年間売上730億円、ぽっちゃり系ブランド 「Torrid」がわかる5つのポイント

一昨日、米国ぽっちゃり系ブランド大手「Torrid」が上場目論見書を提出したので、ポイントを5つにまとめてみました。

こちらのブログにある通り「米国でのリアル店舗の閉鎖数は過去20年で2017年が最大」とリアル店舗を運営する小売には厳しい冬の時代が続いています。アバクロも売りに出ていますね。。。そんな中、「上場する小売がこんな時代にあるんだ!」「Amazonのニュースに煽られて小売企業の時価総額が5%前後もする株式市場で(上場後に)初値つくのか! 」「投資家が上場しないといけない状況に追い込まれているのか!?」 クレイジーだぜ、この会社! と思ったのがS-1を読もうと思ったきっかけでした。

自らのことを「Industry-Leading Fastest-Growing Branded Omni-Channel Retailer」(業界トップランカーで最速で成長しているオムニチャネル)と最大級にアピールしていることも目にとまりました。S-1を読み進めると、「Data-Driven Customer Initiative」という単語を多用しており、顧客をデータ分析しながらオン/オフラインで購入させてLTVを高めてるオムニチャネル施策が奏功しているようです。

Size 10–30(平均Size 18)を着用し、働く25–40歳女性をターゲットにしているTorridのS-1を読みながら、面白かったポイントをまとめてみたいと思います。

1. 女性アパレル市場で最も成長しているカテゴリー = ぽっちゃり市場

日本でも「ラ・ファーファ」などぽっちゃり女子向けファッション雑誌が人気があるとメディアでみかけますが、日本の市場も伸びているのでしょうか。アメリカにおいては、ぽっちゃり女性向けアパレル市場は$21Bnと巨大で、女性アパレルの全体市場より2倍以上の速さで拡大する成長セグメントです。

“Torridの2015年春コレクションで、画像修正を一切加えずに話題になったTess Holidayの広告(一番右)”

USの女性の65%以上がSize 14(日本の15号)以上を着用しているのに対し、2016年のポッチャリ市場の売上が占める割合はたった17%。Torrid調べによると、女性向けアパレル30店舗の内、ポッチャリ女性向け店舗は1店舗だそうです。競合のほとんどは40歳以上をターゲットしているが、ポッチャリ系女性の50%は45歳未満とのこと。このことから、需要に対して供給が不足している”Underservedな市場”であることがわかります。

80%はベーシック、20%はトレンド商品を販売。他のカテゴリーと異なり、このセグメントは「フィット感を最重要視する」セグメントのため、ファッショントレンドのリーダーになる必要なく、トレンドに売上がそれほど依存しなくて済むのも市場特性のようです。

2. オン/オフライン戦略をMixさせた顧客エンゲージメント戦略

Torridの売上EC化率は34%(業界平均は20%)と非常に高い。時価総額が4兆円以上もあるTJX Companies(T.J.MAXやMarshallsを保有)でさえ、売上EC化率は5%未満です。Amazonが業界平均のEC化率を押し上げていることを考えると、一般的なアパレル企業のEC化率はまだまだ低いのではないでしょうか。

Torrideの高いEC化率を支えているのが「Torrid Insider」という会員向けロイヤルティープログラムです。450万人がTorrid Insiderに加入しており、昨年の売上$640Mnの86%がTorrid Insider会員によるものです。そして、2017年売上の約80%は、2016年度にTorridで購入した実績があるリピート顧客によるもの。会員の平均購入頻度は3ヶ月に1回。エンゲージメント戦略が成功しており、LTVが高いビジネスであることがいえます。 (余談ですが、3ヶ月に1回購入するブランドって、ユニクロくらいしか私はないです。。。とほほ)

“$50分購入すると、店舗で使える$25分のHaute Cash(クーポン)がもらえる、店舗流入を増やす施策”

新規顧客の75%は店舗経由で獲得し、店舗というシングルチャネルで獲得した会員を、ネット購入させオムニチャネル化することをKPIとして置いています。店舗&オンラインで購入する「オムニチャネル会員」は、シングルチャネルのみで購入する会員より年間5倍も購入額が高く、LTVを押し上げているようです。

3. 強気の出店計画

冒頭に申し上げた通り、リアル店舗の閉鎖が過去最高を記録するUSに置いて、2015年に78店舗、2016年に94店舗、2017年も年末までに95店舗オープン予定と積極的に出店しています。現在48州487 店舗を保有しており、カナダやプエルトリコにも出店しているようです。店舗のリース契約の条項に、店舗の売上パフォーマンスに応じてでリースを途中解約できる”kick-out条項”を入れることにより、フレキシブルに閉店したり、賃料を再交渉することが可能になっているとのこと。これが出店計画を後押ししているようですね。

店舗当たりの年間売上は$950,000、初年度のEBITDAは$200,000で99%の店舗がEBITDAベースで黒字化している! 出店コストは$290,000で、店舗当たりのPaybackは17ヶ月で回収しているようです。

4. Torridの過去3年のCAGRは44%、2017年の売上は$640Mn(730億円)!

2017年の売上は$640Mn (+45% from 2016)、粗利率は39%。

元々Hot Topic(NYASE: HOTT)というティーン向けアパレルを小売特化のPEである Sycamore Partnersが2013年に$600で買収、Hot Topicの1ブランドで急成長していたTorrid事業をスピンアウトさせ、今回上場させる。21四半期連続で売上成長しているTorridが、今後どのように市場でポジションを獲得していくのか楽しみです。

5. 相次ぐ、ぽっちゃり系コマースの新規参入者

$21Bnの市場規模で成長しているぽっちゃり市場。新規参入するスタートアップも相次いでいる。その急先鋒がNYのスタートアップ Dia&Co。”Stitch Fix for Plus-Size Woman”とも呼ばれており、Top-Tier VCであるSequoia CapitalのAlfred Lin (元ZapposのCOOで、AirBnBのBoard Member)が昨年Series A $20Mnラウンドをリードして話題になりました。

“月額サプスクリプションモデルを提供するDia&Co”

もう1社が、Amazonの様なコマースを運営、NYに本社を構えるEloquii。こちらも昨年Series B $15MnをGreycroftなどECに強くLAを拠点とするVCから調達しています。

Torridによる更なるECの強化、Dia&CoやEloquiiによるリアル店舗の出店、Amazonによる攻勢など、顧客のデータを巡る戦いがしばらく続きそうですね。供給不足の市場なので、今後どんなスタートアップが参入するか楽しみです。

Fin

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