ドワンゴでのサマーインターンのメンターを終えて

或いは Mastodon のプロデューサーとして考えている事

どうも宇宙海賊合同会社のロージーです。最近はハト先生やハトの人と呼ばれることも多いです。ハトなのかヒトなのか、世の中は難しいですね。

宇宙海賊合同会社は請負開発会社を主軸にしているものの、リソースと職能さえマッチすればなんでもやるという方針なので、クライアントからのご要望にお応えして、普段と違う仕事をするときもあるのですが、その中で案外多いのが**のプロデューサーみたいな、Web サービスの企画や意思決定のお手伝いです。

すげーコンサルっぽい仕事なので、字面だけ見るとあまりいい印象がない業務なのですが、所謂想像上の『悪いコンサルタント』にならないように、請け負った際はそれに付随する事柄をなるべくすべて面倒見ることにしています。

そんなプロデューサー業の一つに friends.nico のプロデューサーというのがありまして、だいたいの責任を背負う代わりに、概ね自由に friends.nico という巨大な Mastodon の管理、運営、調整をやらせてもらっています。

意思決定機構についてはまた今度上野か浅草の立ち飲み屋でお話するとして、そんな friends.nico を利用して、ドワンゴさんのサマーインターンを実施したい、とのことでお話が来ました。

へー、いいじゃないですか。friends.nico としても協力しますよー。って話までは特に何もなかったんですが、ドワンゴさんが構えてるメンター陣がエンジニアのメンターさんばかりだったので、それだと『何か作るぞ』の『何か』を考える手伝いをしてあげられる人がいないのでは?って聞いちゃったんですよね。

昔の人は言いました。雉も鳴かずば撃たれまい。僕は鳩ですが、鳴いたので「確かにそうですね」となり、トントン拍子にサマーインターンの企画メンターを拝命したのでした。

そんなサマーインターン、一ヶ月刻みの2期を実施し、光景も2期分ブロマガに上がっているので、出来れば以降の内容を読む前にご一読ください。

インターン各位のお陰で、 friends.nico にユニークな機能がいくつか追加されました。驚くべきは、(雇われの)責任者として成果物の投入を決定することはないだろうなと、学生に対して半ば斜に構えていた僕が「面白い」「最高」「めっちゃいい」と手放しに褒めていくつかの機能の投入を決意させられたというところでしょうか。いやはや、感服しました。

学生さん達の頑張り様は伝わったとして、メンター、特に企画をレビューし、企画の立て方を考える人間として、どういうアドバイスを行ったのか、しかして企画のメンターとはなんぞや、というお話をしたいと思います(ここまで前置き)。

Mastodon におけるプランナーの価値

friends.nico は現在、僕をプロデューサーにおいて、他エンジニア数名で回っています。所謂技術畑ではない担当の人間が僕しかいないので、プラニング、つまりは企画も僕のお仕事です。

とはいえ、 friends.nico の礎となる Mastodon 本体は OSS のプロダクトでから、 Mastodon と真っ向からかち合うような企画を立てたところで、うまくいくはずもありません。例えばなんだ、タイムラインに広告を流す、とかですね。一瞬お金欲しさに考えてはみたんですが、コミュニティを壊して結果的にその広告を見る人を減らし、サービスの衰退を招くだけだという結論に行き着いて断念しました。

Mastodon は脱中央集権型 SNS を名乗るだけあり、フォロー関係の移行についてはごくスムーズに別 Mastodon へ移行することができます。なんせエクスポート機能がありますからね。エクスポートとして移行先でインポートするだけで、いつもの Home タイムラインが完成する。依存させるには厳しい点です。

しかし、 Home タイムラインとは別に、各インスタンス内での全書き込みが流れる Local タイムラインという区分のタイムラインがあります。現状、多くの小規模 Mastodon はこの Local タイムラインの空気感で差別化されている節があり、各 Mastodon 単位で小さな村が発生しているような状態を想像してもらえれば、理解も容易いかと思われます。

各種追加機能も、カスタム要素も、すべてはこの Local タイムラインを彩る為のきっかけづくりや仕掛けの一部として動作するものだと割り切ってしまうのが簡単です。『独自機能があるから流行る』などという幻想は捨てましょう。『良いものは売れる』くらい幻想です。『独自機能 A によって B という文化や空気が生まれて Local タイムラインが活性化する』という副次効果が望めないなら、それは Mastodon において無意味な追加機能だと判じてもいいぐらいだと思っています。

まずはこの『機能によって行動が変わる』という点を学生さんに理解してもらうのが、僕のメンターとしての最重要かつ最初のミッションでした。

こういう機能があると、こういう使われ方をして、こういう空気になるよね、というのを考えましょう。作ってから使われるまでを考えて、それを貫徹できる仕組みにしよう。と口を酸っぱくして言い続けた覚えがあります。なお、こういう事柄を表現する際に僕はよく「世界観を持て」というのですが、言い過ぎた結果、学生がやたら『世界観』と言うようになってしまい、ちょっと頭を抱えたりしました。

この部分において最も優秀かつ的確な回答を見せたのは1期のアンケートチームではないでしょうか。

40%ぐらいの人が僕はビールを飲むべきだと思っている(ホントかよ)

friends.nico に導入されたアンケート機能は、4つの選択肢を入力出来ますが、いくつ選択肢を入れても、必ず最後に1つ 🤔 の選択肢が追加されます。

これは不本意なアンケートに対して『答えない』ことで母数から排除されるのではなく『答えない』『答えたくない』という意思表明のための選択肢を必ず用意する、ということです。

アンケート、投票や集計は、悪魔的な魅力を持ちます。なんらかの勢力を二分化するであったり(きのこ vs たけのことか)、恣意的な選択肢によって総意を歪めた形の集計を取る、などですね。

そういった(根本的な)意図としては真剣な使い方をするなら、世の中にはもっと良いツールがあります。 friends.nico に必要なのは『それを使って面白く遊べるか否か』です。

故にアンケートチームへのフィードバックは常に端から聞けば荒唐無稽なものだったと思われますが、彼らは意図をよく理解して企画、設計、実装をしてくれました。

やれ「数字をまともに集計するのやめて丸めてしまえ」だの「〜〜未満っとかやめて適当な文言にしよう『ぐらい』とか『ちょい』で良いんじゃない」とか「流速を鑑みるに、どうせ15秒もタイムラインに居座れないから投票期限1分くらいでも長いと思うよ」とかですね。

おおよそまともなアンケート機能を作ろうとしているフィードバックではないですが、我々が作ろうとしていたのは『アンケート機能があることで今とは違った遊び方ができるようになった friends.nico』なので、これでいいのです。

コミュニティマネージャーとして

friends.nico であれ、場末の BBS であれ、飲み屋であれ、人が集まるところにはコミュニティと呼ばれる集合体が形成されます。

プロデューサー業を請け負って30分後に僕が決断したのは、目を引く新機能や実績の構築ではなく、このコミュニティの保全、維持でした。幸い、僕が着任した 6/1 時点で、創設メンバーのエンジニアが積極的に利用者さんと一緒になって遊んでくれていたお陰で、よいコミュニティが形成できていたのもあります。

SNS サービスは究極的に人が居るかいないか、居心地が良いか悪いかがすべてです。人がいるという点に於いて Twitter に勝る短文 SNS はそんなにないと思いますが、どうしても最近はある程度の居心地の悪さが拭えず僕自身足が遠のいてしまっています。空気感や居心地は、時に参加人数を超えて所属決定の重大要因になるというのが、僕の持論です。

かといって、人が少なくてもいい訳ではありませんから、そこはまた別途考える必要が出て来るわけですが、基本的には類が友を呼ぶ、ということで、今の空気にある程度賛同できる人だけで構成されていいかな、と思うことにしています。八方美人で精錬潔癖なコミュニティは、ある種の高貴さが常に要求されるものですし、高貴さを維持して適当なことを短文で言うのは難しすぎます。

幸い、 Mastodon は脱中央集権型なんですし、所属コミュニティの決定権は従来より大きく利用者側に存在するのです。であるならば運営者として重視すべきは、今どんな人達がいて、どう楽しんでいるかを理解することです。今時のゲーム事情を知らない人がゲームコミュニティを運営できないように、今時の TL を知らない運営者に Mastodon は運営出来ないだろう。と思っています。

※ 上司向け: 決して日々 friends.nico で面白おかしく遊んでいる言い訳ではありません。本当に業務で必要だと思っているからです。いくら酒の写真が多くても許してください。本当です。

そんなコミュニティマネージャーも兼任する立場として、インターンメンバーの企画へフィードバックする際にどうしても欠かせないのがある程度以上存在する『悪意』の話です。

世の中には「すべての人が正しく使えば全員が幸せになるが、5人が悪用する前提が付くだけで全部が台無しになる」という物事が多くあります。

メールでの広告を例に取ってみるならば、すべての広告メールは送りすぎることなく、自動で購読されず受信者自らの意思で選び受信し、受信者の興味に寄り添い、常に最良の自信ある製品だけの広告が配信されるなら、受信者も強い興味と関心を持ってそれを受け入れられるのでしょう。そうはなっていませんが。

悪意的な使われ方の例をフィードバックすることで、そういう使い方をしにくい様に適宜調整する、という作業も多く検討してもらいました。

これから Mastodon を運営して独自機能を追加しようとしている方へのアドバイスですが、僕程度に性格の悪い人間を1人側に配置しておくことをオススメします。

悪用された機能はどうしても以後イメージが悪くなります。それがリリース直後ならなおさらです。利用者の間でデファクトな使い方が構築される前にいたずら者の手に渡るといたずら用機能としてしか認知されない可能性が高まります。

SNS は利用者が大事と謳って置きながら利用者を疑うのかと謗られるかもしれませんが、残念ながら日々使ってくださっている利用者さんだけで登録済みアカウントが構成されているわけではありません。最終的に利用者さんの利益になるならいくらでも性格の悪いことを考えるつもりですし、そうすべきだろうというのは過去のインターネットの歴史を鑑みても妥当だと同意していただけるのではないでしょうか。

コミュニティマネジメントの真髄は僕もよくわかっていませんが、何人か参考にしたコミュニティマネージャー達の言動や振る舞いを見るに、信頼と期待、そして猜疑心は同時に存在させるべきだと判断しています。機嫌の悪い時、僕が誰かに当たり散らししまうことだって過去あったし、きっと今後もあるだろうという前提に立つならば、利用者さんがたまに悪魔的であったとしても、何らおかしくありませんからね。

つまり何をしたのかと言えば

なんでしょうね……基本的には考え方や捉え方の大枠や基礎を教えて、考えてもらったことに適宜ガイドや忠告を出し続け、最後には文句つけまくった人、というのが妥当な評価ではないでしょうか。

具体的なコードレビューや設計のレビューといった形で表現し易いエンジニアリングの実装段階のメンタリングと違い、企画面のメンタリングはどうしても精神論や認識の差異が原因に陥りがちです。

特に常道や正道が確立している道とも思えませんから、基本的には自分が何を考えているのか、悪いと思っているならどこが悪いと思っているのか、良いと褒めているとき、何を指していいと褒めているのか、などなどの自分の頭の中や感情の動きを徹底的に言語化して伝える他ありません。

あとこれはあまりにも面白い企画が出てきたが故の事故ではあるのですが、インターン生達をお客様扱いで腫れ物として扱わず、ダメだと思ったらダメですというのは容赦なく伝えました。だって、そこでなあなあに投入して迷惑被るの、僕だけじゃなくて friends.nico 利用者のみんなですから。容赦してる場合じゃありません。

とはいえこのガンガン文句つける点についてはなぜかインターン生達から好評だったので、まぁ結果オーライでしょうか。「本当に真剣に考えてもらっているみたいで嬉しかった」と言われましたが、真剣に考えてくれない企画者の話聞いちゃダメですよ、若者諸君。

僕は元々エンジニアだったので、本業でずっと頑張っているプランナーの方に比べれば一枚も二枚も落ちるのですが、少なくとも friends.nico のことについて地球上で一番真剣なのは僕ですから、そこのメンターとしてきちんと参加できたのはありがたかったです。言い出しっぺがやるものとはいえ、急にインターンシップに組み込んで頂いたドワンゴさんには感謝の念が絶えません。今後ともよろしくお願い致します。

至らないメンターではあったかと思いますが、今後の人生で何か一瞬でも役に立つ経験として持って返ってもらえたらなら、それに勝る喜びはないです。インターン生諸君、お疲れ様でした。またどっかで仕事できたらいいですね。マジで。ウチとかどうですか。マジですよ。どうですか?

ここまで読んでいただいて、宇宙海賊合同会社とのお仕事にご興味持っていただけましたらお気軽にご連絡ください。あなたのお仕事、海賊が奪いに伺います。

Captain of Space Pirates, LLC.

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