「SLUSH ASIA」で見た「コミュニティー・フェス」という新たなかたち

Photo by Ray Yamazaki

フィンランドで生まれ、今年初めて日本に上陸を果たした「SLUSH ASIA」をひと言で表すとするならば、「コミュニティー・フェス」という言葉がぴったりだ。スタートアップと投資家、ボランティア、参加者が垣根なく結びつくコミュニティー。しかも、堅苦しいところは全くなく一般人でも自然体で参加出来るフェス。こういうスタートアップ・イベントが今まで日本にあっただろうか?

9:00から始まるキーノートでさっきまで登壇していた著名人のスピーカーが、ランチタイムには、何の衒い(てらい)もなくビールを飲みながら青空のもとでオーディエンスたちと話している。その先には春の陽光に輝く東京湾が見える。こんな開放感あふれるスタートアップ・イベントは珍しい。

半円のドーム「ホワイトロック」で行われるキーノート・ステージではスピーカーは全員英語でスピーチする。それが「SLUSH ASIA」では当初から譲れないポイントのひとつだったそうだ。

たしかに英語が苦手な人には準備が大変だ。しかし、自分たちのサービスや製品を日本のスタートアップが世界に広めようと思ったとき、国内だけではまだどうしても資金調達の規模が小さいため、自然に海外の投資家にプレゼンする機会が増えてくる。その時には自分の考えを臆することなく英語で説明する必要が出てくるのだから、そのための前哨戦や練習の場として「SLUSH ASIA」が持つ意味はこれからどんどん増してくるだろう。

キーノートステージで彼らからのパッションを受けとめたオーディエンスは、その後、晴れ渡った青空の下でスピーカーへの疑問を直接本人にぶつけたり、肩の力の抜けた世間話も自由に出来る。

Photo by Ray Yamazaki

開放感あふれる屋外の一方で、「ホワイトロック」で9:00から16:00までまったくといっていい程休みのないまま続くキーノートは圧巻のひと言。スピーカーの方々から受ける刺激とアイデアを消化しきれないまま次が始まってしまい、その飽和状態に軽く酔いやめまいを覚えつつ、たまたま知り合った人たちと話が弾むのがすごく気持ち良い。


当初「SLUSH ASIA」は国技館で開催する予定だったそうだ。それが、既に国技館は他のイベント等で埋められていたため、青海駅から徒歩30秒の青空の下で開催することに。「わずか数ヶ月でここまで作り上げられるのか」それが正直な感想だった。とても今年が初めてとは思えない。

Photo by Ray Yamazaki

ボランティアは細かいところまで、オーガナイズされていて行き届いているし、会場は白を基調にしたシンプルでクリーンなトーンでまとめられつつ、各所に人が集まるスペースが用意されていて居心地がいい。ピザにカレー、スムージーにガパオ飯、クラフトビールまで、フードやドリンク類を用意したフードトラックが充実している。

Photo by Ray Yamazaki

展示やキーノートのメインステージになる「ホワイトロック」は半円状のドーム型。この内部は360°のプロジェクション・スクリーンになっている。このスクリーンでは通常SLUSH ASIAのロゴをバリエーション豊かに流しているが、ピッチコンテストの直前にはデモンストレーションとして宇宙から見た地球や銀河そのものの様子が見られた。

なんでも海外でも「ホワイトロック」をイベントで使うことはあるそうだが、5つ同時に設営するのはSLUSH ASIAが世界でも初めてだそうだ。バックミンスター・フラーという建築家・哲学者が考え出したアイデアを、国技館が使えないという不運を逆手に取って、個性に変える「SLUSH ASIA」のクリエイティブな手法は驚かされる。


これら全てを3カ月で仕上げたAmano Creative Studio Inc.や関係者の方々の苦労には頭が下がる。ただ、その甲斐もあって今年は約3,000人規模だったが、来年は10,000人規模になるそうだ。チケットがすべて完売した今年からすると、来年も盛り上がりが期待される。

EDMフェスがブームな昨今だが、スタートアップ・フェスがクールなイベントとなる日も近いかもしれない。EDMであれスタートアップであれ、それぞれのイベントが持つ「コミュニティー」の個性、そこに向かう関心と知的好奇心が我々に新たな世界を見せてくれる点では同じだ。

Photo by Ray Yamazaki

新たな世界を拓くには、外に出かけなければならない。だが、そこでは出会いが必ずある。それは時にアイデアであり、また別の時には新たな友人のこともある。その出会いこそが我々の人生を豊かにするのだ。

「SLUSH ASIA」は、最新のトレンドや情報を摂取するために講演を聴きに行く受け身のイベントではない。参加者こそが主役なのであり、ボランティア、投資家、スタートアップ、スピーカーたちが近い関係で築くコミュニティーにこそ価値がある。

来年さらに大規模になる「SLUSH ASIA」が早くも待ち遠しい。

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