「十二人の死にたい子どもたち」

結末はタイトルから見えている。

冲方丁の作品はあまり読んだことがない。「マルドゥック」シリーズを少しだけ読んでやめた。理由はわからないけど。現代長編ミステリーを初めて書いたということと、とても退屈な週末なのもあり、読んでみた。


もちろん「十二人の怒れる男」オマージュ

引用;amazon

映画よく見る人なら見たことがあるオマージュ?となっている「十二人の怒れる男」。もう60年近く前の作品!?驚きである。裁判員制度で十二人の男が1部屋で座り、一人の少年の殺人をディスカッションしながら物語は展開する。誰もが実刑でしかたがないと疑う余地のないところに、一人の男が疑問を呈する。そこからディスカッションが始まり、最後には誰もが実刑を望まない、という結末だったはず。20年くらい前に見たのでうる覚えである。

結末を期待している人は目次で終了

十二人の怒れる男を知らずとも目次で序章「12対0」からはじまり、最後「0対12」を見るとオチがわかる。これでゲンナリするなら買わないほうがいいかも。そもそも、元ネタを知った上で読まれることを想定しているような気がします。ミステリーなんて言うもんだからオチに期待するのは仕方がない気も。結果、amazonの評価はすごい低い。

12人の様々な事情を抱えた少年少女たちが集団自殺をするために集まる物語です。お互い面識はなくネットを通じて集まった12人。それなのに集合場所にはすでに息をしていない男性が一人横たわっている…という内容。

本来12人であるべきの(オマージュも含め)予備知識から、おっ?と気になる13人目の存在がこの物語をただのオマージュにさせなかったポイントと思っている。もちろん皆、死を選ばない選択のオチってのは想像ついてるわけで、意図的にトリガーとなる様々なオブジェクトの描写や、コロコロと変わる12人の視点での語り、それぞれ何故ここにいるかの理由が開封されていきます。

結末に至る過程を見て欲しい?

この構造からして、オチは期待できない。結果、なぜ13人目がいるのか、その他12人が死にたがる理由はなにか?に自然と視点が向きます。そこで扱っているものが、現代の子供達の死に対する考え、置かれている境遇、13人目の存在を明かす道中で、その他12人の子供達の視点を回収していくことで、この時代の命に対して思考を巡らす体験を作ろうとしています。

それでもなかなか、400p近くのオチが見えた物語を読み続けるのは、なかなか難しい。と、途中200pあたりで思っていたんですが、あっさりと「13人目の子を殺したのは僕です」と判明する。え?折り返し地点でそれ?読んでいて何かがある予感がザワザワする。そこが一番この作品でうまいなぁと思った展開でした。

一方、違和感も。物語を進行する上で違和感ある存在。

普段、「この人、犯人かな?」と思う人々にブラフ的な演出が施されるのがミステリーの定番。しかし、本作はそこよりも明瞭解析な推理上手な男の子、弁がたち戦略的な思考をもつ女の子が混ざっている。せっかくの12人+1人の構図のなかで、異様な存在感を放っている。そして、物語をゴロッと動かすのもこの2人。ことあるごとに事件の整理役として、この存在に頼っている節があった。誰が主人公でもない設定なんだけど、続編でも作る気かな?ってくらいにフォーカス当たりまくる子とそうじゃない子が明確に。そして、だいたい、その流れだとトリック以前に一番目立たない人が犯人になる。

ディスカッションがテーマである以上、フラットなパワーバランスが必要

と読んでいて、すごく思った。もちろんディスカッションでは、リードする人も、賛同や否定で動かす人もいる。もう少し分散した方が、それぞれの個性あるキャラクターが生きるのかもなぁと思った。偉そうに。13人目が存在する理由もトリックがあるんだけど、舞台が3階建ての病院(構造図も書籍についてる)ということで、あの部屋でこれを、あいつがあれしてるときにあれを、と凄く細かい時系列の動きで実現しているが、正直読んでいてそこまで理解できない。丁寧に整理して、トリックの流れを見ても「うん、たしかに」という感じになる。何を見て欲しいのか、トリックなのか、子供達の考えなのか、そこがとても定まらない印象を受けた。

結果「一二人の怒れる男」はすごい!

この作品は、この十二人の怒れる男を土台に構築されているわけだが、本作はずっと会議室。テーマは少年の命について永遠の議論がされる。映像と小説では違うとわかっていても、見る側の価値観へ言及する内容だけに「自分だったら、どう判断するだろう…」とすごい悩んだ記憶がある。

一方、十二人の怒れる男を拡張し、現代版ともいえる体裁で綴られた物語は、見るものの意見・考えを問うという本筋を拾えず、同じ舞台設定でミステリーを展開した。という内容に止まっている。ミステリーの存在が、語りかけたかったはずの現代の若者の死生観に対していまいち深いところまで到達できなかったのではないか。しかし、ミステリーがないと最後まで読み切れるものになっているかといえば、厳しいだろうと思う。

どうすれば自分は納得できるのかを改めて考えると

・キャラのフォーカスはフラットに(推理役とかいらない)

・もっと少年少女の内面を深堀してほしい

・中盤「殺したのは私です」以上の盛り上がりを結末に欲しかった。

くらいだろうか。わがまま言って申し訳ない。しかし、描写自体はとても魅力的でグイグイ読めてしまう。12人の視点を交差しながら描かれる、その1日も凄くイメージしやすいものだった。

だからこそ、登場する人物の内面をもっと強く、その強さが故の実行であってほしかった。え、そんな理由でここにいるの?というような、ここに来た理由に共感できないキャラクターが多すぎた。もっと現代の子供って賢くて、一見苦労もなくて、いっつも笑顔の裏側にドン引きするくらいの闇を抱えてるってのがリアルな気がした。実際どうかわからないけど。あそこまでの議論を重ねないのではないか、一種の諦めがもっと色濃く染み付いてる存在がいなかった。あぁ、この子自分の考え方に近いなって人が1人いたら面白いんだろうな。


結論

50 /100

何も予定がない週末にさくっと読むのにちょうどいい。でも、根っからのミステリー好きは物足りないはず。命とは!というテーマへの言及をしようにも、正直そこまで深堀できてない印象でした。暇な時間潰すにはグイグイ読めて面白い!特に中盤以降の展開スイッチが劇的。読書の秋は読みたい本だらけだけど、何もなかったら軽い気持ちで読むといいと思いますよー

One clap, two clap, three clap, forty?

By clapping more or less, you can signal to us which stories really stand out.