司法の学びに欠かせない。成蹊大学法学部「塩澤ゼミ」のScrapbox利用法

Scrapbox
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Nov 7 · 10 min read

さまざまな企業で導入が広がるScpapboxですが、もともとScrapboxは教育現場、研究機関での利用を目的に開発されたもの。情報の共有やアップデートを容易にし、学生と教員、あるいは学生同士のコミュニケーションを促進することで、質の高い教育をサポートします。
東京吉祥寺にある成蹊大学のとある授業やゼミでは、2017年の導入以降、Scrapboxが欠かせない存在になっているようです。
今回はその授業にお邪魔してきました。実際にScrapboxがどのように利用されているのか、レポートします。


成蹊大学法学部 塩澤先生のScrapbox活用術

2019年の10月某日、伺ったのは成蹊大学法学部教授、塩澤一洋先生が受け持つ授業とゼミ。
まずは午前中から「知的財産法1(著作権法)」の授業を見学させていただきました。

塩澤先生の授業は、学生たちがQRコードを読み取り、その日の授業のScrapboxページを開くところから始まります。
そして、最初に復習を兼ねて前回の授業後に集めた学生たちの感想を振り返り、質問に対して解説を加えます。

学生たちの感想は手書きされたものがスキャンされ、画像としてScrapboxに貼り付けられていています。ずらっと一覧表示されるので、画面をスクロールするだけですべての感想を閲覧でき、とてもスムーズです。
授業中に黒板や紙の教科書を使うことはなく、塩澤先生が手元に持っているのはiPadのみ。板書はすべてiPadにApple Pencilで書き込みます。Scrapboxの画面をはじめとして、iPadに手書きする内容などがリアルタイムにワイヤレスでスクリーンへ投影されるスタイル。PowerPointを使った講義とは趣が異なり、手書きの板書で図解されたり、条文を文法的に解析されたりしながら進む授業です。

塩澤先生は教壇には上がらず、学生たちと同じフロアで机の間を歩き回りながら、アクションを交えて学生たちとコミュニケーションを取り、躍動的に授業が展開していきます。

成蹊大学法学部「塩澤ゼミ」のScrapbox活用術

著作権法の授業終了後、お昼を挟んで午後はゼミ。
塩澤先生は5つのゼミを担当しています。1年生を対象とした「1年ゼミ」と「LE1」、2年生対象の「LE2」、2・3・4年生を対象にした「shioゼミ」と「ドラゼミ」。5つのゼミを履修しているすべての学生が、ひとつのScrapboxプロジェクトを共同で利用しています。

この日は4限に「shioゼミ」、5限に「ドラゼミ」が行われるとのこと。
先生に案内をしてもらい、まずは「shioゼミ」の教室の扉を開けると、先生不在の状態ですでに学生たちの間で何やら議論が始まっていました。

「いつもこんな感じですよ。」と微笑む塩澤先生。
「shioゼミ」は、各自が選んだ最高裁判例を研究していくスタイルの授業です。
判例の事実をまとめた「事実の概要」を書き、判決の要旨である「判旨」を抽出したうえで、各自の検討に基づいた法適用と判旨に対する評価を述べる「評釈」を執筆します。この日は数名の学生が、自分が選んだ判例について、Scrapboxを用いて発表していました。
学生が発表のために資料を準備しプレゼン画面としても用いるScrapboxページは、ゼミの参加者全員が閲覧、編集できます。学生たちは発表に耳を傾けながら、ノートパソコンやiPadで同じページを映してコメントを書き込みつつ、議論を進めていきます。

そして、「shioゼミ」の後で「ドラゼミ」にもお邪魔させていただきました。
ドラゼミとは、drafting seminarの略。draftingとは(法律文書を)起案するという意味。
司法試験、司法試験予備試験の論述式試験過去問の答案を論述し、学生たちが相互にコメント、添削、校正などをした後、塩澤先生がコメントをする……それを繰り返して、最終的に「過去問研究書」として完成させます。
この日はまさに3人か4人1組で添削をし合っている段階。
議論の起点はやはりScrapbox。各自がscrapboxに起案してある論述内容を説明し、それに対する添削やコメントがリアルタイムでScrapboxに書き込まれていきます。

Scrapboxで授業のペーパーレス化&議論の活発化を実現

扱うテーマはどちらも法律ですが、学習スタイルの異なる「shioゼミ」と「ドラゼミ」。
双方に、Scrapboxを使った授業における共通の特徴が見えてきました。

ポイント1:紙のノートでメモをとっている学生がいない

まず気付いたのは、誰一人として紙のノートにメモを取る学生がいないということ。
立って発表するときに、判例の原文や論述問題の問題文を印刷した書類を手にしている学生はいますが、基本的にペーパーレス。判例研究、過去の試験問題の論述、議事録作成、そして個人のノートもすべてがScrapbox。
塩澤先生も教材や資料などすべてがScrapboxに集約されていますし、ホワイトボードや黒板に板書することはなく、もっぱらiPad ProにApple Pencilで「板書」している画面がリアルタイムにワイヤレスでプロジェクタから投影されています。

ポイント2:全方向のコミュニケーションで議論が活発に

shioゼミで学生が判例を発表した際、法律用語の誤った使い方を塩澤先生が指摘しました。
それについて口頭での議論が盛り上がる一方、指摘のあった表現をScrapboxのページ上でひとつずつ正しく直してあげる学生がいたり、ゼミの議事録として追記していく学生がいたり。
口頭の議論だけでなく、Scrapbox上の文章表現も使って複線的にコミュニケーションが交わされます。

言語で表現することよりも文章で表現することの方が得意な学生もいるでしょう。その逆ももちろんいるでしょう。

議論の場でScrapboxを使うことで、両者の個性を活かしたさまざまな関わり方が可能になり、議論に参加することでお互いの短所を補いながら成長し合えるのかもしれません。

「卒業後もScrapboxの個人利用を続けています」学生のリアルな声

たっぷりとゼミを見学した後、Scrapboxの使い勝手について数名の学生から直接お話を聞いてみました。塩澤先生のゼミは学生たちが卒業後も関わりつづけることが多いのも特徴。今回もゼミに遊びに来ていた卒業生に、Scrapboxの先輩ユーザーとしてお話を伺いました。

卒業生 小菅雄磨さん

「通常のゼミは発表する人と聞く人とが分かれて、「1対他者」という一方向の説明になりがちだと思います。聞いているだけだと、一人一人がゼミにコミットできる時間の絶対量が減ってしまう。Scrapboxを使うと、文字によるコメントで議論に関わる人がいたり、発表の内容に情報を補足してくれる人がいたり、ときにはそこから別の話題に派生したり、全方向的なコミュニケーションが生まれます。結果的に全員がゼミにコミットできる時間が増えたと思います。」

卒業生 白石健太さん

「在学中にある時突然、塩澤先生から「これいいから!」とScrapboxを勧められて(笑)。使ってみたら、仕様がとても簡単で、すぐに馴染みました。階層構造がないので、どこにどんな情報があるのか見つけやすく、いつでも議論を再開できます。現在は中央大学の法務研究科(ロースクール)に通っており、そこで参加しているゼミでは僕がScrapboxを使うこと勧めてすっかり浸透しています。」

卒業生 山田翔吾さん

「Scrapboxは授業中に複雑な図などが出てきた場合、スマホで写真撮影してそのままページ内に貼り付けることができてとても便利です。それに、例えば「民法」とタグをつけるとプロジェクト内に存在する関連の条文や判例がすべて出てきてくれるのも学習が効率的になるポイントですね。今は慶應義塾大学の大学院(ロースクール)に通っていますが、授業のノートも年間の予定表もすべてScrapbox。1年半で900ページ近くのページ数になりました。我ながらとても良いノートになっていると思います。」

在学生 杉山響さん

「僕はゼミの中で“IT担当”。Scrapboxのスクリプトを作ってみんなに共有したりしています。たまにScrapboxの改善要望とかツイッターでつぶやくと、些細なことでもすぐに開発者の方が対応してくださったこともあって有り難かったです。このゼミでScrapboxと出会ってから、プライベートも含めてノートは全てScrapbox。僕の生活はScrapboxで成り立っています!」

在学生 鈴木啓太さん

「塩澤先生のゼミの特徴として、法律を深く理解するために、まず言葉の定義を考えるところから始まります。ひとつの言葉の使い方や表現について深く議論するので、誰でも閲覧できて気軽に更新でき、コミュニケーションが図れるScrapboxは欠かせない存在だと思います。」


実際の授業風景を拝見し、学生の皆さんのお話を聞いて、教育現場とScrapboxの親和性を改めて感じることができました。
また、皆さんがScrapboxに愛着を込めて「スクスク」と呼んでいるのがとても印象的でした。「Scrapbox School(Scrapbox学派)」の略であり、学生たちがスクスク育ってほしいとの願いを込めて塩澤先生が名付けたそうです。

塩澤先生がなぜScrapboxをゼミや授業で活用していこうと思われたのか、導入の経緯や活用法などもインタビューさせていただきました!こちらをご覧ください。

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