Ryota Yokoiwa

家の近所に小さな映画館と、併設された小さなカフェがある。小さな映画館では鑑賞中に小さなカフェの食べ物を食べることもできる。この映画館は逗子では唯一の映画館だ。かつてこの町がレジャー客で溢れかえっていた頃には、いくつかの映画館があったという話だが、今では全て跡形もない。寂しいような気もするし、レジャー客でごった返しているよりも、これくらい静かで、所々に文化的な施設があるくらいの方がいいのかもしれない。これはここ数年の僕を悩ませていることでもあるが、目の前の選択肢のどちらを取っても僕はそれを好きだろうという場面が増えた。どちらだって「良い」のだから、別に困ることではないけれど、判断が遅れるし、あちらをとっていたらどんな事が待っていたのだろうという空想も止まらない。可能性の海を見つめて、今ここから心が離れるのは多分良いことではない。 今日、午前中に見た映画は「The Biggest Little Farm」というドキュメンタリーで、サンタモニカに住んでいた夫婦が犬を引き取ったのをきっかけとして自然農法の農場を作る話だ。LAから1時間程の場所に荒廃した広い土地を見つけ、そこに思っていたよりずっと規模の大きなファームを形成していく。これについては、またどこかにまとめて書こうと思っているが、実は僕はそんなに遠くない未来、似たようなことをしようと思っている。海から近い森の中にパーマカルチャーの村(町になればいいかもしれない)を作る。これから数年、なるべく多くの土地を訪ね、あるいは住み、それからどこでそういうことをするのか決めたい。今まで一度も定住したいと思ったことがないけれど、あと10年以内には定住したくなるような気がするし、新しい村(町)と生活共同体の在り方を提示したいとも思っている。それは多分、森林の中に埋もれたオーガニックな、しかしハイテックでモダンな村になるだろう。

家の近所に小さな映画館と、併設された小さなカフェがある。小さな映画館では鑑賞中に小さなカフェの食べ物を食べることもできる。この映画館は逗子では唯一の映画館だ。かつてこの町がレジャー客で溢れかえっていた…
家の近所に小さな映画館と、併設された小さなカフェがある。小さな映画館では鑑賞中に小さなカフェの食べ物を食べることもできる。この映画館は逗子では唯一の映画館だ。かつてこの町がレジャー客で溢れかえっていた…

排水口の周りなんかで時々見かける、小さな羽虫がいる。丸いような三角のような形の灰色のやつだ。この虫の名前はチョウバエと言って、水周りを放っておいて汚泥のようなものが溜まってくるとそこに発生する。新しい部屋に引っ越したとき、お風呂が変な設計で訳のわからない隙間があるなと思っていたのだけど、一度チョウバエが結構たくさん出て困った。 もちろん僕は躍起になって掃除したり薬を散布したりして退治を行った。 そして、実は本当は掃除なんてしなくていいのだということに気付いて、少し感動した。 なぜなら、チョウバエの発生自体が既に掃除だからだ。 有機物の流れを中心に「お風呂にチョウバエが発生する」という現象を眺めてみると分かり易い。まず、起点は僕だ。お風呂に持ち込まれる有機物の多くは僕に由来する。シャワーを浴びながら体を洗うと、表皮の一部などが擦り取られて排水溝へ流れて行く。理想的には全てが下水道へ流れ込むのだろうけれど、現実には排水口付近などに汚れが付着して堆積していく。そこへ、多分どこかから飛んできたチョウバエが卵を産み付け、それが孵化して汚泥を食べながら幼虫、成虫となり、そして風呂場を飛び回る。外への出口を無事に見つけた者は、外界へ飛び出して行く。つまり、お風呂の中に堆積していた有機物が、掃除しにくいところに溜まっていた汚れが、自動的にチョウバエという昆虫の形式をとって隙間から外に出てきて、さらに家の外にまで飛んで行くのだ。彼らは多分すぐに死んでしまうのだろう。鳥やクモに捕食されるだろう。 人間は多分食物連鎖の頂点にいて、つまり僕の身体はあらゆる生き物を通過してきた有機物(もちろん無機物も)の凝縮で構成されていて、その身体から角質などとしてこぼれ落ちたもの、その堆積を、チョウバエはまた自然界へ拡散させる。風呂場の片隅に溜まってしまったものを、自然界へ拡散させる。

循環する有機物とバスルームの羽虫
循環する有機物とバスルームの羽虫

社説「着用トイレの普及について」 国内最初の着用トイレ『TON101』が売り出されてから、早くも20年が経過した。国内メーカーで着用トイレを生産しているのはIOIO,IMAXの2社。各社半年毎のモデルチェンジを重ね、今ではその薄さも1ミリを切ろうとしている。これは着用トイレ先進国であるアメリカの世界シェアナンバー1、ASD社の最新型『z504』が誇る0・98ミリに迫る薄さである。先月の調査では日本国内における着用トイレ普及率53・2%(参考;アメリカ:78・9%)。この数字を高いと見るか低いと見るかは意見の分かれるところである。 本稿では、人の排泄物を気体に変換し空気中に放出するという、着用トイレの是非を巡る昨今の議論の行方にも注目しながら、着用トイレの普及が我々の社会にもたらす影響について考えたい。 もともと、着用トイレの原型となる装置は米軍が開発したものだ。作戦遂行中の兵士がトイレに行けないという問題は長らく解決されなかった。米軍の研究チームは2020年代半ば、原子操作技術(AMT;Atom Manipulation Technology: 極微細プローブと電磁界を用いて個々の原子を直接操作する技術。物質分子を構成する原子を操作し、分子結合を組み換え別の物質に変換することも可能 )を応用し、一部の固体や液体を気体に変化させる技術を開発した。当初、そのテクノロジーは兵器として使用される予定であったが、実は戦略上極めて重要な衛生管理、兵士の排泄物処理に応用可能だということで、兵士用着用トイレは開発された。兵士は股間にこのシステムを装着することで、いつでも衛生的に排泄を行えるようになった。