業務改善のコツ — コミュニケーションコストを減らす方法 —
この記事はGYOMUハック/業務ハック Advent Calendar 2019の15日目の投稿になります。
業務のボトルネックは社員間・部署間のコミュニケーション
筆者はGYOMUハッカー(業務改善とシステム化を兼任するエンジニア)として社内の業務改善に数多く携わってきました。エンジニアなので、基本的には業務を自動化したり作業支援するためのシステム開発を行うことが多いですが、現状の業務をそのまま自動化するわけではなく、改善対象の業務を分析し、より効率的な業務フローを設計した上でシステム化を行います。場合によっては、業務フローを調整しただけで開発ゼロというケースも有りました。
業務フローの調整だけで改善されるケースは、特に作業の自動化を行っているわけではないので単純な作業量は減っていません。では何が減っているのか?と振り返ってみると、社員間・部署間のコミュニケーション回数が減っていることが経験則として判りました。これは、コミュニケーションが業務のボトルネックであり、コミュニケーションコストを減らすことが業務改善のポイントであることを示唆しています。
なぜコミュニケーションが業務のボトルネックになるのか?主な理由は下記の2つです。
- 待ち時間の発生
- 伝達ミスによる作業ミス・手戻り
上記2つは、どちらも業務フロー上の前工程と後工程で作業者が異なる場合に発生します。
まず、1. 待ち時間の発生は、前工程の作業者から後工程の作業者に対して、完了報告と引き継ぐ情報が伝わるまで、後工程の作業者は作業を開始できず、情報を待たなければなりません。業務フロー上のコミュニケーション回数が多くなるにつれて、この待ち時間も多くなり、業務効率の低下に繋がります。
次に、2. 伝達ミスによる作業ミス・手戻りについては、前工程の作業者から伝える情報に不備・不足があった場合に、後工程で作業に不都合が生じ、場合によってはミスによる損失も発生します。ミス発生時のリカバリコストや作業のやり直しのコストが業務効率の低下に繋がります。
上記から判るように、社員間・部署間のコミュニケーションの量と質を改善することが業務改善のコツになります。
コミュニケーションコスト削減のやり方
次に、実際にコミュニケーションコストを減らすための手順を簡単に説明します。
(1) コミュニケーション発生箇所の特定
コミュニケーション発生箇所を特定するには、まずは業務フロー図を書いてみることです。業務フロー図を書くためのツールや体裁のルールについて、特にこれといった特別なものはありません。各タスクを矢印の線で繋いだだけの図でOKです。ただし、下記2点だけ注意してください。
- 業務フロー図は、担当者・部署を分けるようにして書く
担当者・部署を別の行・列に分かれるようにし、間に点線などを引いて別担当者・部署であることを明確にしましょう。この点線を業務フローの矢印線がまたがる箇所がコミュニケーション発生箇所になります。 - 別担当者・別部署とのコミュニケーションが発生する箇所は、漏れなく記載するようにする
業務手順のヒアリングの際に、特に担当者間・部署間とのやり取り有無を入念にヒアリングして洗い出すようにしましょう。想像以上に、各担当者が別担当者・別部署と確認や報告のためのコミュニケーションを行っているものです。
業務フロー図によるコミュニケーション発生箇所特定ができたら、次はコミュニケーションコスト削減の具体的なやり方を考えます。
(2) コミュニケーションコスト削減手法
コミュニケーションコスト削減の手法は、大きく分けると下記3種類に分類できます。
- 定型化
- 共有
- 委譲
以下、それぞれの手法について簡単に説明します。
定型化
定型化は伝達する情報のフォーマットを作成することで、情報の不備・不足を減らす手法です。フォーマットにより伝達するべき項目や値を定義することで、誤った情報の伝達や伝達漏れを減らすことが可能です。
フォーマットはWordやExcelで雛形を作っても構いませんが、システム上でフォームを提供したほうが、フォーム画面上で入力チェックによる誤入力防止を図れる上に、入力したデータを他の用途に活用できるので便利です。
こういったフォームを簡単に作成・運用可能なWebサービスがいくつか存在し、代表的なものとしてはSalesforceやKintoneが有名です。また、既にGoogleのG SuiteやMicrosoftのOffice365が導入されている企業・組織の場合には、Google FormsやMicrosoft Formsといったアンケートフォーム用製品を定型フォームとして利用するのも効果的です。アンケートフォーム用製品を利用するメリットは、フォーム作成が非常に簡単で、エンジニアでなくても作成・メンテナンスができることです。実際に、筆者の前職では、非エンジニアの事務スタッフがGoogle Formsを使って部署間の作業依頼フォームを作成・運用し、業務効率化を実現していました。
共有
前工程の担当者の作業情報を、後工程の担当者にも参照できるようにしておくことで、コミュニケーションを不要にする手法です。最も簡単(というより安直)なやり方は、作業中の各種ドキュメントを共有フォルダに入れるなどして、他作業者も閲覧できるようにすることですが、通常は各作業案件毎に不定形な情報が混在しており、そこから後工程の作業者が自分に必要な情報を不備・不足なく読み取ることは困難です。従って、作業情報の共有を行う上では、前述の定型化と組み合わせる(後工程の作業者用に、必要な項目・値で参照できるようにしておく)事が肝要です。
このような定型化を伴うケースでは断然システム化が有効です。前工程の作業情報を定型入力できるようにしておき、後工程担当者向けのビューを作成する事で、コミュニケーションコストを削減することができます。こういったケースでも、やはりSalesforceやKintoneが有効かと思われます。
ただ、筆者の経験上は、最初はあまり定型化に拘らず、情報の共有を優先して実施した方がうまく回ったケースが多かったです。とりあえず情報をお互いに参照できるようにするようにしただけでも、まず何よりコミュニケーション回数が減る恩恵を受けられます。仮に情報の不備・不足があった場合は、そこで担当者感での確認を行う事で問題は解決されます。もちろん、確認のためのコミュニケーションが発生しますが、全く共有が無かった頃に比べればかなりマシです。また、こういった内容確認を行っていくうちに、情報共有すべきポイントがだんだん明確になっていくので、徐々に定型化への道筋も見えてくるものです。
委譲
委譲は、作業を別担当者に移管することで、担当者間のコミュニケーションが発生しないようにする手法です。下記の例の様に、前工程と後工程が異なる担当者・部署にまたがっている箇所において、両方の工程をいずれか一方の担当者・部署に寄せる事によって、コミュニケーションを不要とすることができます。
ただし、業務の委譲は通常簡単ではなく、特に別部署に移管する際は、一方の部署に作業負荷が集中してしまう問題や、扱う情報の機密性によるコンプライアンス上の問題、業務の専門性による作業ミスの懸念など、簡単に委譲することができません。このような問題は、下記のようなシステム化を行うことで解決できる事が多いです。
- 業務に必要最低限必要となる情報の参照・変更権限をシステムで厳格に管理
- 作業の一部を自動化し、業務を簡易化
筆者の過去の経験では、ある部署から別部署に対して月次で行っていたレポーティング作業を委譲するために、レポート作成ツールを提供した事例があります。この時のツールは、レポート作成ボタンとID・パスワードの入力のみであり、誰でも実行できる簡単なUIとし、また過剰な情報の参照が発生しなかったことで実現できました。ツール自体は非常に簡単なものでしたが、両方の部署において依頼や返信、待ち時間などが一気に削減されたため、双方から非常に喜ばれる結果となりました。委譲による改善は非常に効果が高いので、是非とも検討すべき手法と考えます。
最後に
今回は業務改善のやり方をコミュニケーションコスト削減という観点で整理してみました。GYOMUハックというITを活用した業務改善活動は、まだまだ歴史が浅いため、様々なやり方を各GYOMUハッカーが模索している状況ですが、各自の事例・知見・アイデアをどんどん発信して共有することで盛り上がっていけると思います。この記事も誰かのお役に立てたなら幸いです。
