新しいiMacのインサイド・ストーリー

Ray Yamazaki
21 min readOct 18, 2015

--

by Steven Levy

Retinaディスプレイ、充電式入力デバイス、フォースタッチ・トラックパッド、より強力なパワー。「ピックアップトラック」にしては悪くない。

今年初め、MacのアクセサリーをデザインするAppleの最高機密ラボは産みの苦しみに悩まされていた。10/14に発表される新しいiMacシリーズに合わせてデザインされたマウスの再発明のためだ。「Magic Mouse 2」と名付けられたこの入力デバイスは前モデルと全く同じように見えるかもしれない。しかし、実際は内側から底面に至るまですべてが全く新しい。これは概ねアルカリ電池から再充電できるリチウム電池に代えたことによる。

開発も後半に差し掛かり、万事順調に思われた。内蔵のリチウム電池は内部でジャストフィットするように設計されていたし、バッテリーからの潜在的な干渉を考慮してデザインされ直したアンテナも問題はなかった。

しかし、たった一つのことが大問題だった。

マウスから発する音が心地よくなかったのだ。

これは私がthe Input Design Labを大胆にも取材する初めての記者として訪れたとき、Appleのエンジニアリング・リーダーであるKate BergeronとJohn Ternusに言われたことだ。 私が訪れたのはちょうど新しいiMacファミリーをリリースする時期だった。 いつもと同じこの繰り返し、Appleの製品は現在の所有者やWindowsに不満のあるユーザー、そして初めてMacを買おうか迷っている人々にショックを与えるようにデザインされ、幾つもの素晴らしい特長を有していた。最も目を引くのは全製品ラインに採用されたRetinaディスプレイだ。21.5インチのiMacシリーズでは4K Retinaディスプレイを選択することができる。また、27インチのシリーズは全て芸術品レベルと言っても過言ではない5Kディスプレイになっている。また、モニターには以前のモデルよりももっと多くの色を表現できるエキゾチックな新しいテクノロジーが使われていて、驚くほどディティールの細かい写真やメスで切り取ったかのようにシャープなテキストを表示できる。

Kate Bergeron

他の大きな進化は、ワイヤレスキーボード、トラックパッド、そしてマウスといった新しい一連のアクセサリーだ。今までのApple社製Bluetooth機器と異なり、これらのワイヤレス入力機器は取り外しできる電池を止め、代わりに「ライトニング」と名付けられたスリムなケーブルを通してiPhoneやiPadとちょうど同じように充電するリチウム電池を使っている。Magic Trackpad 2は最初にApple Watchに搭載され、それからMacbook、iPhone 6sにも搭載されている「フォースタッチ」を備えている(「フォースタッチ」は画面を深く押し込むことで、様々な機能のトリガーになるテクノロジーだ)。

新しくより進化したiMacの価格は、プロセッサーとグラフィック・チップが予想通りアップグレードしたにも関わらず、以前のモデルと同じだ。しかし、Apple製品のすべてに言えることだが、細部に至るこだわりは狂信的なまでに徹底している。

マウスの音の問題はAppleのInfinite Loopから数マイル離れたところにある特徴のないオフィスビルのなかにある迷路のような仕事場を狂乱と幾晩もの徹夜の日々に追い込んだ。

原因は、マウスの底にある小さなポリカーボネートのランナーにあるように思われた。「私たちは底部の構造を変えました」とAppleのエコシステム プロダクト、テクノロジー担当副社長(肩書きの翻訳:要するにあなたは彼女の元で生まれたキーボードを猛烈な勢いで叩いているわけだ)Bergeronは言う。「摩擦によって生じる音の性質も変えました」とも。

「以前のマウスでは、私たちは底部、素材、幾何学的配置等すべての調節に本当に多くの時間をかけたので、テーブルの上で動かすと音も手触りもとても良かった」とMac、iPad、エコシステム、オーディオ・エンジニアリング担当副社長のTernusは言う。「しかし、マウスの設計の大部分を変更して共振振動数も変えてしまった。そして突然、私たちが愛した底部はもはや少しも素晴らしいとは言えなくなってしまった」。

それで、結局何が問題なのか?私は知りたかった。

「少し変えたんだ。何というか、音を」。2001年からAppleで働いているTernusは言う。「音は出るものなんだ。問題は私たちが気にならないような音にすること。そのマウスは、そういう音がしなかった」。

John Ternus

「そう」。2002年からエクステンディッドMacチームにいるBergeronは同意した。「良くなかった。あなたも間違いなくあの音は好きじゃないはず」。

Appleが世界で最も価値のある企業である理由はたくさんある。Tim Cookは、彼の前任者であるSteve JobsがAppleのカルチャーに叩き込んだ「イノヴェイションにフォーカスしろ」という教えを浸透させ、同時にサプライチェーンの達人として賞賛されている。また、Jony IveはAppleをデザイン・アイコンにして世界的な熱狂を生み出した。そのマーケティングとブランディングは業界のスタンダードとなった。しかし、伝説的な製品、すなわちコンピューターが作られたラボへの今回の訪問によって、私は他の理由にも思い当たった。

ディテールに苦心しろ。

完璧よりわずかに下という程度の音であれば、プロダクトをダメにしないどころかオフィシャル・バグですらない。それにもかかわらず、Appleのエンジニアは新しいiMacのMagic Mouse 2をデスクで動かすときに、より良い音がするように万全を期した。

もちろん、iMacに関してもずっと大きな疑問がまとわりついている。「なんで今更デスクトップなんだ?」という疑問だ。ほんの1ヶ月前、AppleのCEOであるTim CookがばかでかいiPad Proと専用のキーボードを披露し、「iPadはパーソナル・コンピューティングの未来についての我々のヴィジョンを明確化したものだ」と宣言した。これはiMacを過去の遺物にするものではないのか?Steve Jobs自身も2010年にこの点を予見している。「PCはピックアップトラックのようになる」と5月にDカンファレンスで言っている。「まだそこらにあるだろうが、ほんの僅かな人々しか必要としなくなるだろう」。とすると、このモバイル全盛期にiMacは、たとえピカピカの新製品でも退屈なものにならないだろうか?

Phil Schiller

「そんなに簡単ではないんだ」とAppleのグローバル・プロダクト・マーケティング担当上級副社長Phil Schillerは言う。「今は人々のコンピューティング・ライフのあり方を決める重要な時期にある。素晴らしいことだ。楽しんでもいる。そして、時間をかけ私たちはカスタマーにどんな選択肢を示せるか熟考してきた。ひとつにはiPadがある。PCでする多くのことがiPadで出来る。とても多くの人々がiPadをコンピューティング・デバイスとして使っているし、iPadにはそれが出来る。そして、iPad Proはそれ以上だ。しかし、皆がそう考えるわけではない。Macと同程度に必要なことが出来るデバイスは他にないと決めてかかる人もいる」。

実際、SchillerはAppleのプロダクトが一貫性を保つために、製品ラインについての壮大な哲学理論をもっている。

「全部がコンピューターだと言える」とSchillerは言う。「ひとつひとつがコンピューターという概念に何か独自性を与えるし、ひとつひとつが恒久的でシンプルなフォームで作られている。例えばApple Watchによって人は腕の上で多くのことが出来るため、それほど頻繁に携帯を取り出す必要がなくなった。iPhoneでも出来ることが増えてきたので、そのうちiPadも必要なくなるかもしれないし、そうなるように努力している。また、そのiPadは非常にパワフルなので、今やノートブックPCは必要ない。『何でノートブックPCが必要なの?キーボードをiPadに装着すればいいじゃない。全部iPadで出来るから』といった感じだ。さらにノートブックPCはデスクトップを不要にするようなものとも言える。そうだろ?これがこの10年だ。それでかわいそうなデスクトップは製品ラインの最後尾に追いやられることになる、もう果たすべき役割がないだろう?」

良い質問だ。そして、その答えは?

「デスクトップの役割は、コンピューターに出来ると考えられていることの限界に挑戦し、どのコンピューターも成し遂げたことのないものを成し遂げることにある。ますますパワフルでできることも多くなるため、性能の高さでデスクトップを必要とするだろう」とSchillerは言う。「ノートブックPCと競い、より薄く軽くなる必要なんてないんだ」。

これが新しいiMacのプロダクトラインの基底にある考え方だ。Appleの主な収益はiPhoneの成功によるものだという事実にもかかわらず、Macintoshはいまだビジネスの重要な部分を占めている。そして、Schillerによると、このiMacはその中で重大な役割を果たすことになる(AppleはiMacのセールスをthe Macintosh numbersで明らかにしていないが、直近では四半期で500万を少し下回るくらいだろう。iPhoneはMacの10倍売れている)。「私たちはこのことを深く気にしている」と2001年以来Appleで勤務するAppleのマッキントッシュ・プロダクト・マーケティング担当副社長Brian Crollは言う。

Brian Croll

重要性というものは数字を超える。歴史はiMacをAppleの共同創業者すなわちSteve Jobsが戻ってきた後の見事なリバイバルを決定付けた製品と位置付けるだろう。ちょうどリリースされたばかりの映画『Steve Jobs』が1998年の最初のiMacのローンチ・イヴェントで終わるのは偶然ではない。ほとんどすべて映画の中で語られているものは脚本家のAaron Sorkinによって事実を歪められているが、iMacは事実Appleの復活への道のりを象徴するものとなった。リリースに向けての数日をJobsと過ごしたが、彼は顧客のために素晴らしいデスクトップを生み出すことを絶対に必要なものと信じきっていた。「これは私たちのソウルなんだ」と彼は言ったんだ。

ある意味で、新しいiMacの目を見張るようなRetinaディスプレイは、その伝統を継承していると言える。 「ディスプレイはソフトウェアのための劇場のようなものだ」とJobsは最初のiMacのローンチ直前に言った。そして、新しいモデルについてAppleは”The Lion King”を上演するための前舞台を作ったと言える。

Courtesy Apple

もちろん、RetinaディスプレイがiMacの全ラインに備わることは、2010年のiPhoneでRetinaディスプレイが紹介された瞬間から不可避だった。その後、2012年にはMacbookに、それからiPad、今やApple Watchにすらだ。「私たちは本当に、本当に、iMacをRetinaにしたかったんだ」とTernus。「金切り声で叫ぶくらいにね」。

AppleのMacハードウェア担当シニア・ディレクターTom Bogerが説明してくれた。「iMacのディスプレイは画面の解像度は高密度なだけでなく、新しいテクノロジーによってより幅広い色の表現ができるようになった。現行の$2,500のiMacのRetinaディスプレイと比べても、新しいiMacはより良くなっている」。「より広く色の全域を表現できるようになったんだが、これは基本的に表示できる色のパレットがより大きくなったことを意味する」と彼は続ける。すべてのハイエンド・ディスプレイは人間の目がなんとか認識できるすべての色の帯域をなんとか表示したいと考えている。これは技術上の大変なチャレンジだ。かつての工業的な基準はSRGB(Standard Red Green Blue)と呼ばれ、相当なカラー・スペクトルを捉えることができた。最近のAppleのRetinaディスプレイは100%のSRGBを表示できる。「私たちはこのことを大変誇りに思っている。多くのモニターは100%のSRGBを表示することすらできない。それなのでこれは本当に凄いことだ」とBogerは言う。しかし、10年ほど前、映画業界の連中と一緒になった時、彼らは「自分たちはSRGBよりもさらに進められる、すなわち世界にはもっとたくさんの色があり、それを彼らの作品に表示できる」と言っていた。そうして彼らは「P3」と呼ばれる新しい色の基準を生み出した。「P3」は実際のところSRGBよりも25%も幅広く表現できる。P3をサポートすることでiMacはより豊かな色の表現を可能にしている。

「色は重大事だった。しかし(以前の)私たちにはそれを何とかする手段がまるでなかった」とTernusは言う。Appleはこの問題をLED(Light Emitting Diodes)という新しい方法で解決した。LEDは強度の高い赤や緑を発生させ色のフィルターを通すことで色全域を生み出す。それから、チームはこの計画を実行するためのサプライヤーを探し出さなければならなかった。他の選択肢としては「quantum dot」と呼ばれるテクノロジーがあった。しかし、有害物質であるカドミウムを使わざるをえなかったのでAppleはこれを採用しなかった。「そして偶然、環境に悪い影響を与えずに私たちの求めるものをすべて満たしてくれるようなLEDサプライヤーが見つかった」。

Courtesy Apple

ただ、疑問としてそれが一般的なユーザーの経験をどれほど変えうるのだろうか?Appleが見せてくれた写真のA/Bテストでは、色の鮮やかさや増えた色が表現する細部で実際に違いを感じた。しかし、iPhoneで撮った写真に劇的な変化が生じると期待しない方がいい。P3はDSLRカメラやハイレゾ写真のrawデータのような高密度ピクセル画像に最も威力を発揮する。一方、映画はまた別だ。今のところiTunes Storeから4Kの映画をダウンロードできない。AppleはP3が実のところプロ市場向けであることを認めている。

「プロは色を見る目があるので、すぐに違いが分かる」とCroll。「普通の人はチラッと見て『おお!よく分からないけれど、なんだか良いね』と言う程度だ」。

しかしながら、新しいiMacに明らかに搭載されていないものがひとつある。タッチ・スクリーンだ。Microsoftや他のメーカーがマルチタッチをデスクトップのディスプレイに搭載すべきと信じている一方で、Appleはこれを完全な間違いだと確信している。「エルゴノミクスの観点からこの事を多方面から徹底的に研究した結果、キーボードを使いつつタッチ・インターフェースに手を伸ばすような使い方はデスクトップには向かないと結論付けるに至った」とSchillerは言う。「iOSは最初からマルチタッチを想定してデザインされてきた。マウスを動かすことを前提としたようなインターフェース、例えばカーソルや指で押せないくらい小さな『閉じる』ウィンドウといったものはない」。「Mac OSは当初より間接的なポインティング・メカニズムのためにデザインされてきた」。「これら2つの世界は目的が異なる。そして、それは良いことだ。私たちはそれぞれを最高の体験に向けて最適化でき、妥協の産物に貶めなくてすむ」。

Courtesy Apple

Microsoftについて、Schillerは先週発表され高評価の新製品に関する記事は読んだが、試してはいないと述べている。また、彼はMicrosoftが全面的にハードウェアに参入することを本社が認めても今更遅すぎると付け加えている。「1つのイヴェントでこれほどAppleのやってきたことが正しいと証明されるとは驚きだ。もちろん皮肉なお世辞だが」。

Appleはプロダクトラインで横断的にマルチタッチ・コントロールを採用している。それはデスクトップにおいては手を下向きにするような作業に向いている。そして、AppleはモバイルOSから順序立ててMagic MouseやMagic Trackpadのようなデスクトップ・アクセサリーを取り入れている。 しかし、今回のモデルは内蔵の充電池を備えた新しい入力デバイスで記憶に残るだろう。

「ドライバは環境に配慮されたものだ」とSchillerは言う。単三電池を使わなくなることで有害物質をもっと減らせるとさらに言及した。 2時間の充電で1ヶ月以上もつ。だが、たとえ充電し忘れたとしても、ほんの1分USBポートに差し込めば半日分の仕事くらいはできる。また、以前Bluetooth接続に四苦八苦した人もMacにマウスやキーボードを繋ぐだけで直ぐにこれらのデバイスとペアリングできるようになる。

しかし、デバイスの内側にバッテリーを固定するだけでも、Macチームは再デザインを余儀なくされた。今に至るまで一般的なワイアレス・キーボードとトラックパッドにはバッテリーを入れる寝袋のように丸まった部品があり、それが全体的なユーザー体験を決定付けていた。Appleの社員が"diving board"と呼ぶものだ。

Courtesy Apple

キーボードについて言えば、その部品を取り外せばキーをもっと大きくできた。「長い間、私たちは入力をもっと快適にしようと努力を続けてきた。そして、今年の初めにMacBookを見たときに、ついにブレイクスルーにたどり着いた。キーとタイピングの正確さはなんとか到達したかったレベルに達している」とBergeron。

Magic Keyboardのキー・キャップは以前のものよりも大きくなったが、あるプロトタイプではもっと大きかったとBergeronは明らかにした。「私たちは早くから多くの改良を施した。そして、おそらく必要以上に極端に変えてしまった。そこで少し手直しを加えた」。彼女が言うには、その結果とても無駄を省いたデザインとなった。「キーの部分を最大限に広くするとともにキーボードの周りの縁を小さくし、置くのにあまり場所を取らないようにした。以前のものより軽くなったのにもかかわらず丈夫だ」。

Courtesy Apple

Magic Trackpad 2はもっとも劇的にデザインされ直した。iOSのマルチタッチに慣れた人がMacintoshで頻繁にスワイプできるように十分に広く、表面は29%も大きくなった。「タッチ・エクスペリエンスにはより広いトラックパッドが必要だ」とCroll。「iMacは腕を下ろした状態で使うマルチタッチ・デバイスとしては非常に優れていると信じて疑わない」。なぜなら、平らに置かれているのでユーザーがどこをクリックしても同じ方向に反応が返ってくる。ハイパフォーマンスのガラスを使い、落下実験も行った。そして、おそらく最も重要なことだが、トラックパッドは今やフォース・タッチをサポートしている。デスクトップとモバイルの密接不可分な関係へともう一歩進んだことになる。実際、フォース・タッチがデスクトップに組み込まれたやり方は、鍵となる機能がどのようにしてAppleのプロダクトラインに広がるのかについてのSchillerのヴィジョンを理解するのに良い例だ。思い出してみよう、初めはApple Watch、次にiPhone、そして、iMacだ。「私たちは共同のチームだ」とCroll。「iOSを開発している者はOSXの開発担当でもある。彼らは同時に仕事をこなしている」。

Courtesy Apple

iMacはピックアップトラックかもしれないが、Appleはスポーツカーに付くオプションをすべて載せている。

今回のthe Input Design Labへの取材でAppleが様々なプロダクトラインをどのようにプランしているのかの謎を払拭できたかもしれない。外部から見るとAppleは厳密なスケジュールに従っているように見える。しかし、Appleはプロダクトのリリースについてあまり気にしていないようだ。経営陣は、適切な時期が来るまでは製品をローンチしないというオーソン・ウェルズ的な原則を大切にしている。新しいiMacの場合、その売りは幾つかの要素の組み合わせだ。Retinaディスプレイを実現できるか、デスクトップにフォースタッチを取り入れる必要があるのか、乾電池をエコの観点から切り捨てるべきか。そしてムーアの法則のおかげで安いチップが手にはいること(一つのボーナスについて書かなくてはなるまい。フュージョン・ドライブはずっと安くなった)。

いったん期限が決められたら、チームは製品を世に出すために集中しなければならない。そして、今回の音の変なマウスについてはうまく解決法が見つかったと思う。

幸運なことに、Appleは今回のような場合のためにVallco Parkwayに多数の部門を用意している。例えば、ある部門では素材の異なる表面で摩擦を図りながらマウスをテストしている。また、別の部門ではマウスやキーボードを超防音の部屋で検査し、ノイズがどこから出るのか極めて正確に調査している。今回のケースでは、新しいマウスの底部が表面と作用し合っていた。元のMagic Mouseはランナーと接触する部分が最大になっていた。そこを改良版では変えた。「少し滑りが悪かった。それほどでもなかったんだが、机の上をこう滑っていって欲しいという完璧さに達していなかった」とBergeronは言う。それが結果的に許容できない音を生んでいた。

「高密度ポリエチレン(HDPE)の底部にすることで解決した。今回はかなり際どかったが、いい経験になったと思う」とBergeron。「幾何学的デザインというものは、経験を支配する不確定な要素だと明らかになった」。そして、幾つかの混合物からなるランナーを作った後で1つを選ぶ会合を開いた。Ternusはこのプロセスについて「エンジニアリングとデザインの中心メンバーが集まり、幾つものサンプルを見て、それから言うんだ『ああ、これだ。この音だよ!』。それで決まりさ」。

それから、また全力を尽くすんだ。「これだけの年月Macと共にあっても、なおやるべきことがある」とCroll。「ほとんどジェットコースターみたいなもんさ。降りたら、またもう一度乗ろうと入口に走り出す。やるべきことはたくさんあるんだ。あなたの予想通り、私たちは次のiMacに向けて既に仕事を始めているよ」。

しかし、彼らは私に「それ」を見せてはくれなかった。

特に断りのない限り写真はJason Henryによる

Backchannelをフォローしよう。Twitter | Facebook

--

--