性格の悪いオバちゃんと性格の良い娘の共存

うちの店の調理のオバちゃんは、性格が悪いらしい。それも、どうやら限りなく性格が悪いらしい。私は、冗談かと思っていたが、スタッフの話を聞くと、どうも本当のようだ。

彼女は50歳で、僕はなんとなく気に入ってきた。それで2年近く働いてくれている。

オバちゃんならではの狡猾さは承知している。それでも彼女もバツイチで子供4人おり、生きるのに必死だから、まぁそんなもんだと思っていた。

オバちゃんを僕が気に入っているのは、その優雅さだ。

体格と顔は優雅とはとても言えたものではないが、細部にまで貴族の気品がある。服装も、帽子や装飾品に至るまで、実に工夫して安物を優雅に見せている。

その優雅さは、調理のやり方にも及ぶ。

得に、混ぜ方や炒め方が気に入っている。オバちゃんが他人の目の無い所で、丁寧に混ぜている姿を見るのが好きだ。

そういうところから、僕はオバちゃんをえこひいきしてきたし、おだててきた。おだてると喜ぶからまたついおだててしまう。

このオバちゃんは、今までのうちのスタッフを泣かしてきた。スタッフから聞くと「重たい言葉を言いました」としか言わない。男も女も泣いてきた。

このオバちゃんは、性格が良い若者をどうやらイジメる性質があるらしい。非常に信心深い人で、僕とオバちゃんとの約束は、金が儲かったら、一緒にオバちゃんの夢であるヒマラヤの寺院でお祈りに行こうというものだ。

だから、他のスタッフに、その話をして、儲けて社員旅行でヒマラヤに行けるようにしようとけしかけた。スタッフの若い娘は健康食品が好きで、ベトナムでは定評の高い「ヒマラヤの塩」を個人で買っていた事もあり、旅行好きだし、食いついてくるかと思った。そうしたら、

「あの人が一緒に行くなら、私は行きません」というツレナイ返事だった。

今日は日曜日で、オバちゃんと僕二人の当番の日だ。誰からも憎まれているオバちゃんだけど、僕と二人だけでいると実に楽しい時間が過ごせる。

おそらく、僕のベトナム語のレベルでできる会話では、会話の内容なんてたかがしれているからかも知れない。僕はただただ、オバちゃんの優雅さに感心していて、その感心の姿勢がオバちゃんに伝わり、オバちゃんも僕には優しい、という事なのかもしれない。

言葉を使わないほうが、いい関係になれるとしたら、沈黙というのはもっと大事にすべきなのかなと思った。