてもらいます。
5. 個人から直接仕入れ

“イーグランド社の物件の主な仕入れ先(イーグランド社会社説明資料より抜粋)”

既存の買取再販業者は上記の1〜4から仕入れることが多いのに対して、Opendoorは「5.個人から直接仕入れる」場合が多いのがユニークな点です。そこで、個人がOpendoorの様な業者へ売却する時のメリットを簡単にまとめておきたいと思います。

1. スピーディーな現金化により資金計画が立てやすい
   前述した即時買取/売却を選択すれば、早期に現金化でき、買い替えの場合は、資金繰り計画が立てやすいメリットがある
2. 瑕疵担保責任の免除
   通常、販売後も住宅に◯◯があった場合の責任は売主に発生する場合もありますが、瑕疵担保責任を買取再販業者が請け負ってくれます。
3. プライバシー担保や手間の削除
   買主向けの内覧が不要であったり、会社の仲間や近隣に知られることなく売却可能

また、デメリットも簡単にまとめてみます。

1. 市場の相場よりも買取価格が安くなる
   相場として不動産仲介会社に任せた際の70〜80%程度が買取価格の相場です。仲介会社であれば1億円が買取価格だったものを、買取再販業者であれば8,000万円になってしまうということです。即時現金化とのオフセット。
2. 買取では不利になりやすい物件条件がある
   新築、築浅、敷地分割ができない土地など、リノベに不向きな物件の場合は積極的に買取してもらえない、買取条件が好ましくない時がある。そもそも買取後にリノベして価値を向上させるモデルなので、リノベに不向きだと価値が上げられない、儲けられない物件は買わないということですね。

ここまでの説明で大まかに買取再販のビジネスについて理解できました。次回は、一般的な買取再販業者とOpendoorにどのような違いがあるのか？を中心にOpendoorの成長の背景に迫ってみたいと思います。

Fin