創業者株主間契約書のススメ(超基礎編) vol. 2/3
起業家や起業準備中の方の中には、「創業者株主間契約を締結しておいた方がよい」という話を耳にしたことがある方も多いのではないかと思います。「創業者株主間契約って聞いたことはあるけど、どんなものかよくわからない、、」という方向けに、基礎的な内容を3回に分けて解説いたします。
今回は3回のうちの第2回目です。
3.いくらで株を買い取れるの?

Vol.1では、創業者株主間契約とは何か、誰が誰から株式を買い取れるのかについて解説しました。それでは、残留創業者は退任創業者からいくらで株を買い取れるのでしょうか?
買取価格(1株あたり)の決め方については、以下のパターンが考えられます。
①無償
②辞任する役職員が当初株式を取得した際の取得価格と同額
③会社の直近の監査済貸借対照表上の純資産額を、発行済株式総数で割った額
④直近の譲渡事例・増資事例における株価と同額
⑤第三者の鑑定による公正な時価
実際のケースでは少なくとも私が認識している限りでは、②「取得価格」とする例が一番多いように思われます。その理由としては、(a)価格が一義的に決まり明確であること、(b)会社の成長に従ってバリュエーションが上がっても、それが反映されていない当初の取得価格でしか買い取ってもらえないことから、辞めずに会社に残るインセンティブが働くことが考えられます。
他方で、③直近の簿価純資産額とすることもあります。この算定方法は、辞任するまでの間は当該役職員も会社の成長に貢献してきたことから、純資産が増えた部分については当該役職員にもリターンを返すのがフェアであるという考え方に基づいています。もっとも、会社がエクイティで資金調達をしたものの、まだ利益は出ておらず、役員報酬もそれほど高くない、というようなケースの場合、簿価純資産額が高くなってしまい、残留取締役に買い取れるだけのお金がないという事態が考えられる点に注意が必要です。なお、赤字が続き、純資産がマイナスとなっている場合には、買取価格はマイナスではなく0円とすることになるかと思います。
⑤時価については、非上場会社の場合公正な時価がいくらになるかの判断が難しく、誰がどのようなプロセスで公正な時価を判断するのかにつき争いが生じる可能性もあり、また一定の費用もかかることから、あまりおすすめはできません。どうしても時価にしたいという場合には、鑑定を行う第三者をどうやって決めるのか、当該第三者がどのようなプロセスで時価を算定するのかといった細かい点まであらかじめ規定しておくことをおすすめします。
4.税金はかかるの?

創業者株主間契約に基づき株式の売買を行う場合、売主にも買主にも一定の場合には税金が発生し得るという点は十分認識しておく必要があります。
典型的なケースは、事業がある程度進み企業価値が上がっている(例:時価100)ものの、創業者株主間契約に基づいて辞任取締役の取得価格(例:取得価格40)で売買がなされることから、時価よりも低額での売買となる場合です。その場合の課税関係は以下のとおり、買主が個人であるか法人であるかによって異なります。
<個人→個人の譲渡の場合(例:辞任取締役個人が、残留取締役個人に売却する場合)>
■売主(個人)の課税関係:
時価100より安く売っており、譲渡益が生じないため、課税されません。
■買主(個人)の課税関係:
時価と対価の差額(100–40=60)については、売主から贈与を受けたものとみなされます。したがって、当該差額部分につき贈与税が課税されます。
<個人→法人の譲渡の場合(例:辞任取締役個人が、残留取締役の資産管理会社である法人に売却する場合)>
■売主(個人)の課税関係:
法人に対する譲渡においては、譲渡価格(40)が時価(100)の2分の1未満である場合、税務上、売主は時価(100)で譲渡したものとみなされます。したがって、譲渡価格(100)と当初の取得価格(40)の差額が譲渡益とみなされ、譲渡所得税が課税されます。
■買主(個人)の課税関係:
上記同様、時価と対価の差額(100–40=60)につき贈与税が課税されます。
上記は一例にすぎず、具体的な事例やその時点の取扱によって課税関係は異なりますので、個別に顧問税理士にご相談ください。株式譲渡の場合には売主にも買主にも税金が発生し得ることから、実施前に必ず税理士等の専門家に相談するということを覚えておいていただければと思います。
なお、税金や費用については各自負担であることを明確にし、トラブルを避けるため、契約書内に以下のような条項を記載しておくことも考えられます。
第●条 費用
本契約に別段の定めがある場合を除き、本契約の当事者は、本契約に基づく本株式の譲渡に関連して自己が課される一切の公租公課、並びに、本契約の義務の履行に関連して自己が被った全ての費用(弁護士、税理士、公認会計士等の第三者に対する報酬及び費用を含む。)を各自負担する。但し、相手方の債務不履行を原因として、損害の賠償、補償等を求める場合の費用についてはこの限りではない。
いかがでしたか?Vol.3ではこれまでにご紹介した条項以外の条項・投資契約との関係について解説します。お楽しみに!
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