Mastodon を見て感じたこと

或いはどう始め、続けていくべきか

rosylilly / Sho Kusano
8 min readDec 24, 2017

12/24 の記事です。例に漏れず遅れた。

Mastodon が流行し、この世に新たな選択肢が増えたことが、いかに美しく、いかに尊いことであるかについて、改めて語るべくもないことであろう。しかしてそれは逆に捉えれば僕が絶望的な気持ちになるほどの出来事だったのだという前提も含め、今一度少しだけ駄文に付き合っていただきたい。

スタックから見る Mastodon

Mastodon を構成する技術スタックは、得も言われぬほどモダンで、現代的で、クールなものだ。

フロントエンドは webpacker と React で構成され、バックエンドは最新の Rails が唸りを上げ、適切に肥大化する Rails への処方箋というべき gem が導入され、 WebSocket がストリーミングをする。その上 Docker に乗っててポンとデプロイできる。

はっきり言おう。業務でこれを作ってポンと出すやつがいたらソイツの胸ぐら掴んで小一時間問い詰めるレベルだ。悪いと言いたいんじゃないまだ早いと言いたい、という意味で。

もちろん、動く、動くのだ。確かに動くのだ、それらのスタックは。しかし新しすぎやしないか?いろいろ切り捨てた結果になっていやしないか?それで本当に動き続けてくれるか?……人は大人になるにつれてある程度の保守性を身につけるものだが、正直、これを考えた時自分を恥じた。俺は、俺はもう、こういうこと言って若者の敵になる側なのか、と。

「枯れた技術の水平思考」は横井軍平さんの金言であるところに間違いないが、「枯れた男の保守思考」はおそらくこういったサービスを生み出すことはないだろうと断言できる。もしも、もしもまかり間違ってヨッシャー SNS 事業でもやるヵーと思いついたとて、明らかにもっと違ったものを生み出すだろう。

技術スタックを見るだけでそう思うのも不思議な話ではあるのだが、実際そう痛感してしまったものはしょうがない。あの瞬間、たしかに僕は Mastodon をコントロールすることを諦め、正しく成長と維持を行うための環境整備にのみ尽力し、若い人々(感性の話だ)が打ち立てた方針を信ずる他なしと断じたのである。

デザインから見る Mastodon

Mastodon は TweetDeck を由来とする、マルチカラム型の UI と、可愛いゾウのイラスト、クールなダークテーマのカラーリングを持って、世に迎えられた。

GNU Social が流行らないのはなんでだーとか、 Pleroma の方が性能がーとか、いいたくなる気持ちをすべて蓋してはっきり言うなら、そらもうカッコイイ UI があるサービスの方がカッコイイからである。解像度とかゴミみたいなレベルだしフィルターの程度も大したことねーけどみんな Instagram に夢中だろ!?そういうこったよ!!

GNU Social の公式ページに至っては Twitter Bootstrap そのままみたいな世界観ですらある。

2017年の Web サイトではない
明らかにデザインリソースがつぎ込まれたとわかるこの画面よ

Landing ページだけではない、アプリケーションのデザインだってだいぶ違う。もちろん、カスタムすれば変更できるが、一体誰が他人のサービスの UI をすべて組み直してまでやりたいと思うところまで到達できるだろうか?そして、もはや Web サービスを OSS で作って一発当てるというのは、こういったデザインリソースを確保できるのか?という問いが付随するという証左でもある。そんな、そんなのって!ありかよ!

もはや認めるしかないのだ。オイゲン氏にはその能力があり、我々にはない。選択肢は「フォロワー」で居続けるか、個人で能力がないならチームを組んで大戦争、ソレ以外ないのだ。

導入(して|まで)楽しいアプリケーション

テクノロジーもイケてて、デザインもクール、そんなアプリケーションが無料で配布されてて、しかも自由に建てて改造したっていい。正直バカげた話である。そんなこと起こるはずがないと、2016年の僕なら思うだろう。しかし、今や 2018 年も目前。現実を直視しなくては五輪を見る前にご臨終(激ウマギャグ)になってしまう。

管理者がホビーとして建てたアプリケーションがかっこよくてなんか人も使ってくれてサービスが大きくなっていって嬉しい、みたいな正のループが最初期に続きやすいのが、 Mastodon の特徴の中でも特に幸福を生みやすいシーンだろう。

しかし、コミュニティは内部の人数が増加すれば煮詰まってくるのが常であったり、人が居着かないことで寂寥感を覚えたりと、あっちもこっちもままならぬ、続けることこそが絶望的に難しいサービスでもある。

たとえば運転資金。例えばトラブル解決、例えば……とキリがなく、おそらくこの文章は今から Mastodon を建ててやっていこうと思った諸兄の気勢を削ぐものであろう。

僕は連合 TL が大賑わいであることに一切の価値を覚えないタイプの管理者ではあるが、連合 TL が賑わう事それ自体はいい方向性だと思っているのである。発信元が増やせるならば、それに越したことはないのだ。

ということで、「ぼくのかんがえたさいきょうのますとどん」を書いて〆にしておきたい。

続いていくために

今考えている、 Mastodon を立ち上げる時のベストプラクティスは、2人組で立ち上げることだ。費用については(ほぼ間違いなく)二人で折半しつつ、メインエンジニアと、ユーザーと対話する係のフロントマンが必要だと思っている。

もちろん一人二役をこなす人に異論はないし頑張って欲しいが、結構大変なので、持ち回りでもいいから二人いたほうが良い。また、資金も1人だとトラブル1つで乗り越えられず閉鎖に至るが、2人なら一時しのぎは効くだろう。

インフラ構成は好きにするといいと思うが、悪いことは言わないので素直に AWS か Heroku に乗せておけ。気合と根性、技術があるなら VPS で頑張るのを止めはしないが、運用コストは低減できるところまで引き下げきったほうがよい。上手い構成が思いつかなければ既存インスタンスの管理者に相談するとよい。皆快く回答してくれるはずだ。

資金は Enty などで集めることに異論も批判もないが、それを当てにするのはやめておくべきだ。コーヒー代になったら万歳ぐらいの気持ちでいよう。その上で、君たちが回していける代金がすなわちキャパシティだ。このキャパシティは「何人同時に」「どういうペースでの書き込み」を捌けるかに直結する。気をつけておくように。

カッコイイ ChatOps を実現しろとは言わないが、再起動くらいはスマホからでもできるように設定できているとベターだ。想像を絶するほど不安定な時が発生し、再起動一発で直ったりする。正直信じがたいが、直るならそれでいいのだから、それでいくべきだ。

監視設定は「うるさくなったら削る」レベルで増やしておけ。Mastodon は現状攻撃に対して異様に弱い。そして攻撃者は『君たちのサーバーを攻撃していない』時すらある。 FTL の弊害ではあるが、留意しておくように。

司法や悪行の判定については独裁者を気取った方がいい。全員の納得感より一人の一貫した決定の方がマシだ。 friends.nico は残念ながら企業体なので独裁者という訳にもいかないが、ポリシーを明示しないのは明示するリスクの方が高いと判断したからだということを知っておいてもらいたい。 ProTips: ルールは必ず破られる。

……ざっと思いついたところでこんなもんだろうか?多分もっと細かいところはいくらでもあるのだが、今思いつく限りは以上だ。

とはいえこれだけで送り出すのも不義理だなと、書いていて思ってしまったので1つの約束をクリスマスプレゼントにすることで、この記事を終わっておこうと思う。

もしキミがインスタンス運営や判断について、悩み事があるけど誰に相談したもんか、という場合は @rosylilly@friends.nico まで連絡してくれていい。いつでも迅速とは言わないが、出来る限りの余暇時間を使って必ず応対すると約束する。

メリークリスマス。よい生誕日を。

rosylilly / Producer of friends.nico

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