私たちが「目で見ている世界」と「脳が見ている世界」は違う。
私たち人間は、普段無意識の内から「目」で情報を感知し、「脳」で情報を認識しています。
アイキャッチの渋谷の画像を見たときに「渋谷」と判断しているのは脳です、目はあくまで建物や景色を感知しているのに過ぎません。
なにを当たり前のことを…と思うかもしれませんが、実は「目が受けとった情報」と「脳が認識したもの」は微妙に異なっています。脳は目に入るものに「解釈」を加えているのです。
試しにこちらの画像を見てみましょう。
黒線の逆三角形の上に白の三角形があるように見えませんか?
実はもうこの時点で脳は無意識のうちに「解釈」しているのです。
もう一度よく見てみましょう。何本かの線と欠けた円があるだけです。白の三角形は存在していないのです。
脳は何もないところに逆三角形を作り出しました。 それはなぜかというと脳が「逆三角形が視える」と予測したからです。
この図は心理学者ガエタノ・カニッツアが発表したことから「カニッツアの三角形」と呼ばれています。(別名パックマン刺激)
同様に「エレーンシュタイン錯視」というものがあります。
こちらは、背景が黒で白の途切れ線しかないはずですが、線と線の間に背景よりも黒い丸が見えませんか?
「カニッツァの三角形」と「エレーンシュタイン錯視」この2つは実際には存在しない輪部が知覚される錯視として「主観的輪郭」と呼ばれています。
なぜこのように見えないものが視えるのか
脳がこう解釈するのは外界を素早く理解するためです。脳は目から入力された情報を瞬時に認識し、辻褄が合う世界を構築しようとします。
先ほどのカニッツァの三角形の例でいうと、脳は「線と円が欠けている1枚の絵」と判断するより、「逆三角形の上に三角形が被さっている1枚の絵」と認識したほうが辻褄が合うと判断して認識しています。
この辻褄の合う世界を構築する際に人間は何を頼りにするかと言うと「経験則」です。
「経験則」を意識すれば見え方を操作することができます。
書いてあることは全く同じですが、読み方が変わってきますよね。これはグルーピングによる経験則の影響です。
もうひとつ事例を紹介したいと思います。
何気ない新聞欄です。
日本人は経験則から左から右に文章を読みます。
ここで一箇所だけ赤い色で囲ってみます。
すると赤い箇所しか日本人は注目しません。これは重要なところは赤線を引くという経験則からの行動です。
さらに、タテ書きで「北の大地で虎退治」という文章が通じてしまうため、脳としては瞬時に辻褄の合う世界を構築しました。
この瞬間に他の文字は辻褄が合わなくなるノイズとなってしまいます。
目では、他の部分の文字は見えているはずなのです。しかし、脳は「北の大地で虎退治」という文字しか認識していないのです。
まとめ
人は、目で見たものを感知し脳で処理しています。脳での処理は目で見たものと全く同じではなく「脳にとって辻褄が合う世界」を構築します。そして、脳が辻褄を合わせるときに頼りにするのは「経験則」なのです。
参考書籍
インタフェースデザインの心理学