「ストレンジャー・ザン・パラダイス」
日本でも超人気で、「インディーズ界の巨匠」と呼ばれるジム・ジャームッシュが若干24歳(!)のときに監督した作品です。
これだけの低予算でつくられた映画なのにもかかわらず、カンヌ映画祭では賞を取るわ、その年のキネマ旬報では1位に選ばれるわ、でかなり話題となった作品です。
とくにこれといったストーリー展開があるわけではありません。
ただ淡々と若者たちの日常を描写していくだけです。
全然シリアスでもなんでもなく、ヘビーなテーマを扱っているわけでもありません。
だけど、白黒で、超カッコイイんです!
なんせ予算もなく、ヴィム・ヴェンダース監督から借りた撮影機材と、余ったモノクロ・フィルムで撮った作品。
それなのに、知恵とアイデア、そして『K・U・F・U(工夫)』だけで、これだけの作品をつくってしまったのです。
金がないんだったら、ないなりに、「ないなりのやり方」でやるしかないっしょ!
…といった姿勢にある種の感動すら憶えます。
これは、僕たちが生きるうえでもとても参考になる考え方だと思います。
お金があったならば、それはそれで良かったでしょう。
だけど、お金がなかったら…?
アタマを使うしかありません!
この映画で特に僕が好きなところは、登場人物たちが全員ボヘミアン的で、自由気ままに生きていることです。
僕もサラリーマンを辞めて、起業する道を選択しました。
「ドロップアウトして自由に生きる」ということは、なかなかしんどい生き方です。
ときどき、不安になることもあります。
だけど、この映画の登場人物たちを見ていると、不思議に勇気が湧いてくるんです。
「やっぱり、何ものにも拘束されないで自由に生きる方がいいや!」
…って思えてくるんです。
その代わり、社会的地位とかは得られませんけどね(笑)
僕も大好きなんだけど、ジム・ジャームッシュもビートニクスに影響を受けたそうです。
きっとジャック・ケルアックとか、アレン・キンズバーグとかの本を読んで、『自由』について考えたのでしょう。
この作品に限らず、彼の作品に登場する人たちのほとんどは…
「社会からはみ出た人たち」
…です。
だけど、そういった人たちに対する愛情がジム・ジャームッシュの作品には感じられます。
たぶん、彼自身がアウトサイダーだからなのでしょうね。
さりげなく小津安二郎へのリスペクトを挿入しているところもいいですね。
(これは日本人にとってはかなり嬉しいぞー!)
もう一度くり返しますが、これといったストーリーはありません。
感動的なセリフもありません。
アクションもなければ、涙が出るような感動的なシーンといったようなものもありません。
だけど、見終わった後に、『何かが残る』作品だと思いますよ!