「来訪者をリアルタイムにスマホで確認できる」スマートドアベル、US市場を調べてみた

Nest、Amazon Echo、Google Homeが登場し、家の中のモノがどんどんスマートになっています。一方で、家の「外」の市場でも近年面白い会社が登場して盛り上がっています。その一つがスマートドアベル市場です。2012年の創業から5年で売上が100億円以上あるスタートアップも出現していますが、市場自体はまだ黎明期ではないでしょうか。

今回は、「スマートドアベルとは?」「ドアベルカメラの2つのタイプ」「スマートドアベル 主な5つの機能」「主な市場プレイヤー:」「VCから最も調達しているRing」「スマートドアベルへの個人的な期待」について書いてみようと思います。

⭐スマートドアベルとは?

まずは、スマートドアベルを製造するRingの動画をご覧ください!

玄関のピンポンが鳴らされた時に、来訪者が「誰なのか」「どこからでもスマホで確認」でき、「双方向の会話」ができるのがスマートドアベルです。

⭐ドアベルカメラの2つのタイプ

タイプ① ピンポンが鳴らされると、来訪者をインターホンのカメラで確認し、お家の中に備え付けられているモニターで確認できるタイプ。日本でも集合住宅や戸建で広く普及しているかと思います。

“マンションなどに備え付けられているモニター付きインターホン (アイホン社製 PATMO)”

タイプ②ピンポンが鳴らされたり、人の動きを検知すると、来訪者のリアルタイムの動画をスマホに送信してくれるタイプのもの。スマートフォンやスマートTV同様、ネットに接続できるモノが「スマートドアベル」と呼ばれています。

今回は、訪問者が来ても常に自宅にいるよう装うことができるためセキュリティー性が高く、かつ、肌身離さず持つスマホにリアルタイム動画を送ってくれるため利便性が高い「スマートドアベル」にフォーカスしたいと思います。

🌟スマートドアベルの主な機能: 5つ

スマートドアベルの主な機能に、Amazon上でネガティブなレビューが多かった機能も含めながら、5つの機能に焦点をあてたいと思います。

①リアルタイムに、訪問者の確認が可能

スマホさえ手元にあれば、ピンポンが鳴ったタイミングやモーションセンサーが人の動きを検知したタイミングで、リアルタイムに動画がスマホにプッシュ通知され、訪問者の確認ができます。これにより、「ヤマトの宅配なら対応する」「訪問営業なら対応しない」などが、こたつに寝そべりながら即時の判断ができるようになります。

“August Home社の宣伝写真なんですが、こんな人来たら人的なセキュリティーが必要なレベルじゃん。。。”

②夜間でも鮮明な動画の記録が可能

玄関先の外灯をつけなくても、ドアベルに付いているLEDライトで認識可能なレベルの顔の動画を撮ることが可能です。Amazonのレビューでも、製品によってはLEDライトがなく夜間の動画撮影に問題があるとのコメントが多かったです。買って実際に使ってみた後で「夜間の動画が全然撮れない!」と気づくと思うのですが、選ばれる商品にするために今後各社とも改善が必要な機能になりそうです。

③双方向なコミュニケーションが可能

ドアベルカメラにSpeakerとMicrophoneが付いているので、訪問者と双方向コミュニケーションが可能です。例えば、足が悪い高齢者の場合でも、スマホが手元にあれば「今玄関に行くからちょっと待っててね」と訪問者に伝えることで、訪問者に待っててもらえるようになります。

左から“Skybell社「Hang up」と「Hold to Talk」、Ring社は「END」と「Talk」、August社は「X」「🎤」」三者三様のアプリのUI”

課題としては、センサーが人を検知したりドアベルが鳴ったタイミングから、どのくらいリアルタイムで動画が配信&会話が開始できるかです。1秒だと気にならないですが、5秒だとリアルタイムとは言えないレベルだと思います。商品によって、このプッシュ通知から会話開始時間に結構タイムラグが生じているようです。

④必要な情報のみを受信するための、センサーの検知範囲を設定する機能

例えば、家の前が車や歩行者の交通量が多い場合、センサーが頻繁に作動&検知して、何度もプッシュ通知が送られてくると困ってしまいますね。Ring社では、モーションセンサーの検知対象範囲を1.5〜9メートルで細かく設定したり、ゾーンで設定することが可能です。また、玄関前の芝を芝刈り機で刈る場合、何度も芝刈り機で左右前後に往復する訳ですが、このようなリピートアクションを「アラート通知の対象外にする」設定も可能です。

また、Ring社では赤外線センサーを利用しており、対象物の温度を非接触で測定できるため、木の激しい動きや影の動きには反応しないようになっています。

このように、ユーザ側で詳細設定できたり、検知のレベルを高めて、ユーザが必要とする情報のみを送信できる機能はまだまだ改善の余地がありそうです。

④他システムとの連携が可能
Amazon EchoやIFTTT (If This Then That)連携しているのも特長です。

“Amazon Echo、Honeywell、Alarm.comなどパートナーシップ戦略を掲げるSkybell社”

下の図のように、スマートドアベルでリアルタイムに訪問者を確認後、Alexaに「ドアを解錠して」と指示を出すことも、スマートロックとスマートドアベルを提供するAugust Homeでは可能になっています。RingもLockitronなど他社のスマートロックとの連携を推進しており、今後スマートドアベル x スマートロックを掛け合わせた新しい利用用途がどんどん産み出されそうで楽しみです。

⑤クラウドに動画の保存が可能
保存期間がまちまちですが、どの製品でも動画を保存してくれます。SkyBell社は7日間動画保存が可能でダウンロードができます。Ring 社の場合は、月額$3(年間$30)を支払うと、6ヶ月間動画を保存&閲覧&ダウンロードすることが可能です。

🌟スマートドアベル市場のプレイヤー

過去5年間でカリフォルニア州を中心にスマートドアベル関連のスタートアップが登場しました。August Homeは「スマートロック」で創業していますが、現在ではドアベル市場にも参入しています。Skybell社はVCから調達していませんが、クラウドファンディングのIndiegogoで$600Kを調達、現在は売上が$100Mnを超えているようです。しばらくは「Ring vs August vs Skybell(RAS)」の三国時代が続きそうです。

RAS以外にも、Blackstoneに$2B(2,000億円)に買収されたVivintがいたり、Kickstarter/Indiegogoでもよく商品が登場するカテゴリーのため、今後競争がヒートアップしていきそうな市場ですね。

🌟創業から5年でVCから$210Mnを調達しているRing

創業5年で$210Mnの調達!と聞くと、創業からRing社は順風満帆だったように見えます。

しかし、創業当時に出演したアメリカ版マネーの虎である「Shark Tanks」では、著名エンジェル投資家のMark Cubanなどにボコボコにされて、誰も出資オファーしませんでした。「It is not Internet Play, Consumer Device」「Can’t be worth $80Mn, I don’t see that progression」など「消費者向けデバイスでありネット企業のような高い成長性が見込めない、売上$80Mnとか到底到達できない商品だ!」と散々なフィードバックでした。

Shark Tankに出演&散々な結果にあった3ヶ月後の2013/12にSeedで$1Mn、Seedから半年後の2014/7にSeries Aで$5Mn、Series Aから1年後の2015/8にBで$28Mn、とトントン拍子で調達。ついには、SeedからSeries Dの3年3ヶ月で合計$210Mnを調達するに至りました。現在売上は$100Mn+、時価総額も$500Mn+は超えているでしょう。

Shark Tankで投資オファーをしなかったマネーの虎たちもRingの将来性を見抜けませんでした。「Shark、アホやな」と言いたい訳ではなく、百戦錬磨のShark達が見逃すわけですから、スタートアップ投資、特にSeed出資というのはそれほど難しいのだ!とこのことから強く思いました。

“Ringへの投資を見送ったSharkたち”

「ドアベルはInternet Playではなく、単なる消費者向け製品」だとSharkの1人が評価していた通り、消費者向けのハードウェア売り切り型商品は、購入顧客のリテンションが難しく、継続的な収益を生み出すLTVが高いビジネスにはならない!ということを言いたかったのでしょう。Ringが素晴らしかったのは、売り切り型のIoTビジネスを継続的に収益を生み出すRecurringモデル=IoTrモデルにしたことだと思います。

Ringの投資家に実際に話を聞くと、Recurringモデルによって、VCにとってもInvestableな商材になったと話していました。Ringは保存した動画を6ヶ月間閲覧できる機能を月額で$3のサブスクリプションで課金している訳ですが、この部分がユーザに受け入れられているからこそ、VCから調達できたのではと考えています。

“年間$30 or 月額$3で6ヶ月間動画の閲覧を可能にするRing社”
🌟スマートドアベルへの個人的な期待

スマートドアベルへの出資実績は無いので門外漢なのですが、今後スマートドアベルがさらに広く普及するためのドライバーを勝手に想像してみたいと思います。

①バッテリーの耐用年数
Ringなどは再充電可能なバッテリーが内蔵されています。現在ほとんどの商品がケーブルで繋いで給電するタイプですが、バッテリー内蔵型のドアベルを玄関先に簡単に取り付けられるタイプが一般的になるとより普及しそうです。そのためには、内蔵バッテリーの耐用年数が伸びることが肝になりそうです。一昔前の電気自動車みたいな話ですね。

②販売チャネルの拡大
現在、各社ともD2Cで消費者を直接オンラインで獲得するモデルかと思います。今後は、商業用テナントや集合住宅を開発するデベロッパーなどへ営業することで、売上もガサが出て、かつ、継続的な収益が見込めるビジネスに発展しそうです。建物に最初から導入されることで、ユーザ自身が設置する手間や面倒を省くこともできます。

先日スマートロックのLatch社がJet.com(オンライン型コストコ)と協業して、NYにあるアパートの入り口にスマートロックを取り付けたことがニュースになっていました。NYにあるようなドアマンがいるタイプのアパートの場合、アパートの入り口までデリバリーを取りに行く必要がありました。今後は、外出していてもスマートロックで解錠して、自分の部屋のドアの前まで持って来てもらえることが可能になります。このように、アパートの管理会社やリース会社と組んで、B2Cではなく、B2B2CやB2B2Bのビジネスモデルを構築して、テナントや居住者に最初から利用してもらうのは賢い登り方だと思います。

③更なる機能の充実
各社の商品も、動画の記録が開始されるのは、アクション(ピンポンが鳴った瞬間やモーションセンサーが検知した瞬間)のトリガーが引かれたタイミングからです。例えば、ピンポンを押した瞬間に訪問者が顔を背けていると誰が来たかはわからなかったりするようです。アクショントリガーが引かれる前のタイミングから動画を記録し閲覧できるようになると、アクション前後の一連の流れが把握でき動画の価値が高まりそうです。

また、いつも来ているヤマトの宅配のお兄さんということを:
①カメラが顔を自動認識
②ドアベルと連携したスマートロックで自動解錠
③解錠後に一定期間お兄さんがカメラ前に出現しない場合は警備会社へ自動連絡
など、様々なサービスと連携することで、ユーザの面倒な対応が自動化されたり、サービス提供者(この場合は宅配業者)の業務プロセスが変革されそうです。宅配業者の再配率を低下させる切り札になるかもしれませんね。

Fin

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