新卒を3ヶ月で捨ててフリーランスになって変わったこと、得たもの、そして失ったもの

Potato4d
8 min readFeb 19, 2018

新卒入社したピクシブ株式会社を退職し、フリーランスになって半年以上経った。本格的に仕事をし始めたのは8月からなので、まぁ丁度半年と言っても問題ないだろう。

自分は高卒で入社しておいて3ヶ月半でやめるという信じられないような行為をした上でフリーランスとして生きているわけだけれど、今の生き方はすごく満足している。自分にとって新卒というカードはあまり重要ではなかったので使ったことに特に後悔はないし、ストレートでフリーランスになるより数ヶ月だけでも新卒をできたのは良いことだと思っている。

とはいえ状況としては今のほうが性に合っていることは間違いない気がするし、良いことを書きたいんだけど、それはそれとして、明確に失ったものもあるのでどちらもどこかにまとまったテキストとして書き残して、これからまた自分が大きな人生の選択をする時に考えるためのものとして活用できたら良いなということを思い、書いてみることとした。

変わったこと

試しに良い悪いではない変わったことを書いてみたい。総括というより、メモ書き程度のものだけど。

労働リズム

何よりも変わったのが、フリーランスという職業として生活しているという事実が作り出す労働のリズムだと思う。

怠惰であろうとしたらいくらでも怠惰でいられるし、その分勿論所得は減る。とはいえ、割の良い仕事だけを選り好みしていたらまぁ全く食うには困らない程度ではいられる。逆に仕事量を増やそうと思えばいくらでも増やせる。労基にも何も守れない立場なので、複数の案件を同時に進めて一日中仕事していることだってできる。そういった自分のパフォーマンスとの付き合い方と、出てゆくリソースの管理の裁量が完全にあるのがポイントだと思う。

これは勿論メリットでもあるしデメリットでもある。極端な話を言えば、億万長者になるも野垂れ死ぬも自己責任。何も守ってくれない。自分の場合、実家と完全に離れているので尚更。完全に自分で生きている感覚。

生活リズム

労働とは全く違う、生活自体のリズム。完全にぶっ壊れた。

去年の暮れまで毎日15:00に起きていて、流石にまずいので今年は1/5あたりから基本的にAM 9:00に起きるようにしている。基本的には成功している。

食生活

会食は勿論増えたけれど、それ以外の「みんなでランチ」みたいな概念は消え去った。たまにフリーランス同士の友人とお昼することはある。

結果として資金面の余裕もあって高校生/新卒時代以上にコンビニでの大量消費が増えた。新卒時代は忙しかったこともあって、ここ一年近く自炊はしてない。

得たもの

明確に得たものも記しておきたい。

活力

これは大きい。自分が長期の案件を毛嫌いするからというのもあるが、基本的にやりたいことが生まれたら即日から、最大でも30日以内には十分な時間をとることができる。やりたいことができたら満足するか、生活が困るまでやり続けたら良い。だって、自己責任なのだから。

これのお陰で色んなことができるようになった気がする。高校時代ですらここまで余裕はなかった。ここは本当に良いポイントだと思う。気力を吸う要素がない。

この余裕が生まれたことによって、本当に色んなことをやるようになった。個人Webアプリケーションを作ったり、IT系のメディアに記事を寄稿したり、関西にいた頃にやっていたイベント運営も積極的にやるようになった。

「プログラマ」ではない生きかた

これもまた大きい。今の自分は「プログラマですか?」と聞かれても「Yes」とは簡単にいいづらい生き方をしていると思う。

例えば……

Web制作をするときは特にブランディング職が強い場合は心地いいデザイン体験のためにマイクロインタラクションから派手な視覚効果まで提案する。

講師業をするときは勿論講座の資料を作るだけじゃなく、世の情勢を見ながらウケそうなテーマでハンズオン開催して、その上で教える能力と人間の心理的な部分の知見を活かして満足度を高める。

0→1案件や新規機能開発では、割が良いからということもあるが、事業的な都合にあった開発も請け負う。

業務委託先では、マーケティングの草案をだして提出し、それが通ったら開発以外の部分を行って開発を別のエンジニアに頼む。

……

みたいなことをしていて、おおよそエンジニア業だけとは言えないようになっていると思う。けれど、どれも共通しているところはあって、自分は「技術ではなくて人をHackする方向で進んでいる」というところ。

元々はてなブログやQiitaがバズったりすることも多かったし、多くの人と関わるイベント屋をやっていたからというのもあるけれど、情勢を鑑みてその空間における人間の性格や傾向をもとに一番ウケるやり方を探していく。みたいなのは得意かつ好きな領分だったのでそこを存分に活かせている気がしていて良い。

ここは失いたくないし、「プログラマ」として開発を続けるタイプの仕事のやり方は自分の世界じゃないなと強く思う。とはいえいつも開発してるしOSSへの貢献とかも頻繁にやってるからコード自体は書くんだけど。

資金

あと皆が大切と思うところだとお金の話。やっぱりリスクをとる職業なだけあって収益性は圧倒的に良い。

リスクはきちんとリターンとするために自分の技術を磨けばなんてことはないし、自分は細かな資金繰りを楽にするために即日収益が入る講師業をしていたりもする。

とは言え自分は仕事をしたくない時は本当に仕事をしないでもっと別のことを追っているので、普段からバリバリ働いて年収1200万!みたいな人とは全く違う形の生き方だけど、それでも圧倒的な割の良さで楽をできている。

技術選定の裁量と検証サイクルの回しやすさ

技術方面でいえばこれ。請負は成果物に対して責任が発生するので、アプローチを自分がやりたいことに応じて柔軟に変えやすい。

得てしてやりたい技術は高速に案件をさばくことに貢献してくれるので、やりたい技術で高速にさばく場合をベース見積もりとしてそれ以外のスタックの場合は通常の見積もりで出したりする場合が最近はある。

そうすると技術選定の裁量をある程度持ちながら、多くの毛色の違う案件で投入してみることでその技術の強みや弱みを高速で掴むことができる。

最近は特にNuxt.jsでそれをやっていて、Web制作でもWebアプリケーション開発でもNuxt.jsのほうが圧倒的に速く成果が出るのでNuxt見積もりとVue見積もりで単価が違ったりする。課題も見えてくるので使わない選択肢も見えてくるのが凄く良い。

失ったもの

得たものがあるなら、勿論失ったものもある。

エンジニアとして倒したい大きな課題

自分はそこまで致命的とは感じていないけれど、心までエンジニアの人間にはこれはつらいと思う。

要はフリーランスって「永遠のゲスト」なので、長く自分が特定のものを見ていくことや、完全にその製品におけるオーナーシップをもってやっていくというのは当たり前のことながら厳しい。

そうなってくると例えばこんな問題とは本当に無関係となる。

  • アプリケーションのカリカリチューニング
  • インフラストラクチャのスケーリング
  • 中期までならまだしも、長期的にみた製品への技術的投資
  • 大規模コードベースの継続的なメンテナンス

このあたりはエンジニアとしては凄くそそられる部分があると思うが、自分は殆ど関わっていない。

技術的な構成を見るような機会は出てきたけれど、とは言えそれはフロントエンドのアーキテクチャレベルの話。チューニングの話はアーキテクチャよりもっと外だ。

自分が何かを興す場合はチューニングやスケーリングマターな課題はオートスケールで殴ってしまったほうが良いという思想もあって投資をしていないが、そういった技術的に難しい課題に立ち向かっていきたい人間には耐え難い環境だと思っている。

別にNGINXの設定も、何なら昔からApacheでvhostsでいくつも小さなサーバー内にWebアプリを飼っていたりしたので普通の設定はできなくはないが、高度なインフラストラクチャやアプリケーションの最適化の知識が求められる場面には太刀打ちできないだろうなと思っている。

自分はそっちは正直クラウド事業者側が解決していく方向に世界が舵を切っていくと思っているので投資をする気がないから幸いなんとも思わずにいられるが。

バインドへの耐性

仕事上理不尽は少ないとは言えどうしても出てくるのでそこへの耐性はあがる一方、よくわからない拘束に対しての我慢強さは凄く落ちたと思う。

資金繰りが楽だからというところもあるけれど、自分の中で一番大切にしたいリソースが時間となってしまっていて、圧倒的パワーによって時間あたりの収益性をあげられない場合不満が強いし、よくわからない時間が本当に嫌いになった。

これからどうしたいか

目的があってフリーランスになったので、目的達成を第一に、フリーランスみたいな名前にこだわらずに生きていきたい。

正直、フリーランスというのは目的達成のための手段でしかないので、今くらいの生活ができるなら会社員でもなんでも良い。

あとはやっぱりエンジニアだけでない生き方をもっとしたい。

今だってデザイナーもどきになったりイベンターもどきになったりマーケターもどきになったり二十面相をやっているけれど、Webフロントエンドや外向けの発信力という柱を最大限活用しながら幅広く活動していきたい。幅広く活動できることこそが今のスタイルの強みだから。

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