会社員が経営者になるということ

Saki Takakura
13 min readDec 31, 2017

こんにちは。初めましての方は初めまして。
周りの人からはさきっちょと呼ばれています。
普段思っていることや好きなことについて、これからちょこちょこ書き溜めていきたいなぁと思っているのですが、
今日は手始めに、自分という普通の会社員が経営者になることについて、書いてみようと思います。

まず、自分の簡単な社会人歴から話しますと
新卒:SIerでシステムエンジニア
2社目:株式会社フリークアウトでAdOps、コンサル、営業、プロダクト開発、新規事業の土台っぽいもの、人事
株式会社フリークアウト・ホールディングスで人事
株式会社タレンティオで取締役COO
という流れになっています。1社目が大企業、2社目以降がベンチャーです。

フリークアウトの新卒採用で母校にて後輩や内定者とイベントを行いました

経営者の端くれっぽいことをかじり始めたのは、フリークアウトで人事として初めて役員になってからの凡そ2年前からなのですが、ちゃんと経営に正面から向き合ってみようと思い、取締役になることにしました。
合わせて 株式会社タレンティオの新経営体制について も読んでもらえるといいかなぁと思います。

そもそも自分がキャリアの中で何かポジションぽいものに憧れたことはこれまでにほとんどなく、
最初に入った会社で立てた目標も「いつかプロジェクトに自分が指名されるようになる」くらいの漠然としたものでした。
強いて言えば、「30歳までに南極大陸以外の5大陸の地を踏む」が自分の明確な目標っぽい目標でした。
これについては、周りのみなさまや一緒に目標に挑んでくれた仲間、健康に生んでくれた両親のおかげで達成することができたので、また書きたいと思います。

ではなぜ今回、経営という仕事に向き合うことにしたのか。
これは、きっと同じような事を考えている人も多いんじゃないかと思っているのですが、改めて自分のような何者でもない者がちょびっと発言することによって、特に経営者の考えに少しのインパクトを齎せたらいいなぁと思っているからなのです。

前段として、日本に経営者と呼ばれる人が一体どれくらいいるのだろうか、そもそも経営者って増えてんの?減ってんの?などを
以下のグラフを参考に考えてみます。

出典: 2017年版中小企業白書 概要 (中小企業庁調査室)

2014年で大企業がおおよそ1.1万社、中小規模企業が約380万社あるそうなので、大企業は社外取等を入れた取締役以上を10人、中小で取締役以上を3人と仮定すると(ちょっと多いか)、約1,151万人取締役がいることになります。
ちなみに従業者数は大企業で1,433万人、中小企業で3,361万人いるそうなので、これでいうと大企業の従業者数くらい、日本には経営者っぽい人たちがいることになります。

で、自分のチームは中小企業に入るので、自分は 1 / 380万×3 という存在になるわけです。
ちなみに職業人口として比較的多いらしい保険外交員で25万人と言われているので、比較すると圧倒的に経営者という者の人数は多いなぁと感じます。

そして次に、経営者と呼ばれる者は増えているのか?減っているのか?
を考えてみると、2009年〜2014年の6年間で
企業数:おおよそ39万社減
企業規模:規模拡大数<規模縮小数
となっているので、減少傾向にあると考えられます。

ここで言いたいことは、経営者という仕事は決して珍しいものではなく、人数から言えば一般的である、ということ、
そして企業数は年々減少傾向にある、
それに比例して経営者という仕事は少なくなっていっているのではないか、ということです。
この減少傾向が続くと、経営者がしっかりと経営手腕を発揮できない会社はどんどん倒れていき、比例して従業員は職を失う可能性が増えていくのではないか、
あるいは社会としてしっかりとした経営者を育てていかないと、従業員を雇用できる会社はどんどん減っていき、ただでさえ減少している生産人口の中で経済活動を行っているのに、
その経済活動を推進する事業がなくなっていくのではないか、ということを危惧しています。
(事業者という形でなくても経済活動を推進できる組織もあるのかもしれません)

ようやく本題に入ります。
経営を学ぶべき、あるいは経営の場を目の当たりにすべきではないか、と考えるようになったのは、いわゆる人事として会社に携わるようになってからです。
ここで、「いわゆる」人事と書いたのは、実は私は人事という言葉が好きではないからです。
HRという言葉もあまり好きではありませんでしたので、部署を立ち上げたときは「People Success」というチーム名にしました。
会社を構成し、会社の財産である働く人々がそれぞれ成功するからこそ会社が成功する、お互いに仕事のプロとしてファン同士である組織にしていきたいと思い、この名にしました。

People Successの人間として仕事をしている時に話す機会があった人からは、「人事っぽくない」とのコメントを頂くことが度々あったのですが、
それは何故なのかを言語化してみることにします。
人事という言葉が好きではないので、以降人事という言葉で総称されるものは一般的な言葉としてHRMと表記します。

HRMに期待されている役割

最初に、HRMについてまだまだ未知なところも多いかと思うので分解してお話したいと思います。
HRMには多くの要素と、その役割に期待する人々の思惑とが複合的に組み合わさっているために
simpleなはずの課題がcomplicatedになることが多いように感じます。
客観的にみると、課題を解決するためにはcomplicatedな課題を紐解き、simpleにすればいいよね、ってなるのですが、
この像を思い描くのと実行するのとでは全然意味合いが違います
これはHRM領域に携わったことがある人は一様に共感することだと思います
(ただし、周りから想像されにくい内容を扱う部門なので、人事界隈同士で集まりたがる人が多いのだと推測しています)。

まずは要素について、以下の表がわかりやすいので引用しました。

人事業務まとめ 出典は図内表記に準じます

このように、もう分野毎に事業部化したほうが、いやいやフェーズ毎に、いやいや戦略は経営企画が、いやいや外部のコンサルに、、となるようなボリュームになります。
で、実際に事業部わける、経営企画が担当する、外部コンサルに委託する、というケースも多いと思います。
ですが、それらと経営者が、あるいはHRM部門がsyncしないと、戦略立案から実行まで一気通貫でやることがとても難しいのです。
なぜなら一つ一つの業務に、部門以外の人、つまりはHRMに携わっている人以外が密接に関わるからです。
そして、これをやるのがいわゆるトップラインを作る人(売る人 or 作る人)ではなくコストセンターの人になるため、正直予算をかけたくないという人/会社、特に創業まもないベンチャーや急成長中の会社、人の出入りが激しいところ、あるいは組織というものに興味のない経営者の運営している会社も、もしかしたら一定数いるかもしれません。
しかし、着実に事業が成長している企業は必ずこれらの業務が必要になってきます。そのためコストをある時期には投下しないといけません。
言い換えると、成長している企業はここになんらかのコストを大きく投下しているはずなのです。

次に、期待する人々の思惑です。
まず人に関連する仕事として最初に従事する可能性が高く、またHRM部門にも期待される働きが「パーソナルマネジャー」です。
従業員が抱える不満や問題を見つけ、経営陣に対してその声を伝える役割とイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
この役割を果たす上で重要なスキルとして、従業員に対して共感し、一体感をもつスキル、そして上のレイヤーに進言できる関係値を構築できるスキルが必要となります。
人と一緒に仕事をする上ではいずれも大切なスキルで、かつ誰でも身に着けられるわけではないものなのですが、常に従業員側に立っているという前提から、経営というレイヤーからは遠ざけられがちであることが多いように思います。
しかし、従業員からは求められるのでそれに応えてしまい、その役割に終始するHRMの人もいることもまた事実だと思います。

次に期待される働きとして、「HRM領域の専門管理者」が上げられます。
これは組織が大きくなり、構造化するにつれて求められるようになります。構造化するとHRM部門としてもHumanResourcesを管理しなければならなくなります。
そうするとある程度効率性を重視し、管理運営スキル、特にお金面での管理スキルが求められるようになってきます。なぜなら、たくさんの従業員を抱える中で、何らかの理由によって給与の支払いを間違えたり遅れたりすることが一つでもあると、組織自体に不信感・不安感を生み、混乱をきたすからです。
この役割を果たす上で必要な考えは、標準化です。
各部門のマネジャーのあらゆる要望や裁量に対する過信も、HRM部門で決めているもの(企業の規定等)に必ず沿ってもらうよう、説得するだけの信念が必要となるからです。
規定や規則、いわゆる企業内でのルールが多ければ多いほど、この役割でのHRMの負担は大きくなりますが、少なければ企業文化による統制に依存しかねないので企業の規模拡大に支障をきたすかもしれない、というジレンマが生まれます。
またこの役割に合わせて求められることは、企業文化に紐付いた採用と解雇を判断するスキルです。
採用時には、他の従業員と同等あるいはそれ以上の条件を満たしている人を採用してほしい、とHRMも部門のマネージャーも考えます。ではそれはどういう人なのか?を、HRMは部門のマネジャーが職務や適合する人物像について明確にするサポートをします。
そうしてマネジャーやその配下にいるメンバーがチームを理解し、採用の標準化をサポートするのです。
同様に、解雇もサポートします。
標準化した職務や人物像からかけ離れている人は、組織に居続けると組織に悪影響を及ぼしてしまうので、離れてもらわなければなりません
。解雇は従業員側に立ちすぎていると非常に判断が難しく、また管理運営側に立ちすぎていると解雇対象が人格がないような扱いを受けたように感じてしまうので、慎重に、かつ一緒に働いていたマネジャーが行うべき仕事です。
ただ、これをマネジャーがやっているかというと、HRMがやっているケースもあると思います。
従業員を一人の人として慮るのであれば、HRMはサポートすることに徹するべきです。

次に期待される働きは「戦略上のパートナー」です。
HRTechという言葉が一般的になってきているように、最近は企業が採用人数や配置、さらには昇進降格の仕組み、教育といったものが経営戦略に大きな影響を及ぼすという考えが浸透してきています。
人が会社のBSの中で大きな部分を占めるということが認知され、コストではなく投資対象である、という考えに対する理解が進むと、経営者が経営目標を立てた際に、どんなスキルの人を何人採用すればよいのか、HRMに相談するようになります。
HRMがそれに対する考えを提案することができれば、経営戦略作りそのものに大きく関わることができるようになるのです。
つまりこの役割において必要なのは経済や経営の知識、そしてそれを応用して実行に移すスキルなのです。

「戦略上のパートナー」になっても、前段の2つの働き、「パーソナルマネジャー」と「HRM領域の専門管理者」の働きは失いません。
しかし、これら3つの働きを両立させることは非常に困難です。
たくさんいるメンバーを擁護すること、そして標準的に業務フローを立てて実行すること、そして戦略的に考えることに必ず矛盾が生じるからです。
そして、その矛盾を乗り越えられる人だけが、3つの働きを持ってして次のより高度な、変化の早い社会の中で変化をマネジメントするスキルを持って、専門的な組織開発者としての道を歩くことができるのだと考えています。

話を、私が「人事っぽくない」と言われることは何故なのか、に戻すと

  • そもそも要素を知らない、経験がない(ように見える)
  • 分野に精通していない(ように見える)
  • 職務に精通していない(ように見える)
  • 従業員に対して共感し、一体感をもつスキルがない(ように見える)
  • 上のレイヤーに進言できる関係値を構築できるスキルがない(ように見える)
  • 管理運営スキルがない(ように見える)
  • 標準化に興味がない(ように見える)
  • 経済や経営の知識がない(ように見える)
  • 知識を応用して実行に移すスキルがない(ように見える)

ということなのかなと思います。
もちろん他にも理由はたくさんあると思いますが、人によって、HRMに対する知識や経験、思いが異なるので、その人のHRMへの思いや期待に対してのいい意味でも悪い意味でも裏切りがあるために、そう言われるのかと思います。
そして私はまだまだどれも期待に対しては足りていないということを日々感じています。

では何故、経営者になるのか。
それは、自分のチームが掲げる「戦略人事のパートナー」となる組織として、自分がまずは戦略上のパートナーにならなければならないと考えたからです。
それは決してHRM部門だけではなく、会社全体としての戦略パートナーとして戦略を考え、実行に移し、計画を遂行する必要があり、そのためには上記に書いてある通りに経済や経営の知識、そしてそれを応用して実行に移すスキルを身につける必要があると考えています。
そして幸運にもそれを学ぶための環境、メンター、パートナーに恵まれたのが現在だということです。

そんなわけで、これから普通の会社員から経営者の端くれとして努力をしていきたいと思います。
いつもお世話になっているパートナーのみなさんの期待を超えられるようなプロダクトを生み出すチームにしていきますので、株式会社タレンティオをどうぞよろしくお願いします。

左から タレンティオCTO 小川、COO 高倉、代表取締役社長 佐野 私は肋骨が折れていて抑えています

最後に、今回の言語化を後押ししてくれた(すごく引用しています、ありがとうございました)と、作家さんに感謝を伝えたいと思います。
特にHRM部門の方はシャイン博士のシリーズは読むと非常に理解が進み、自分の行動指針の一つになると思うので、是非おためしください。

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SIer -> FreakOut -> FreakOut Holdings -> Talentio 旅と写真と読書が好きです。好きな食べ物は餃子とすき焼きとクラフトビールです。

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