フリーランスになってから5年経った

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まだiPhone7も発売されていない5年前の2016年6月1日、個人事業主として開業しました。それ以来なんとかやっている間にもう5年が経過していました。

会社員とは違った立場なりに苦労したことも多くありますが、このタイミングでこれまでのフリーランス活動を自分なりに振り返ってみることにします。

なお、退職エントリ的な雰囲気があるかもしれませんがとくに廃業するわけではありません。たんなる記念碑的な駄文です。

5年間の活動概要

契約内容:

  • 契約社数:8社
  • 契約経路:エージェント経由(5社)、直接取引(3社)
  • 契約形態:準委任契約、フルタイム(140~180時間/月)
  • 契約期間:1ヶ月〜12ヶ月(平均6ヶ月程度)
  • 参画時期:サービスイン前(4社)、サービスイン後(4社)

※契約者数は常に1社であり同時並行の案件はありません

開発内容:

  • サービス提供先:コンシューマー向け(4社)、企業向け(4社)
  • 開発言語:Go(6社)、TypeScript(2社)、Ruby(1社)、JavaScript(1社)> Python(1社)
  • プラットフォーム:Webサービス(5社)、ネイティブアプリ(3社)
  • 担当領域:バックエンド(7社)、フロントエンド(3社)

※1社で複数該当する場合があるため、合計は8になりません

時系列×担当分野別にプロットするとこうなります。記憶があいまいで若干怪しい記述もありますが。。

5年間でやってきたこと

売上:

具体的な数値の言及は避けますが、売上は5年で+50%成長しました。エージェント経由から直接取引に変わったのが大きな要因であり、エージェント経由の期間だと+20%でした。マージンの存在は大きいです。なお、積極的に売上を上げるための何らかの具体的な戦略をとっているわけではなく、案件で実績を積むほど次の金額交渉に強くなるという事だと思います。もちろん、契約先の経営状況にも大きく依存するでしょう。

フリーランスを5年やってみた感想

これまで一貫して準委任契約によるフリーランスエンジニア(以降「業務委託」と呼びます)として活動をしてきましたが、振り返ると色々思うところがありました。具体的な技術スタックの視点は抜きにして、純粋に業務委託として活動するなかでの経験談と感想を書いてみます。

エージェントの強みはどこにあるか

第三者であり中立的な立場である事がエージェントの強みだと考えます。

初期は案件を探すにあたり伝手もなく、エージェントに頼る他ありませんでした。その後も何度か新規契約にかかわる諸々の活動のサポートをして頂きましたが、案件データベースの規模・営業活動のサポート力・企業との交渉力等についてはとても頼りになる存在でした。そういえば開業当初、エージェントからフリーランスの交流イベント等に何度か招待して頂きました。WBSが取材にきているイベントでインタビューを受けたこともありました。懐かしい思い出です。

また、契約期間中も定期的に先方へのヒアリング実施と業務委託へのフィードバックをしてくれました。それによって企業と業務委託の互い要求を定期的に確認・調整することができていたように思います。逆に、エージェントがいない直接取引の場合は、そのような働きかけを主体的にしないとイベントが発生しづらいかもしれません。直接取引の場合は自ら主体的にそのような場を要求していなかったので、客観的な評価を頂く機会が減ったような気もします。

一方、月々の請求作業などは自分でもできるので、毎月マージンが取られる方式に対しての納得感は少々薄いです。月額のマージン減らして営業活動費用を別途支払うプランがあったら嬉しいかもしれません。(それはそれで足元見られそうですけど…)

営業活動をどのように行うか

新規契約先を探すときは当然ながら営業活動が必要となります。

商談の回数は1社につき1~2回でした。なかには企業側が担当を変えて2セッション、というパターンもありました。複数セッションだと時間が長引きがちで、終わった後は疲れ切っていることもありました。

なお、配属予定のチーム関係者が商談の場にいない案件は避けたほうが良いと思います。実際の現場の話を聞くことは参画後のギャップを埋める上でも重要だからです。

バックオフィス業務を負担に感じるか

バックオフィス業務に追われることは多くありません。

最初の確定申告のときは事前準備に追われましたが、その後はある程度心の準備ができていたので焦りはありませんでした。

利用しているサービスは、契約関連ならクラウドサイン、収支の管理はクラウド会計、確定申告はクラウド確定申告とe-Taxです。今ではオンラインで行えないことはほとんどなくなりました。

会計の勘定科目や契約の知識に戸惑うこともありますが、たいていの事は乗り切れます。

契約期間に上限はあるか

案件と企業の状況次第ですが、1年程度が上限ではないかと見ています。

契約は基本的に3ヶ月ごとの定期更新の形式をとることがほとんどです。この場合双方どちらかが提案しない限り自動延長のような扱いとなります。

企業が業務委託を探すに至る理由は様々あると思います。開発リソース拡充が急務であった、人件費が余っているが中途採用はすすんでいないのでとりあえず、ジュニアエンジニアのメンターが欲しい、等々。そうはいっても先述の業務委託の採用理由となる状況も一定ではありません。1年ごとに事業計画の見直しもあるでしょう。

そういった様々な企業活動の結果、業務委託との契約を見直す(契約終了)となる事例は、世の中にきっと多く存在しているのではないかとみています。

正社員に比べると予算や事業方針の変更の影響を受けやすいのが業務委託だと言えるでしょう。正社員でも部署異動はあるので広い意味では両者とも似ているかもしれません。

案件は平行すべきか

人それぞれでしょうけど自分は1案件に集中するほうが向いていると思っています。

単にマルチタスクな人間ではないというだけなのですが、1つの案件のみでもタスクや課題に事欠きません。むしろ様々なことに気を配ることのほうが非効率と言えるかも知れません。また、契約関係などの面倒事を減らす意味でも案件の平行は必須ではないように思います。

もちろん、平行していれば突然の契約終了時にも他の収入源が残っているというメリットはあると思います。

所属チームでどのような活動が可能か

契約時に自分のスキルセットを提示してお互いの需要と供給のすりあわせを行うため、基本的には自分がやりたいことができます。Goを書きたいならGoの案件を探して契約するのみです。

チーム内で求められる働きはそれ以外にも様々発生します。未経験分野でも取り組む価値が見いだせるなら新たなスキルの習得は決して無駄ではありません。しかし、チームで求められるスキルを新たに習得したとして、次の契約先でもそれを活かせるとは限りません。どこまで自分のスキルセットを広げるか、もしくは範囲を絞って深堀りに徹するか、戦略はそれぞれです。

この点については契約時もしくは定期面談時に境界の線引きのすりあわせは必要なのかと思いつつ、まだそういった動きができていないのが現状です。

業務委託と正社員の境界はどこにあるか

よくわからない、というのが今の正直な回答です。

まず、時間的な自由度はさほど高くありません。よくある「フリーランスは好きな時間に仕事できるんでしょ?」というのはほとんどの業務委託にはあてはまりません。チームに所属してメンバーとともに仕事をするので、常に単独で自由に動けるわけではないからです。休日も企業の方針に合わせることになります。

一方、場所的な自由度はどうでしょうか。私は2018年頃から、週2~3日程度リモートワーク可能な企業を中心に案件を探してきました。実際そのとおりに週に2~3日は自宅で業務をしていました。ですが、その後は誰もが知るとおりの世の中になりました。2019年末からの未曾有のパンデミックによって多くの企業が部分的もしくは完全なリモートワーク体制へと移行しました。Web業界ではその例がほとんどでしょう。そうなってしまえば場所的な自由度について業務委託と正社員との差はありません。

有給休暇等の福利厚生も正社員のほうが充実していますし、雇用も守られています。昨今の事情で在宅業務グッズの購入補助等もあるでしょう。もはや業務委託の良さは皆無にすら思えてきます。

また、「チームのメンバーではあるけど正社員ではない」という中途半端な立場故に困ることも少なくありません。それでも私が業務委託を続ける理由は、下記のような点にあるのではないかと考えています。

  • 所属を定期移動することでスキルの社会的価値を客観視できる
  • 様々な開発現場の良さや課題を体験し学ぶことができる
  • 自らバックオフィス業務を行うことでお金の意識向上をはかれる
  • 面倒な社内イベントから開放される

とはいえ、そばで見ていて正社員羨ましいなぁ…と思うことも少なくないので、1年後にはすっかり気が変わってるかもしれません。

まとめ — フリーランスとしての今後

正社員として1社に腰をすえて取り組んでみたい思いもあります。いつかはふたたび正社員。ですがおそらくあと1〜2年くらいはフリーランスをしていると思います。もちろん、いい会社が見つかれば転職するかもです。

なにか良いお話あればぜひ頂きたいです。

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Masaki Yoshida

Elastic Yak Shaver. Usually write a program in Go and TypeScript.