国内リユース企業10社の決算から読み解く、KSFと競争領域
にーはお。
経産省が発表した滞在リユース市場が7兆円を超え、注目を集めている。
リユース事業を展開する各社の決算説明資料を見ながら、KSFと競争領域をまとめたので、メモ。
KSFと競争領域
1、商品の充実=買取
小売である以上、商品を充実させ、魅力ある店舗が競争力なのは言うまでもない。リユースが他の小売と少し違うのは、商品もユーザーから調達することだ。
インターネットの出現により、より効率よくいろんな方法でユーザーから消費者を購入できるようになった。
この変化に対応し、新しい媒体から買取ユーザーを獲得できるかは競争領域の1つだろう。
具体的にはLINE@を使った新規買取チャネルの開拓や他社サイトのポイント施策の連携などが考えられる。
2、成長市場における迅速な投資
製造のための設備投資が不要なため、新規参入しやすい業態である。そのため成長市場の期間が短く、適切なタイミングでの大規模かつ急速な投資が必要になる。
急速な拡大を実現できる、ITシステムの自社開発、オペレーションや教育システムの構築も競争領域の1つになる。
3、成熟市場における迅速な撤退
出店がしやすいということは、市場へ参入がしやすいということ。成長市場から成熟市場への移行も早く、いかに旨味のある段階で事業を縮小し、次の種を見つけるかが大切になる。
また、既存の資産(=店舗)をいかに早く次の成長市場の業態へ転換できるかも競争領域になる。
チェーンではなく、直営店を持つことのメリットはここにあるだろう。直営店を持つコトで、早く情報を収集し、次の市場を見つけるコトができるし、早く業態転換を実現できる。
リユース企業の戦略
消費者にリユース事業を展開する国内企業は主に11社存在する。買取王国を除いた10社の事業戦略を簡単に紹介する。
ゲオHD
リユース業界で時価総額1位のゲオHD。
下のスライド2枚を見れば、成長市場に合わせた業態の変更がゲオHDの戦略の本質であるのが分かる。
沿革を見ると、創業期はM&Aによるメディア事業の拡大、ある程度投資を回収した時点でリユース事業へ投資を加速、メディア市場が縮小するタイミングでメディア事業をリユース事業へと転換という流れ。
ITシステムへの大規模な投資による業務効率化施策も考えられる。
シュッピン
店舗拡大については決算資料でもほぼ言及せず、ECサイトにおける商品ページの充実、WEBマーケティングを今後の施策の中心に置いている。
ブックオフ
2015年のグループ中期事業計画で「本のBOOKOFF」から「何でもリユースのBOOKOFF」への転換を強く訴求。メディア市場は成熟期を迎え、業態転換を急いでいる。
しかしメディア市場は2015年以前から縮小市場であることを考えると、遅い決断だったのではないだろうか。
ハードオフ
店舗の拡大と、酒や楽器など高単価商品を扱う業態への展開を掲げているが、インターネットでのチャネルの獲得は、ほぼ言及していない。
既存事業の拡大に加え、いかに次の成長市場の業態に変えられるかが勝負になりそう。
コメ兵
既存店舗の改革をしながら、楽天ポイントを導入し、インターネットでの買取チャネル拡大。
法人事業や海外事業にも力を入れるようだが、ブランドリユースに変わる新たな事業領域を発見できるかが、鍵となりそう。
トレファク
ファッション業態に特化することで、新たな顧客層の開拓を目指す。ファッションに特化している業態はまだ少ないので、リユース業界における次の成長市場になる可能性はある。
ワンダーCo.
既存店舗網の見直しと、市場縮小により、「モノ」の販売から「コト」の消費への転換を迫られている。店舗の改善と平行で、「コト」消費に対応した店舗作りを目指す。
テイツー
こちらも不振店舗の再編と買取アライアンスへ注力。
ホビー市場の成長はそこまで見込めないので、新規事業領域の創出に期待がかかる。
マーケットエンタープライズ
店舗を一切持たず、インターネットでの買取と販売に集中するマーケットエンタープライズ。
競合がオフライン店舗内でのオペレーション効率に務める中、コンタクトセンターにリソースを投下している。店舗と違って、研修を同じ場所で行えるため、教育コストも低く抑えられだろう。
自社の強みを明確に定義できており、市場を横展開していけば、安定した成長を見込めそうだ。
ワットマン
戦略に、「来たるべき市場の低成長」と明記してあるのが、面白い。
やはり、出店へのハードルが低い分、成長市場から成熟市場への移行が早く、低成長時代における戦略を早期に考える必要があるのだろうか。