創業2年で75億円を調達! 不動産系スタートアップの注目株『Roofstock』を調べてみた - USスタートアップの資金調達ニュース <2017年10月編>

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2015年の創業からたった2年で$68Mn(約75億円)を調達した不動産系スタートアップ「Roofstock」。共同創業者兼CEOのGary Beasleyは、Starwood Waypoint Residential Trustという一戸建て住宅に特化し上場企業ではUS最大級の不動産投資信託(リート)の元CEOで業界のドン。SV Angel、Series AでBain、Series BでLightspeedと著名VCがこぞって投資するRoofstockがどのような課題を解決策するスタートアップなのか?少し調べてみた。

■どんな課題が存在するのか?
賃貸物件のオーナーになりたい投資家にとって、購入した賃貸物件から安定した家賃収入を得るには、立地の検証→物件購入価格と期待収益に基づく適正な家賃の設定→賃貸借契約内容の検討→入居者の集客→入居者審査→家賃の回収など様々なプロセスが存在する。これらの面倒なステップを大幅にカットできるのが「オーナーチェンジ物件の購入」。賃借人が既に入居しており、物件の所有者だけが変わるオーナーチェンジ物件であれば、賃貸収入を得るまでの面倒なプロセスを踏まずに、新しいオーナーとして物件を取得した日から家賃を受け取ることができます。

買い手にとって一見いいことづくめに見えるオーナーチェンジ物件。賃料収入が即見込める反面、「土地勘がない&人脈がない町での物件探しは困難」「入居者がいるため部屋の状態を確認できない」「現在の入居者がどんな人かを判断する材料が賃貸借契約書しかない」というデメリットも存在します。

■どのような課題解決策を提供するのか?
Roofstockは賃貸物件のオーナーになりたい投資家と物件を売却したい所有者をマッチングする「オーナーチェンジ物件のマーケットプレイス」。掲載対象物件はSingle-Family Rental(SFR)と呼ばれる「一戸建て住宅の賃貸物件」かつ「Roofstockの事前審査を通過した認定物件のみ」を掲載しています。土地勘がなく不透明性の高い賃貸物件に対して、事前審査を徹底することで安心して売買できる場を提供しています。

課金モデルは成約課金型モデルです。通常の不動産ブローカーが売り手に6%に課金するのに対してRoofstockは2.5%を成約に際して課金します。

また、物件は「Best Schools(学区が良い=家賃収入の安定が期待」「Higher Appreciation(値上がりが期待)」「Higher Yield(現在より高い家賃収入が期待)」「$100K and Under (1000万未満で投資可能)」など買い手の投資目的に応じた軸で物件を探すことが可能です。

■どのように解決策を実現しているのか?
売り手と買い手の物件に対する情報量の差が大きい中、売り手買い手双方が「安心&信頼して売買取引できる場を提供」することは非常に重要です。「Buyma」「メルカリ」「大黒屋」で取り扱っている中古ブランド品が「全て偽物で粗悪品」だったらどうでしょうか? Roofstockは下記6つの独自審査プロセスを経た物件を”Roofstock Certified Property”と呼んでおり、認定された物件のみを掲載することで、安心&信頼して取引できる場を提供しています。

①物件調査会社による物件調査
②短中長期で発生する修繕費の見立て
③所有権、抵当権、先取特権、未払税金、地役権などのレポート調査
④抵当権、担保権またはその他の負担の対象になっていないことの確認
(担保権の行使により買主がその所有権を失う恐れがない)
⑤ローカル市場や物件分析に基づく売買物件価格の妥当性の分析
⑥賃貸借条件や家賃滞納履歴などのレビュー

①の物件調査には特に力を入れており、調査会社を利用して実地検証、家屋調査、価格査定、管理会社の調査、各賃貸物件の全入居者の審査をレポートにまとめ買い手希望者へ提供している。これにより、買い手側は遠隔地にいながら物件に対してDue Diligenceを進めることができます。

また、⑤の売買物件価格の妥当性分析に対しても、Broker Price Opinion (“BPO”)と呼ばれる資格を保有するローカルの不動産ブローカーによるブローカー提案価格や自社と他社(House Canary社)による販売価格比較レポート(直近12ヶ月で売買された類似した3物件と比較して、その物件価格のHighとLowを算出するもの)で価格の妥当性検証結果を買い手へ提供しています。

■雑感
サイトを見るとパッと見、Lending Clubの初期の様なCtoCのモデルに見えますが、恐らくは機関投資家が保有する大量の賃貸物件を一挙に獲得→審査→認定→掲載し、個人投資家とマッチングさせるBtoCモデルと推察します。短期間で75億円を調達できたのも、機関投資家や物件を大量保有するスーパーオーナーと繋がりがあり、掲載基準を満たしそうなオーナーチェンジ物件を継続的に安定して収集できるチャネルを確保できることが背景にありそうです。今後、LendingClubの様にCtoCを経て、機関投資家同士がオーナーチェンジ物件を売買するBtoBマーケットプレイスに成り上がっていくのでしょうか?

また、Roofstockのオーナーチェンジ物件は全米不動産物件情報検索DBであるMLSに掲載されておらず、Roofstock.comのみで閲覧可能なユニークな在庫物件であることも魅力的です。今後オーナーチェンジ物件のデファクトを全米で獲得できるのか楽しみです。

創業: 2015年
本社: Oakland, CA
累計調達額: $68.3Mn (Series C $35M, 2017/10)
投資家: Lightspeed, Bain Capital, SV Angel, Canvas Ventures

Fin

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蓮沼 貴裕(Takahiro Hasunuma)

Monoful Venture Partners←コマツ←リクルートI 投資先は、Shipbob、Vesta Healthcare、Blacklane、Fishbrain、Dispatch(VEP)、Brickworks (b8ta)