経営悪化を察知する方法

さて、希望退職募集の要項が通達されて自分も対象者の年齢条件に入っていることがわかりました。当時は直感的にこう思いました。

「やめるしかないな」

理由は、ここ数年社内の景気が悪くなってきていることを感じ取っていたからです。もはやこの会社はヤバイと。しかし、周りを見ると危機感をあまり感じていない人もいました。理由はやっぱりある程度大きな会社でそれなりに給料も出ていたからだと思います。実際に会社で普通に仕事をしていると、社内のカネ回りが段々と悪くなってきていることは気がつきにくいものです。だから、突然、希望退職募集とか言われてビックリするんだな。

私が、ここ数年社内のカネ回りがだいぶ悪くなったことを感じ取っていた理由はプロジェクトの開発や運営に必要な予算管理を請け負っていたからです。別に予算管理は別の人にやってもらっても良かったのですが、将来は起業したいと考えていたのでそのためには金勘定もできなきゃだめだろう、と考えてプロジェクトの予算管理も買って出ていました。

今思えば、リストラ開始の4年前くらいから経費削減の要請が管理部門から来るようになっていました。初めは年に1回、決算月にお願いが来た程度でしたが、次第に半年に1回予算削減の要請が来るようになり、気がつくと4半期に1回という頻度で要請が来るようになってきていました。要するに、予算を削れという指令がしょっちゅう来るようになっていました。そしてとうとう、「もう予算を削れるところがない。これ以上削るにはプロジェクトの休止や縮小を提言するしかない」というところまできていました。そしてちょうどその頃、会社は業績不振をカミングアウトし希望退職募集をして経費を減らさないとやばい、という状態になりました。

この数年間、予算を削減しながら工夫してプロジェクトを進行することは良い経験でもありました。社内で仕事をすると原価や予算を考えずに仕事をしてしまうことは珍しくありません。プロジェクトを管理するにはQCDという基本があります。すなわち、

  • Quality = 品質
  • Cost = 金額
  • Delivery = 納期

この3つのバランスをいかにとるかということです。技術バカなエンジニアサラリーマンは、Q(品質)とD(締め切り)は一生懸命守りますが、C(予算)はけっこういいかげんで意識していないことはよくあります。

ちなみに、QCDはそれぞれトレードオフで、例えばD(コスト)を下げるためには、Q(品質)を我慢するとか考えるわけです。でもなんとか品質を下げずにコストは下げる工夫をする。これがサービスアーキテクトの腕の見せ所です。

35歳までは、自分の専門を追い求めて極めた方がいいと思います。しかし、それよりも年を重ねて人を束ねるような立場になると、QCDのように物事の全体感やバランスを上位から眺めて、プロジェクトの方向をまとめる能力も必要です。大工の棟梁みたいな立場かな?結果として、全体の予算管理と予算に見あった仕事の進め方の工夫を繰り返していたことで得られたメリットはたくさんありました。

一つ目は、サービスアーキテクトとしてQCDを管理工夫して企画や開発を進めるテクニックが身についたこと。これはさっき書いたことです。

二つ目は、上司からの評価が上がったこと。なんでかというと、実は全体の予算管理は最終的には部課長の仕事なんです。もともとは、将来の独立や起業を考えて金勘定も勉強しようという気持ちで始めたのですが、結果として上司がめんどくさがる予算管理の仕事を肩代わりしていたのです。上司にとってみれば私は便利なヤツ、というわけです。おかげで、他にいろいろな重要な仕事を任されるようになりました。

三つ目は、会社が傾いてきたという動向を感じ取れたことです。これは初めに書いたように、予算の締め付けが徐々にきつくなってきたことを早めに感じ取ることができました。おかげで、突然の早期退職募集の通達も動揺や驚きもなく冷静に受け止めることができました。

仕事はお金が絡みますから、お金の動きを把握するように意識した方が良いと思います。私が若いころ予算を意識し始めて驚いたのは、ソフトウェア開発には予想以上にお金がかかるということです。プログラマの人件費の塊なのでわかっている人には当たり前なんですけど、人件費は高いです。

そして、担当業務のお金を把握した後は、所属部門のお金の把握と守備範囲を広げてゆくとQCDという観点で仕事の進め方のセンスが身につきます。そして最終的には会社が傾きかけている様子を感じ取れるようになると。なんとなくですが、3年かかっても金回りが改善しないようであれば、徐々に沈んでいく泥舟に乗っていると思った方が良さそうです。あるいは、社長が交代したり経営方針を変えても全く金回りが良くならないという場合は、そろそろ会社の死期を悟った方が良さそうです。

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