また会おうね。

気がつけば、祖父が高いし2週間が過ぎていた。
89歳を迎える少し手前でのことだった。両親からは年齢も年齢なので心の準備だけはしておくように、と数年前から言われていたものの、そういう準備なんてものはおそらく人はできない。

仕事を終えて、飲み屋で秋刀魚をつついてる時に親から連絡があり、その翌日には北海道へ向かっていた。危篤状態の知らせで、特に大きな病気でもなく、今週なのか、来週なのか1ヶ月後ももしかしたら今と変わらずいるかもしれない、そんなことを親に言われたもののなんとなく、明日行かなとと思い実家へと戻った。

もう自分の力では起き上がれなくなった爺ちゃんは布団で横になり、ボケもせず、ただ耳が遠くなったのと、呼吸が苦しいので静かに天井を眺めていた。ひょいと顔を出し、ただいまーというと爺ちゃんは喜んで「おぉ、すばる、帰ってきたかー」と微笑んだ。

僕は爺ちゃんの影響をとても受けている。子供の頃は一緒に風呂に入り、白鯨の話をしてくれたり、宇宙ってなんなの?とか、死ぬって怖いの?とか風呂でチャプチャプしながら、子供ながらの質問にたくさん答えてくれた。いつもリビングで本を読み、読み終えると図書館にバスで向かい、また大量の本を借りてくる。家のリビングは爺ちゃんの書斎になっていて壁中天井まで本。もう本をしまう場所がないので図書館を利用していた。

本で描かれる物語がいかに素晴らしいか、読書の素晴らしさを教えてくれたのは祖父である。SFが好きなのも、ミステリーが好きなのも、祖父の影響だ。歴史物もいっぱいあったけど、お前にはまだ早いと違う本をオススメしてくれたり、今ならちょうど良いくらいなので実家に帰るたびに爺ちゃんから本を借りて帰っていた。

映画の面白さを教えてくれたのも爺ちゃんだ。1日3個映画をハシゴしたこともある。懐かしい。昔はチケット買うと何回でも見ることができた。爺ちゃんはなんか好きな映画があると、2回目見て帰ることが多かった。BSで流れる昔の古い映画を眺めては、その映画の何が素晴らしいかを教えてくれた。

そういえば爺ちゃんがなんかで入院しなきゃダメな時に一升瓶を隠し持って入院していて、こっぴどく怒られていた。家では1日必ずコップに数杯の酒を飲んで、もう後半の方は酒の栄養で生きてるんじゃないかと思うくらい酒を飲んでいた。人生で一度もアル中になったことはないと家族が行っていたが、もっとスケールのでかいアル中だったんじゃないか。さすが俺の先祖だわと胸を張りたい。

僕が帰ったことで嬉しく、元気を少し取り戻し、数日全然食べ物も食べれなかったのに少しずつ食べていた。なんなら酒飲むか?と小さい声で囁いてきて、死に際まですごいな爺ちゃんわ、と感心した。

テレビ電話でうちの子たちに繋いで、大きくなっただろう〜と見せると目元が緩んで笑っていることがわかった。二人で横になってスマホで子供たちを見せて、爺ちゃんの顔見るとぽろっと涙をこぼしたのを見て、家族のかけがえのなさを感じた。言葉にはできなかった。でも、その一滴の涙が生きることの美しさそのものみたいで僕も目頭が熱くなった。

どうしても仕事で関西に戻らないといけないので9/9–10の二日間だけ、爺ちゃんの隣でゴロゴロして、一緒にテレビ見て、時々少しだけ話して過ごした。爺ちゃん、もう帰らないと。と帰り際、顔を覗き込んで伝えると「体を大事に、無理はせず、家族と仲良くな」とはっきりとした声で教えてくれた。

爺ちゃんは僕の先生みたいな人だった。生き物のことも、本のことも、映画のことも、酒のことも、生き様も。寡黙で大事だと思ってることは絶対に曲げず、人を大切にし、誰からも愛されていた。

9/11、僕が関西に戻り、打ち合わせをしてるときに爺ちゃんは、眠るように息を引き取った。最後の最後看取ることはできなかったけど、なんかそれで良い気がしている。本を読み終えて、感動の余韻につかってるとき、爺ちゃんを感じるし、良い映画を見て、タバコをふかしてても、爺ちゃんを感じる。一人で酒を飲んでても、隣にいる。

小学生の僕と当時の爺ちゃんで映画を見て、楽しかった!すごかった!と手を繋いで帰った日を思い出す。その思い出の風景は、今僕が息子や娘と映画にいって、キラキラした目で喜んでおしゃべりな姿を愛おしく見つめてる風景と一緒だったんだなと思う。

89年、よく生きました。
15年前に亡くなった愛犬ジャムが待ってるだろうから、頭を撫でてあげてください。まだ先になるけど、そっちに行った時にはまた酒を飲み交わそう。そして、本や映画の話をしよう。爺ちゃんが読めなかった、これからの物語は僕が読んで伝えよう。

じゃあ、またね!
布団に横になる、爺ちゃんに最後に伝えた言葉がこれだった。
家族にさよならはないんだなと思う。
また会おうね。

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