次のAirbnbの作り方 — ソーシャル上に隠れた”カオスな文化”を盗む方法

今や1日に300万人以上が利用するAirbnbですが、リリース初期は1000人程度の規模でした。初期プロダクトの仮説検証とグロースにcraigslistを利用していた事はかなり有名です。

Airbnb: The Growth Story You Didn’t Know

他にもUberやEtsy, indeed等がcraigslistの一部カテゴリの代替として機能し、成長しました。彼らは単にcraigslistを切り出しただけではなく、そこで行われていた取引の問題を整理し、体系化された文化を作る事で安心かつ使いやすいプラットフォームとなり、ユーザーを引き込みました。

本当に強いニーズがあり、方法が確立されていない課題には、多くのユーザーが独自の方法で課題解決をする”カオスな文化”が生まれます。

“カオスな文化”はソーシャル上に見え隠れしていて、これを見つけ、体系化する事で、0→1、1→10の成長を見込めるプロダクトが作れると思っています。

今回なそんな”カオスな文化”という事象を定義し、どう見つけるか、どう活用するかを紐解いていきます。

カオスな文化を体系化したプロダクト

いきなりAirbnbからなぞると、かなり遠く難しい事象に感じます。個人的に、身近でカオスな文化を体系化してユーザーにクリティカルな価値を提供していると感じるスタートアップのプロダクトを挙げてみます。

インスタ映えする、オシャレで美味しいお店を知りたい

インスタグラムで流れてくる料理の写真、1度はここどこだろう、行ってみたいと思った事はありませんか?また、お店を調べる時もインスタ内で調べる方もいると思います。これまでユーザーそれぞれ独自の方法で、ハッシュタグや位置情報、フォローユーザーを元に飲食店情報を収集して、逐一覚えたりメモ、スクショを取ったりしていました。

Tastimeはインスタグラム上でインスタ映えする飲食店を簡単に探す事ができるアプリで、カオス的状況からユーザーを解放しました。

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今夜、何作ろう?

日々料理を作る人にとって「今日何作ろう問題」は永遠の課題です。これまで、夫や子どもに聞く、料理動画アプリで決める、冷蔵庫の余り物から決める、などの行動で、ユーザーが独自に解決してきた課題だと思います。

Twitterで「今日何作ろう」と検索すると、かなりの人が献立に悩んでいるのが分かります

タベリーは超簡単に、素早く献立を決めることができ、更に買い物リストを生成してくれるサービスです。

課題の頻度や強さが高いという土台に、シンプルかつ強力なプロダクトを沿えました。

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外国人の友達に英会話を教えてもらいたい!

語学学校に行くなら外国人の友達を作って英会話をして英語を上達させよう!として実際に友人を作り英会話を行なっていた人、SNSを通じて仲良くなった海外の人とSkypeを通じた英会話を行なっていた人は多いと思います。

フラミンゴは外国語を上達させたい個人と、語学力を活かして収入を得たい外国人のマッチングサービスです。これまで繋がりのある友人同士でしか行われなかった文化を一般の個人間にエンハンスさせ、新しいルールと文化を作りました。

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車を持っている友達に送ってもらいたい!

一部の地方には、ちょっと○○まで送ってよ!という、車を持っている友人に目的地まで送ってもらう文化があります。

CREWはそんな相乗りの文化を「知らない個人間」にエンハンスし、一種カオスな文化を作りながらもCREW上でのルールを体系化し、双方が知らない人同士でも安心して目的地に着けるプラットフォームを提供しています。CREWはニーズがある市場にカオス的な文化を持ち込み、体系化していくというアプローチを取っているように感じます。

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カオスな文化とはユーザーの渇望から生まれる苦肉の策の結晶

ユーザーが各々で大まかな文化の中で独自の方法を用いながら課題を解決している状態を、僕は”カオスな文化”と定義しています。

ユーザーの渇望から生まれた”カオスな文化”には細かいルールや秩序がありません。人は誰しもそんな簡単にカオスな状況に足を踏み入れません。

秩序のない場所で、リスクも一定あり、知恵と時間をかける必要がある。なのにカオスな文化が生まれるのは、それだけユーザーがその課題をどうにかしたいと”渇望”しているにも関わらず特定の解決方法を”連想想起”できていない状況なのです。また、連想想起できていたとしても”行動するに至らない数々の負”があります。

ニッチユーザーのマインドシェアで№1になる

どんな市場でも基本的には先行者がいるとして、僕らスタートアップが後発で参入して№1になるには一定の勝つべくして勝つシナリオが必要です。先行者は特定の課題に対して連想想起されても”行動するに至らない数々の負”をユーザーに提供している可能性があります。

そんな特定のユーザー群に対して1番に参入し、ニッチなマインドシェアを獲得する、これがスタートアップとしての基本戦略であり、そのきっかけとなるのが”カオスな文化”に存在する課題解決に渇望しているユーザーを捉える事だと思っています。

まさに、スタートアップが攻め込むべきissueが、カオスな文化に眠っているのです。

ソーシャル上に隠れたカオスな文化を発見しよう

では実際にソーシャル上に見え隠れする”カオスな文化”とはどんな物を指すのでしょうか。2つほど、事例を紹介します。

Instagram上での物の売買

先日のアプリマーケティング研究所の記事にもあるように、Instagram上で海外の限定グッズを買ってもらい、ビットコインで支払う「越境フリマ」形式の使い方をしているユーザーが存在します。これはInstagram上での個人間売買の一例に過ぎず、多くのユーザーが独自の方法で課題を解決し、また解決できていない課題もたくさんあります。

限定グッズを安く手に入れられる反面、商品が届かないリスク、決済されないリスク、その他取引時のトラブルをうまく解決できないリスクを双方が抱えた取引です。

Instagram上でディズニーグッズをマーケティング→Lineで取引を行うアカウント

Twitter上での靴貸してください

Supremeという、新作が発売する前夜からショップ前に鬼のように行列が出来るファッションブランドがあります。あまりにも転売が多いので、場合によってはSupremeの服を着用している事が抽選の条件になったりします。いわゆるドレスコードですね。このドレスコード製を他ブランドも一部採用しており、Atmosは以前にNikeとのコラボ商品を発売する際、Atmosの靴をドレスコードとして指定しました。そのため、一部のユーザーはTwitter上で「xxxの靴を○○○円で貸してください」とツイートしていました。貸すとSupreme等の購入代行を依頼出来るメリットもありますが、そもそも靴が綺麗に返ってくる保証はありませんし、購入代行を依頼できる権利も行使できるか分かりません。

発売日に必須なドレスシューズをTwitter上で探す

データではなく行動や感情を観察して見えるカオス

カオス的状況は各ユーザーが独自で数多の方法論に落とし込んで行動するので、定量化しづらい側面があります。定量的な市場や競合の数字はチャレンジするべき領域であるかを判断する上では必須ですが、具体的にどんなカオスな文化が眠っているかは定性的なユーザー観察から、次の4つの視点で見つけます。

課題の深さ

捉えるべき課題を特定するだけでなく、ユーザーがどのタッチポイントで何を感じているか、どれくらいその課題解決を渇望しているか、課題の深さを観察します。

課題の頻度

その課題は毎日起こり得るのか、週に1度なのか、月に1度なのか、四半期、年間、4年に1度なのか、を観察と推測します。頻度が高ければ高い程LTVの高いプロダクトを、低ければ低い程1トランザクションあたりの収益性を追うプロダクトが必要になります。

課題の顕在母数

カオスな文化を経て課題を解決している人の総量も重要です。後述する方法ですが、Twitterで検索する際に、該当ツイートの頻度を確認します。1日1人なのか、1時間に100人なのかで課題を感じている人の総量が異なります。

課題の潜在母数

さらに深掘ると、そのカオスな状況にたどり着くまでに、何を解決するために何を試し、なぜそれを採用しなかったのか、という定性的なコンテクストを知り、最終的にどれくらいの人数が、どれくらいのスパンでこの課題に行き着くのか、というおおまかな仮説があると、事業の仕上がりとしても大きくなりそうか、小さく止まりそうか見えてくるので、そのカオスな文化は体系化する必要があるissueか否かが判別しやすくなります。

カオスな文化を見つけ、CVRさせる

カオスな文化の所在を特定するのは普段からインターネットに住んでいる僕らにとっては比較的容易だと思います。特定した上で、ルールを作らずにCVRさせるところまでユーザーと自然なコミュニケーションを取る事で、ユーザーがどこで何を感じるのかを観察します。僕は今のところ3つの手順で取り組む事が可能だと把握しています。今作っているプロダクトは下記のaから順に進めながら、各タッチポイントにおけるユーザー動向をプロダクトに落とし込む作業をしています。

a. SNS(特にTwitter、Instagram)のコンテンツ探索

ユーザーの強い感情となるキーワード「したい、したくない、めんどくさい、ほしい、買いたい、売りたい、だるい」などのハッシュタグを検索したり、グループを見つけると、そこでどんな人が何に課題を持っているのか、今どう動いているのか動いていないのかをざっくり把握できます。

ex. Twitterのpstlmというアカウントは結婚に強い願望を抱いてそうなツイートをしている

b. ヒアリング、定性調査

上記のユーザーにヒアリングをしてみます。課題に至るまでのコンテクスト、既存の解決方法の提案、解決方法が与えている印象、など線でユーザーとプロダクトのタッチポイントに何が起きているかを理解します。

でも実際に聞いてみると結婚のためにアクションはしていなく、渇望はしていなかったりする

c. あえてカオスな文化を作る(自社プロダクトにカオスを生み出す)

プロダクトのコアコンセプトを提案したりして、実際にβ版のサービスに触れてもらいます(きちんとしたプロダクトの体を成している必要はない)。その中であえてルールを作らず誰が、どのタイミングで何を感じるのか、なぜそう動くのか(動かないのか)をじっくり観察します。

ソリューションを雑に提供してみるとChurnの理由みたいな物が見えてくる(信じすぎない)

既存のプロダクトでも、例えばメルカリではコメントで値引き交渉やサイズ質問、専用、取り置きなどの文化もあり、あえてルールを作らない事でカオスな文化が醸成され、根付いてます。

カオスな文化は初期の重要なマーケチャネルである

カオスな文化に一定のユーザーボリュームがある場合、それは取り組むべきissueになりますが、そうなるとそこは既存プレイヤーが誰もタッチできていないマーケチャネルとなります。どんな課題を持っている人が、どういう理由で既存の解決方法を使っていなくて、プロダクトとして提供する際に、何がポイントとなり得るのかを知っているのは自分達だけなので、アプローチ方法も明確になっているので、まさに宝の宝庫です。

もちろん、今はスタートアップの資金調達環境が良かったり、big issueに取り組むのであればそれ相応のマーケティングコストをかけてグロースさせるのは当然ですが、とはいえスタートアップの前提は知恵はあっても(大企業より)金はない、だと思うので1番最初のマーケからがっつりお金のかかる勝負はスタートアップが取り組むべきissueではない、issueの成熟度が低いと思っています。なので知恵は振り絞れるだけ振り絞りましょう。

終わりに

起業するなりプロダクトを作る時に1番やってはいけないのが”誰にも使われないプロダクトを作る”事だと感じています。小規模でもスティッキネスに使われていれば学びが進み正のサイクルに入れますが、大きなマーケットから逆算して明確なターゲットが描けてないプロダクトには誰もついて来ないなと実感します。

この記事を通して少しでもプロダクト作りのきっかけとなったり、全くちげえよ!という有識者の知見がTwitterなどで呟かれる事を願っています!

上記の試行錯誤をしながらプロダクトを作っています

具体的にどんなプロダクトを作っているかはまだ公表しませんが、まさに今僕は”カオスな文化”を捉えながら、プロダクトを作っています。現時点で既に強い課題を持っていて、既存の解決策に抵抗を示しているユーザーを特定し、検証を行なっています。テーマとしても小さくまとまらず、世の中にインパクトがある、解決すべき課題だと自負しています。

一緒にプロダクト作りませんか!

僕が代表を務める株式会社Spiceではエンジニア、デザイナー、BizDevそれぞれでメンバーを募集しています。少数精鋭でコミュニケーションコスト低く、ユーザー中心にやっていくのがポリシーです。一緒にやるとか関係なく、少しでも話をしてみたい、と思ってくださった方はぜひお茶でもランチでもしましょう!(会った時には何をどうやっているか等、包み隠さずお伝えします!)

Twitter:@seikatok

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