Instagramの創業から成長の軌跡


『Instagram』は日常を瞬間をとらえた写真や動画をアートにして友達や家族と簡単にシェアできるサービス。現在、Instagramの月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users/MAU)は3億以上で米国国外からの利用が70%以上を占め、累計写真投稿数は300億以上、1日あたりのLike数は25億、1日あたりの平均写真投稿数は7,000万にも及ぶ。そこで、今回は、世界中で愛される『Instagram』がどのような軌跡を辿り成長し続けているのかを追う。

『Instagram』の誕生は2009年に遡る。

初めてのプログラミング

当時、CEO/co-FounderのKevin Systom氏(以下、Systom氏)は、世界中の写真、位置情報などを用いてリコメンドサービスを提供するNextStop社でマーケティング担当者として働いていた。Systom氏は、コンピューターサイエンスの博士号をもっておらず、プログラミングについても一度も学んだことがなかったため、プログラミングを学ぶために何かいい方法がないかと夜な夜な考えていた。その時、ゲーム『Mafia Wars』で使われているFoursquareのチャックイン機能から一つのアイデアをひらめく。そのアイデアを元に、HTML5を使って、プロトタイプを開発しはじめた。それが『Instagram』の前身となるチャックインサービス『Burnbn』だ。

無我夢中にプロトタイプ開発

『Burnbn』のプロトタイプ開発後、実際に友達にプロトタイプを試してもらったが、ブランディング要素もなく、何のデザインもされていないプロタイプを最後まで使用し続けてくれる友達はなかなかいなかった。それでも挫けずに、仕事がない週末には『Burnbn』の開発を続け、改善をし続けていた。

偶然の出会いが新たな未来をつくる

ある日、パーティーで参加者に対して『Burnbn』の位置情報を使用したユーザー体験をしてもらうという機会に巡り合う。そのパーティーで実際にユーザー体験した人こそが、後の投資家となる「Baseline Ventures」と「Andreessen Horowitz」だ。彼は、その場で、Baseline VenturesとAndreessen Horowitzの投資家にプロトタイプをプレゼンし、ミーティングの約束を交わす。その後、初めてのミーティング直後に、Systom氏はBurnbn社を設立することを決め、勤めていたNextStop社に退職する意向を伝え、2週間後には、Systom氏はNextStop社を退職し、Baseline VenturesとAndreessen Horowitzから50万ドルの投資を受け、Burnbn社を設立する。

共同創業者との出会い

設立後、チームメンバーを探していく中で、後の共同創業者にあたるMike Krieger氏(以下、Krieger氏)と出会う。Krieger氏は、Systom氏の話を聞くとすぐに、Burnbn社に参画することを決める。この時が、Burnbn社として大きな一歩を踏み出した時であった。

選択と集中と葛藤

二人で開発を進めていく中で、位置情報をもとにしたチェックイン機能、ユーザー間でポイントを稼ぐことができる機能など様々な機能を開発する。その中で、二人は、会社で事業をする場合には何か本当にいい一つのことにフォーカスしたほうがいいのではないか、と考えはじめる。

原体験に立ち返る

思考錯誤した結果、子供の時からカメラで写真を撮影して遊ぶことが好きだったという原体験に立ち返る。文化祭や様々なイベントで、デジタルカメラや一眼レフなどの大きなカメラを使って写真を撮影しているが、スマートフォンが普及していくにつれて、スマートフォンで撮影する機会が益々増えるだろうと感じる。そこで、スマートフォンでの撮影体験にフォーカスをして新しいサービスの開発をはじめた。

新サービスの開発に苦戦

新サービスは、1週間でプロトタイプを開発したが、出来上がりはかなり酷いものであった。そのため、新サービスの開発は一旦取りやめ、『Burnbn』のネイティブアプリの開発をはじめた。

『Instagram』のはじまり

『Burnbn』のネイティブアプリの開発を再開すると、『Burnbn』の機能が多すぎることに改めて気付く。そこで、『Burnbn』の機能の中でも、写真にフォーカスし、写真、コメント、Like機能以外のすべての機能を削ぎ落とし、新サービスとしてローンチすることを決める。そして、その新サービスを、子供から慣れ親しんだ「instant camera」と「telegram」のような感覚で写真撮影を楽しんでほしいということから、『Instagram』と名付ける。それが『Instagram』のはじまりだ。

開発期間はたったの8週間

それから8週間後、二人はベータ版のテストユーザーとして友人に協力してもらいながら、バグ修正などを進め、2010年10月にiPhoneアプリをリリースする。この時、Krieger氏がジョインしてから約1年が経過していた。

『Instagram』2010年10月リリース版

1週間で10万、3か月で100万、8か月で1億

『Instagram』はiPhoneアプリのリリースから数時間で写真カテゴリで無料ランキング1位になる。そして、リリースから約1週間で10万ユーザーを獲得する。2010年12月には、リリースから約3か月で100万ユーザーを達成する。

2011年2月には、シリーズAで、Benchmark Capital、Baseline Ventures、Jack Dorsey氏、 Chris Sacca氏、Adam D’Angelo氏など複数の投資家から700万ドルを調達する。この時、『Instagram』は、ユーザー数が175万、Like数が7,800万、1日あたりの投稿写真数が29万となっていた。

2011年6月には500万ユーザーを達成し、月間アクティブユーザー数が62万5,000、週末の新規ユーザー数は10万以上。また、Instagram APIを用いたユニークアプリ数は2,500、API連携アプリ数は35万を超えていた。

2011年7月には、リリースから約8か月で累計投稿写真数が1億を突破する。これは、Flickerが累計投稿写真数1億に2年以上の歳月を要したことを比較すると、驚異的な成長であった。

『Instagram』2011年6月リリース版

この驚異的な成長の裏には、『Instagram』の新機能「ハッシュタグ(#)」機能の追加があった。機能としては、Twitterのハッシュタグと同様の機能であったが、これが『Instagram』ユーザーを魅了した。

12時間で100万ダウンロード

その後も順調に数字を伸ばし続け、2012年4月には待望のAndroidアプリをリリースする。iPhoneアプリリリースでの前評判もあったことから、リリースからわずか12時間でダウンロード数は100万ダウンロードを達成する。Google Playでは100万ダウンロードに到達したアプリとしては5番目となる偉業を成し遂げた。

『Instagram』Android版リリース当初

さらに、Androidアプリをリリースした週と同じ週に、シリーズBで、Sequoia Capitalをリード投資家に迎え、Greylock Partners、Thrive Capital、Baseline Ventures、Benchmark Capitalから5,000万ドルを調達する。

Androidアプリリリースから1か月後の2012年5月には、累計投稿写真数は10億を超え、新規ユーザーの流入は数秒単位という速さで成長を続けた。

評価額10億ドルでFacebookの一員へ

2012年4月9日、FacebookがInstagramを買収することを発表し、評価額は10億ドルと報道される。この時のInstagramの従業員数はわずか13名。当時の評価額については、2005年にYahoo!が買収したFlickrが3500万ドルであったことからもInstagramへの期待の大きさを伺うことができる。同年9月には買収が完了し、InstagramはFacebookの一員となった。

Facebookによる買収を発表した時の写真

Facebook CEO Mark Zuckerbergは、FacebookとInstagramの事業シナジーに大いなる可能性を感じており、Instagramとしての独自性・独立性を保証しながらも、『Instagram』の発展・成長にコミットすることを約束した。

I’m excited to share the news that we’ve agreed to acquire Instagram and that their talented team will be joining Facebook. For years, we’ve focused on building the best experience for sharing photos with your friends and family. Now, we’ll be able to work even more closely with the Instagram team to also offer the best experiences for sharing beautiful mobile photos with people based on your interests. We believe these are different experiences that complement each other. But in order to do this well, we need to be mindful about keeping and building on Instagram’s strengths and features rather than just trying to integrate everything into Facebook. That’s why we’re committed to building and growing Instagram independently. Millions of people around the world love the Instagram app and the brand associated with it, and our goal is to help spread this app and brand to even more people. We think the fact that Instagram is connected to other services beyond Facebook is an important part of the experience. We plan on keeping features like the ability to post to other social networks, the ability to not share your Instagrams on Facebook if you want, and the ability to have followers and follow people separately from your friends on Facebook. These and many other features are important parts of the Instagram experience and we understand that. We will try to learn from Instagram’s experience to build similar features into our other products. At the same time, we will try to help Instagram continue to grow by using Facebook’s strong engineering team and infrastructure. This is an important milestone for Facebook because it’s the first time we’ve ever acquired a product and company with so many users. We don’t plan on doing many more of these, if any at all. But providing the best photo sharing experience is one reason why so many people love Facebook and we knew it would be worth bringing these two companies together. We’re looking forward to working with the Instagram team and to all of the great new experiences we’re going to be able to build together. (by Facebook CEO Mark Zuckerberg)

2.5年でアクティブユーザー数が1億

Facebookの一員となってからも、成長スピードは落とすことなく、寧ろより勢いを増し、2013年2月にはアクティブユーザー数が1億を突破した。2013年3月にはCOOにEmily White氏が就任し、2013年9月より広告事業をはじめる。広告事業開始時の月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users/MAU)は1億5,000以上。

ユーザーファーストなアップデート

2013年9月にはフィードの閲覧ができるWebブラウザ版、2013年10月にはWindowsモバイル向けにアプリを発表する。さらに、2013年11月にはアメリカ国内のユーザー向けに広告スポンサー向けサービス、2014年9月にはイギリス国内のユーザー向けに広告スポンサー向けサービスを開始。2013年12月には、対SnapChat施策として、ユーザー同士がアプリ内で直接コミュニケーションがとれるダイレクト機能を発表する。

『Instagram』Windowsモバイル版リリース

2014年3月にはアプリ容量の削減とパフォーマンスの向上、UI/UXを改善したバージョンをAndroidアプリで公開。これにより、ブラジルをはじめとした英語圏以外の国々でのシェアを伸ばす。また、2014年前半に、アプリリリース以降、位置情報のタグ付け方法がFoursquare APIからFacebook Placesへ移行する。

『Instagram』Android2014年3月リリース版

マネタイズ強化へ

Instagramはユーザー数が急成長していく一方で、マネタイズに苦しんでいた。エンジニア中心の若いメンバーが多いということもあり、マーケティングやブランディングをカバーできる人員がいなかったのだ。

そこで、2014年8月、Business and Brand Developmentのグローバルヘッドとして、FacebookのエリアディレクターであったJames Quarles氏がジョインする。Quarles氏は、長期的なInstagramの売上にコミットするべく、Facebookの広告事業を指揮管理するSheryl Sandberg、David Fischer、Carolyn Eversonと定期的に意見交換しながら、Instagramのマネタイズ、マーケティング、営業チームを統括することとなった。

InstagramはQuarles氏の参画以降、チームメンバーもチームサイズも大きく変わった。2013年末には従業員数が32名であったが、Quarles氏の参画時には広告・営業担当4名、広告分析2名を含む50名体制に変わった。

広告モデルが日本にも進出

そして、2015年5月より、Instagramは日本国内でも広告事業をはじめ、来る2015年10月よりFacebook広告と同様のセルフサーブ広告を開始する予定だ。

Instagram Press Release
「今後数週間の内に、日本国内のInstagram利用において、広告の表示を徐々に開始していきます。皆さまにご覧頂く広告がクリエイティブでエンゲージングなものになるよう、まずは既にInstagramを有効にご活用頂いている幾つかの企業から導入していく予定です。広告は、Instagram上でこのように表示されます。広告の上部にある[広告]ラベルをタップすることで、表示されている広告の詳細を見たり、あるいは関心がない広告を非表示にしたりできます。この操作は、今後より魅力的な広告を配信していくための参考になります。なお、これまで通りInstagramに投稿される写真や動画の所有者は、投稿した利用者本人です。広告表示を開始しても、この点は変わりません。これからも変わらずInstagramのご利用をお楽しみください。」(Instagram Press Release)

2015年9月に発表されたMoffettNathansonのリサーチによれば、Instagramの売上は、2015年度が6億ドル、2016年度が14億8,000万ドル、2017年が28億1,000万ドルになると言われている。さらに、Instagramが「成熟期」まで成長すれば、その売上規模は1年間で50億ドルにも及ぶと予測されている。今後更なる成長が期待される『Instagram』の動向に注目していきたい。