本記事のセレンディピティ
<Fact>
・Whole FoodsはOrganicの先駆者、創業者がSteve Jobsと似てる点多々
・Amazonに買収されても変わってない企業文化がファンを惹きつける
・その企業文化は創業者のHigher Purposeから来る
<Opinion>
・自省による自己理解を経て、Higher Purposeを見つけた上で、
そのHigher Purposeで突き抜ければ、ファンが集まってきてくれる
・そこまでいけば他者を徹底的に信じることで信頼される
Whole Foodsの歴史とJohnの経歴について
Whole Foodsは日本ではAmazonに買収された小売企業として有名だが、創業の地でもある地元 Austin(Texas) では、Organicという概念を全米で初めて広めた企業として知られている。実際、Whole Foodsは2007年に同じくOrganicを展開していたWild Oats社を買収しようとした際に、反トラスト法(日本でいう独占禁止法のようなもの)に違反し、Organic商品の価格を不当に吊り上げる恐れがあるとして訴えられているほどだ(備考)。
ここまでOrganicに尖ることができたのは、Mackey氏の個人的な思い入れの強さからである。当時大学生であったMackey氏は、哲学や歴史等を中心に学んでいた。大学のvegetarian co-opに参加する機会があり、そこで菜食主義に触れ、彼自身も菜食主義になった。そして、人生の目的を「人々により健康的な食べ物を提供すること」に決意したのだった。
Steve Jobsのように、Mackey氏も人生の目的を見つけたことを機に、興味のある授業だけ出席し、得るものがなくなったと判断した時点で大学を中退、後に結婚して共同創業者となる女性と二人でAustinでSaferWayという名のvegetarianスーパーを1978年にOpenさせたのであった。(SafeWayをもじってつけた名前w)
1980年に地元の自然食品を扱うスーパーを吸収合併し、商号もWhole Foodsに変更して、ここからWhole Foodsの歴史が始ったのだった。当時の米国では、環境問題や化学物質による食品汚染が社会問題になっており、大学都市であるAustinの意識の高い消費者は、Whole Foodsに殺到した。それ以降、M&Aや出店を繰り返し、2017年にAmazonに$13.7 Billion(1.5兆円ぐらい)買収された。その後も成長を続け、2019年アメリカ・カナダ・英国で500を超える店舗を運営し、$15.7Billionの売上を誇る企業に成長している。
(備考:出典)
Whole Foods Antitrust裁判の詳細
NY Times(https://www.nytimes.com/2007/08/17/business/17food.html)
John Mackey氏のブログ
(https://www.wholefoodsmarket.com/blog/john-mackeys-blog/whole-foods-market-wild-oats-and-federal-trade%C2%A0commission)
ちなみに本件でWhole Foodsは、Organicという市場ではなく、小売という市場で見るべきだと主張し、最終的に勝訴している。顧客向けにはOrganicならWhole FoodsとPRしているので、うまい使い分けである。


Whole Foodsの文化
Whole Foodsの企業文化はMackey氏の思想が色濃く反映されている。
「どうすれば理想的な企業文化が作れるか?」という質問に対して、Mackey氏は「会社は創業者にとって子供。子供が良いところも悪いところも親に似るように、会社は創業者を映す。いい文化を作りたいのなら、まず創業者であるあなたが素晴らしい人間になるべきだ」と答えた。Whole Foodsはそんな彼の想いが込められた会社になっている。
Conscious capitalism と彼が呼ぶ理念において経営されており、講演では特に重要な3つの要素がフォーカスされていた。
1.Benefit All stakeholders
2.Higher Purpose
3.Keep whole foods “whole foods”
<Benefit All stakeholders>
Whole Foods owe something to not only consumers but also suppliers, employees, etc… All stakeholders are interdependence, so connect the entire ecosystem.
(訳)顧客だけでなく、従業員、取引先、全ての関係者は相互に依存しあっているものであり、その一つのエコシステムをつなげればよい。
彼がこう考えるように至ったきっかけは創業間もない頃にAustinを襲った洪水での出来事だ。彼の店舗にも大損害があり倒産を覚悟したそうだが、洪水の翌朝から取引先や顧客が掃除等を手伝ってくれたり、銀行も担当者個人の責任で融資してくれたりして、助けられたとのこと。
特に強調していたのが、Tradeoffであるという固定観念にとらわれないことだ。Tradeoffというのは、従業員の賃金上昇をすれば利益が減るのようなパイの奪い合いのような概念だが、彼はTradeoff以外の選択肢が必ずあると意識していれば、フレームワークの外にある選択肢に気付くことができると述べていた。
※個人的には、パイの奪い合いからパイを増やすという発想は個人単位でも有効だと思っており、まさに結婚なんてその部類だろうなと思う。
Amazonと合併した際も、missionの一致という点も非常に重要だったと述べた。Amazonのmissionが
to be Earth’s most customer-centric company
(訳)地球上で最も顧客思いの企業
で、Whole Foodsのmissionと通づる点があり決断に至ったとのことだ。
(*個人的には、従業員、取引先へのコミットメントではAmazonとは少し異なる所感)
<Higher Purpose>
Mackey氏の創業の経緯からも明らかだが、Whole Foodsはお金を儲ける道具ではなく、それを通じてHealthy Food/Lifeを広めるというHigher Purposeを持つ。Mackey氏の母親は当初、小売店を始めることに強く反対していたという。父親はライス大学で会計の教授をしており、Mackey氏もテキサス大学にいたため、母親はMackey氏が「安定している企業」に入ってくれることを望んでいたようだ(どこの国も変わりませんな)。その反対を押し切って、大学を中退して安定した生活を捨ててでも、成し遂げたいHigher Purposeが彼を今も動かしている。
例えば、Animal welfare(動物愛護)の活動家がMackey氏に抗議した際の対応も彼のHigher Purposeを物語っていた。活動家がWhole Foodsが食用家畜への対応が不十分でないと抗議したことに対して、彼の側近が事実ではないと否認していた。しかし、彼は自らその実態を調査すべく、取引先に赴き、動物たちがどう扱われているかを調べた。そして、一部非人道的な扱いがあったことを発見し、自らの非を認め謝罪し、それらを改善したのだった。こういった Higher Purpose を掲げることで顧客もそういった思想に共感する層を取り込んでいる。


Whole Foodsに通い詰める私の実感としてもHigher Purposeを感じた経験がある。期間限定だが、レジにて強烈なモヒカンのお兄さんがいて、Whole Kids foundation寄付すれば、彼がモヒカンのままにするか刈り上げるかを投票できるという仕組みがあった。寄付&投票の後に親切に写真まで取ってくれ、レジには長い行列ができた。しかし、怒る人はおらず、寄付をしたことについて好意的に周りが見ているようだった。後述するがHigher Purposeを掲げることで、Whole Foodsの理念に理解のある顧客層がついていることも財産だろう(駐在員の奥様方の御用達スーパーでもある)



ちなみに、Whole kids foundationとは、Whole Foodsが立ち上げたNonprofit団体で、子供たちに栄養バランスのとれた食事や食物についての学びの機会を提供している団体だ。$5.6Millionが先日投入されたとのこと。
https://www.marketwatch.com/press-release/whole-kids-foundation-raises-56-million-to-improve-childrens-nutrition-2019-10-29
<Keep whole foods “whole foods”>(Whole Foodsらしくあり続けろ)
Amazon CEO Jeff と合併の交渉をした際の出来事についてMackey氏が語っていたのは、Amazonとは出会って約6週間で交渉成立したが、(※結婚について)非常に重要な2つのことについて同意できたからだという。
(※講演中Amazonとの合併のことを結婚と表現していたため)
1. Unwilling to change (Who we are)
2. What will we do together
- Unwilling to change who we are
Mackey氏はWhole Foodsらしさが失われる危険があるなら同意しないと伝えたという。Amazonはその点についてWhole Foods側を尊重し、Mackey氏は勿論、重役の人事等にも口出しはしていないそうだ。またMackey氏は「Culture Championship」とWhole Foodsらしさを競う取り組みを行い、いかにWhole Foodsの文化をより深く根付かせていっている。
Whole Foodsの店頭を見ると確かにAmazon色が強い。ネットでは、「Whole Foodsを見ると小売がIT企業に侵食されている」という論調をよく見るが、実際はWhole FoodsとしてもAmazonをうまく使って共存している部分も大きいかもしれない。というのは、Whole Foodsは自治を守っているだけでなく、次項で述べるが自身もAmazonによって顧客価値を高めている。


2. What will we do together
Mackey氏はAmazonとの関係について、Me(Whole Foods), You(Amazon), Us(Whole Foods & Amazon)の三つの視点で考えている。AmazonとはCo-Createできることがある企業だと思ったという。実際、Inventory管理に関してはAmazonの徹底したデータ・ドリブンの手法から学び大幅な改善があったとのことだ。上の写真にあるAmazon-flesh(食品配達)も大きな変化だ。Whole Foods自身も買収を繰り返して大きくなっている企業で、それぞれの地元に強いネットワークを持つ買収先企業について自由にさせてde-centraizeを保つことで様々な取り組みが行いやすいようにしてinnovationを促進させているとのこと。しかし、価格の引き下げ等のためにcentrizeせねばならない部分もあるので、その両者のバランスを取っているとのことだ。
以上のように、Whole Foodsの歴史やそのリーダーシップについて聞いたことを綴ってみたが、自分なりにどうまとめられるかを整理してみた。
- 自分が信じる世界を見つけたら突っ走るべし。
今でこそオーガニック食品はアメリカのスーパーのどこでも見かけるようになったが、Mackey氏が創業した頃はかなりニッチだった。VCには、「そんなヒッピーがやってるヒッピーのための店に出資する奴はいない」とまで言われたそうだ。そんな中、常人だとなかなかM&Aして広げていくという発想にはならないのだが、彼は健康な食品を全米に、そして世界に届けることがmissionだと考えていたため、店舗を世界に広げていくことに使命感があったからこそ続けられたと思われる。 - 変えないものを見つけ、ファンを作るべし。
JobsもMackeyもビジョナリーな(悪くいうと相当頑固な)経営者だが彼らがそのビジョンを得たのは、大量のインプットと内省を経てである。Mackeyは一日中図書館に篭って本を読んでいたと回想する。それを経て、決まった軸は強い。Mackey氏曰く、技術が進歩したり、Amazonに買収されたりして多くのことが変わってしまう中でWhole Foodsでは何を変えるべきではないかは揺るがないという。この強い軸があるからこそ、顧客だけでなく取引先にもWhole Foodsnファンが多いのは洪水のエピソードからも明らかである。 - 周囲を恐れずに信じるべし,さすれば報われる。
1,2,をきちんとできている企業限定だろうが、1,2を実行してついてきてくれている従業員や取引先、顧客は理由があって選んでくれているのだ。そういったエンゲージメントができている関係者に対しては、こちらから信頼していることを見せることで相手側の行動を引き出すことができる。
これは授業で学んだ事例だが、
1年前にAustinで洪水があり街全体が水不足に陥った。小売店では限られた在庫をいかにパニックを起こさずに必要な分だけを買って、消費者に行き届かせるかが課題になった。では、普段3~4ドルのミネラルウォーターのパックをどう販売するか?
さて、どうするのがベストか少し考えてもらいたい。
現実には・・・
・某小売B社:約5倍の20ドルで販売
→洪水により押し上げられていた需要ではあるが、値段が高いため実際に販売されるのはわずかで、その出費を厭わない本当に必要な層に飲み販売。さらに小売店は大幅な利益を得ることができる。
・Whole Foods: 価格は変えずに1人1パック/weekの上限で販売
→顧客が店舗のルールを守る限り、必要な層全体に行き渡る。小売店は通常通りの利益。
一見、目的は双方とも達成され、より大きな利益をあげたB社がBetterに思えるが、実はB社はその後批判を浴び、広告などで謝罪するに到り、大きなダメージを受けた。
しばし、この事例は短期的利益しか考えなかった意思決定と長期的利益をみた違いだと言われるが、個人的にはそう思わない。マクロ経済学のフォーク定理はまさに、こういう際に顧客を裏切らず協調解を出すことが、長期的に有益であることを示しており、大手B社のマーケティング担当がそれを知らなかったとは到底思えない。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E5%AE%9A%E7%90%86)
では、なぜB社は大幅な値上げによる需要調整を行ったか?理由は、顧客が店のルールに従ってくれるという自信がなかったのではないだろうか。低価格路線をとるB社を顧客が選ぶ理由は価格であり、販売上限があっても再来店などで多数購入して、ネットで売りさばくのでは?
顧客に対してそんな印象をB社が持っていたとしても不思議ではない。いずれにしろ、不当な搾取という点か顧客を信用していないという点、どちらにしろB社の顧客はB社に対して不信感を持つことになったしまったのだと思う。こうして比べてみて改めて、Whole Foodsの顧客との強い関係を築いている強みを感じた

