簡単なカラスミの作り方

「年末年始にうまいものをたらふく食いたい」

会社員のときから毎年それだけを楽しみに12月を過ごしている。
毎年蟹や牡蠣などの魚介やいい牛肉を仕入れたりして数日分の料理を作り、大晦日から正月三が日をダラダラと過ごすことをここ数年続けている。

今年はなに作ろうかなと思ったときに、そういえばうちの事務所は日当たりもよく風通しもいいので干物が作れるぞ!と思い、(Instagramのストーリー機能で日々あげているので知ってる人は知っているけど)10年ぶりくらいにカラスミを作っている。

簡略化した方法でも手間は多いけど、意外と簡単で十分おいしいので、よかったらどうぞ。

はじめに

カラスミとは日本三大珍味のひとつであり、特に国産の完成品は非常に高価です。
この記事ではそんな高級珍味をご家庭で、食材原価のみで楽しむことをゴールにしています。
なお、店や作り手および食材個体差により工程の差異があることと、家庭向けに適当・簡略化をしていますため、「これは違う」などの意見は受付け兼ねますので予めご容赦ください。

STEP1:ボラ子(ボラの卵)を買いましょう

「ボラの卵なんてどこで売ってるの?」という点ですが、この時期に市場にいけば必ずあります。

「市場にいくなんてハードル高い!」って思うかもしれません。そうしたら、下北沢のオオゼキにいきましょう。この時期はほぼ毎日売っています。(私はもちろん、下北沢のオオゼキで買いました)

STEP2:血抜きをしましょう

まず、ボラ子の表面にある血管を、針でぷすぷすと刺していきます。枝分かれしている血管ごとに小さいもので最低1箇所、長いor大きい血管は複数数カ所刺します。血管のみ刺すイメージです。深く刺しすぎると破れるのでお気をつけください。
竹串などでもいいですが、マチ針が一番やりやすいです。また、ボラ子を買う時に血管少ないのを買うと非常に楽です。

そこまで終えたら、たっぷりの氷水にボラの卵を入れて冷蔵庫にしまってください。氷水にいれることで、穴の空いた血管から血が出ていきます。

だいたい24時間くらいです。その間に何回か水を取り替えてください。(取り替える際は容器含めて取り替えると仕上がりに臭さもつかずいいです。)

STEP3:塩漬け

血をきれいに抜いたボラ子がこちら。

血管から血が抜けきり、表面がツルツルです。
こいつを塩漬けします。塩は精製塩はなるべく避け、化学調味料が入っている味塩はぜったい使わず、粗塩のほうが仕上がりがいいです。これで仕上がりの味がかなり決まるので、粗塩のなかでもなるべくいい塩を使うのをおすすめします。

塩漬けの理由は防腐と味入れの2つが目的です。
塩の味はご存知のとおりですが、塩の作用で食材の自由水を無くし結合水にすることで殺菌+抗菌(繁殖しずらい環境にする)状態にします。
料理はいろいろ合理的な科学の世界でもあるのです。

塩漬け初日、数時間後でこれくらい水がでます。塩漬けにより出てくる水分はあまりいいものではないくらいに考えて、初日は水が溜まったら塩をタッパごと交換、二日目以降も最低1日一回取り替えます。
取り替える際、ボラ子についた塩もしっかり落とすといいです。特に初日は水分が多いので、塩とタッパを交換する際はボラ子を流水でサッと流してよく水気を切ってから新しい塩に入れるなど、丁寧に扱うといいです。

これを1週間続けるとこうなります。店によってどの程度の塩漬けを行うかはそれぞれありますし、何よりボラ子の個体差によって期間も変わってきます。塩から出した時の硬さなどで判断します。下の動画のボラ子は割と大きいもので、かつまだ少し弾力残ってたのでこの段階からあと2日漬けました。

STEP4:塩抜き

塩漬けが完了したら、水に漬けて塩抜きを行います。さて、「塩に漬けたのになぜ塩抜きをするの?」という疑問があるかと思います。

まず先に書いたとおり、塩漬けは殺菌・抗菌のための肯定で、その作用は細菌が活発になる自由水を取り除き食材の中身を結合水にすることにあります。塩は浸透するものなので、中心にいくにつれて塩分濃度も異なります。
つまり塩抜きは、塩味を全体にまわすことと、防腐効果を保たせることの二つを目的にしています。

その目的を達成するために浸透圧とかの細かい話も含め、真水ではなく薄い塩水で塩抜きを行います。ちょっとしょっぱい塩水でだいたい1日〜2日、その間に3〜4回くらい目安で塩水を交換してください。

※この工程の動画や写真を撮り漏れてました

STEP4.5:酒漬け

この工程は有無どちらでもいいです。酒漬けをしない店も多いです。
諸説ありますが、仕上がりがまろやかになりますので、私は酒漬けもやります。

なんの酒を使うかも諸説あり、ワインを使うという話も聞いたりするのですが、個人的には日本酒がおすすめです。焼酎は完成後の日持ちよさそうですが、焼酎独特のエグみがでるので好み次第だと思います。

つける期間も好みで、私は香りづけくらいなので1〜2日であげますが、1週間つけるとまた違った仕上がりになります。

酒漬けでも重要なのが、酒に入れる前にボラ子の水気を一度よく拭き取ることです。工程ごとで丁寧に行うのが仕上がりや日持ちが大きく変わります。

STEP5:天日干し〜完成

弾力はあるけどサイズは元に戻ったなくらいを目安で塩抜きは完了。このみで酒漬けを挟みつつ、いよいよ天日干しです。

バットなどの底がある容器に巻き簾などをかまし、日中はなるべく日光の下に置き、日が暮れたら冷蔵庫に保存をします。最初の数日は表面に酒を塗ると防腐になります。特に身がついている根元の部分は傷みやすいので注意してください。

1週間経過すると、ボラ子が「カラスミっぽく」なってきます。が、まだ我慢。この工程は最低でも2週間は必要です。

1週間くらいすると全体がだいぶ乾いてるので、根元についている身を包丁などで取ります。取らないと根元部分の卵が乾燥しないし食べる部分でもなく生臭さの原因になるため、必ずとった方がいいです。(ある程度乾く前にとると、卵巣がつぶれたりしますのでご注意を)

そしてついに!2週間くらいたったら味見してみます。

\おいしい/

カラスミを完成させるには、簡略化をしても3〜4週間かかります。
でも、包丁や火加減などの経験が伴う調理技術は一切必要がない極めて簡単な工程ので、手間さえ惜しまなければ誰でもカラスミが安価で楽しめます。

今から年末年始には間にあわないですが、今年の休暇は長めなひとなら間に合うかもしれないので、ぜひ急いでボラ子を買って作ってみてください!

言いたいこと。とにかく料理はたのしい。

私は、料理とは「神は細部に宿る」世界だと思っている。

少し前に寿司の調理技術に特化した専門学校で3ヶ月学んだ寿司職人が、わずか11ヶ月でミシュランをとったことが話題になった。
もちろん、特定の調理技術だけであれば短い時間でマスターすることができると思います。(私も卵巻くのと肉焼くのだけは場数があるので比較的上手)
しかしながら、調理は科学であり、こんなシンプルな作り方のカラスミでさえすべての工程にここまでの理由と意味がある。調理とは学問に近く、積み重ねがものをいうところが多いと思う。

食材に対して包丁を入れる角度、火加減、塩加減、その他調理工程のすべてが偉大な先人たちの失敗と成功、研鑽の積み重ねにより合理的に構成されたものが現代に伝えられているわけである。

そんなことを考えながら、ふらっと入った居酒屋で食べた美味しい料理はどうやって作っているのかを考えて、お店のひとに聞いてみて、それを家で試してみて、上手にできたらおいしくてうれしい。

言いたいこと。料理はとても楽しい。